アメリカ人から見ると、「日本の天皇」ってどんな存在？

２月23日は、天皇の誕生日を祝うめでたい日。
天皇陛下は今日で62歳の誕生日を迎えられた。

「新型コロナウイルス感染症の影響により，国民の皆さんと広く直接触れ合うことが難しくなっていることを，私も雅子も残念に思っています。」

そんな天皇陛下のメッセージは宮内庁HPの「天皇陛下お誕生日に際し（令和4年）」を見てもらうとして、ここではアメリカ人から聞いた日本の天皇のイメージについて書いていこう。

ニューヨーク出身のアメリカ人（20代・女性）と京都旅行に行ったとき、あるお寺（たしか霊雲院）の中を徘徊していると、「彼はダレ？」と彼女が指さす先に明治天皇のお写真（御真影）があった。
３代前の天皇と分かると「オゥ」と驚いた顔をして、「ハ～イ、こんにちは」と手を振って、「あなたはなんでそこにいるの？」とニコニコ話しかける。

天皇皇后両陛下を見ると、歓声を上げてスマホを向けてカシャカシャする平成世代の日本人なら違った感想を持つのだろうけど、昭和生まれのボクとしてはこの明るく軽い言動にはビックリ。
３代前の天皇の写真とはいえ、「ハイ！」と手を振る発想は出てこないし、天皇に「you」と言うことにも違和感を感じる。
さすがアメリカ人、カジュアルすぎる。

これをきっかけに、明治時代なら不敬罪に問われそうな彼女に、日本の天皇についてどう思っているのか聞いてみた。
するとこんな話をする。

「アメリカは、ヨーロッパの王や貴族といった身分制度を否定して独立したような国だから、自由と平等を最も大事な価値観にしている。だから日本の天皇については、正直言って尊敬の念は特に感じない。でも、イギリスやタイなどには王がいるけど、いま地球上で「エンペラー」と呼べる人間は日本の天皇だけだから、唯一無二の特別な存在だと思っている。」

霊雲院には日露戦争の時、多くの捕虜のロシア兵がいたらしい。
どんな生活かしらんけど、こんな庭園を眺められたのならむしろご褒美。

その数年後、別のアメリカ人（20代・男性）と静岡市にあるお寺へ行ったときのこと。
お寺の中を徘徊していると、今度は明治天皇が泊まっていた部屋と使っていた玉座を発見。

漢字の「玉」には美しく貴いものや宝石といった意味があって、日本では天皇に対する最高敬語として使われる。
玉体とは天皇の身体、玉音とは天皇の声、そして玉座は天皇が座る場所のこと。

【中国由来の敬語】玉音・玉座・玉体…、天皇を表す「玉」

このアメリカ人にも天皇について聞くと、彼は、明治天皇に手を振ったアメリカ人のことを知っていたからこうアキレタ。

「それは彼女がニューヨーク出身だからだよ。ボクみたいな田舎（たしかサウスカロライナ州）出身の人間には歴史や伝統を重んじる人が多いけど、ニューヨークやボストンのような大都市の人間はそうでもない。」

彼にはある程度の敬意があるから、天皇の写真を見ても手を振ることはない。
でも、アメリカが身分制を否定し、自由と平等を最も大事な価値観にしているという意見には彼も賛成で、アメリカには「玉」みたいな特別な言葉や、それを必要とする人物はいないという。
＊きっと「御真影」なんて言葉もない。

その家に生まれた人間が次の天皇になる世襲というシステムは、アメリカの自由と平等という理念に反するからあり得ない。
例えは強引だけど、その国に生まれた人間なら誰でも天皇や王になれるチャンスがあるのなら、それはアメリカ的な考え方だ、というのが彼の見方だ。
たしかに日本の「万世一系」はアメリカ社会の価値観や考え方の対極にある。

奈良時代、大伴家持が聖武天皇を称えるこんな和歌をつくった。
万葉集にある歌だから、見たことある人もいるのでは。

「葦原（あしはら）の　瑞穂（みずほ）の国を　天降（あまくだ）り　知らしめしける　天皇（すめろき）の　神の命（みこと）の　御代（みよ）重（かさ）ね
天あまの日継（ひつぎ）と　知らし来くる　君の御代御代（みよみよ）敷きませる　四方（よも）の国には　山川を　広み淳（あつ）みと
奉る　御調宝（みつきたから）は　数え得ず　尽くしも兼ねつ」

「日本を天から下ってお治めになった天孫降臨の神々が治める時代を重ねて
天照大御神の後継ぎとして治めてこられた天皇の治世ごとに
治められる畿内周囲の国々は山も川も広々と豊かなので
奉る貢ぎ物や宝物は数えきれないほどで、挙げ尽くせない。」

「天照大御神（アマテラス）の子孫」ということが天皇の正統性であり資格なのだから、誰にでもなれるチャンスがあるというと、視聴者参加型の「アメリカ横断ウルトラクイズ」みたいですね。
うん、やっぱり日本人とアメリカ人では天皇への見方がまるで違う。