ほんじつ7月12日の記念日は「ラジオ本放送の日」だ。
1925(大正14)年のこの日、いまのNHKが愛宕(あたご)山からラジオの本放送を開始したから、言ってみれば日本のラジオ放送の誕生日。
ちなみにこの愛宕山は京都はなくて東京にあった山で、井伊大老を暗殺した幕末の「桜田門外の変」のときには、浪士たちがこの山に集結してから桜田門に向かった。
日本人にとってラジオが決定的に重要な意味を持ったのは、太平洋戦争の終わりを告げる昭和天皇の言葉を伝えたとき。
歴史上、一般の日本人が天皇の声を聞いたのはこの「玉音放送」が初めて。
少なくとも一度に大勢に対しては。
「放送」はいいとして、「玉音」とは一体何のことなのか?
そのヒントは1936(昭和11)年に二・二六事件を起こして、その責任者として処刑された磯部浅一が獄中で書いた日記の中にある。
*二・二六事件とは大蔵大臣の高橋是清や斎藤実など要人を殺害し、クーデターをねらった事件。
天皇の玉体に危害を加えんとした者に対して、忠誠なる日本人は直ちに剣をもって立つ、この場合剣をもって賊を斬ることは赤子(せきし)の道である
磯部は自分を最も忠実な臣下、天皇を最高に尊い存在とみていた。
でも実際には気持ち悪い自己陶酔で、磯部は昭和天皇の考えを完全に無視した。
漢字の「玉」には美しく貴いもの、宝石といった意味があり、日本では天皇に対する最高敬語として使われることがある。
玉体(聖体)とは天皇の身体のことで、玉音とは天皇の声。
玉歩は天皇の歩行、玉顔(竜顔)は天皇の顔、玉輦(ぎょくれん)は天皇や皇后の乗り物のことで、玉手とは天皇の手を意味する。
浦島太郎で有名な「玉手箱」はもともと貴族の女性が化粧道具を入れていた箱のことだから、語源としては最高敬語の玉と関係があるかもしれない。
静岡のお寺にあった「玉座の間」。
天皇や皇帝が座るイスはこう呼ばれていて、玉座は広い意味では王権そのものを指すこともある。
玉を付けて貴人に敬意を示すやり方は中国から伝わった文化なんだが、意外にも台湾人が「玉座」の意味を知らなかった。
北京の紫禁城にある中国皇帝の玉座
中国人ガイドいわく、玉とは完璧という意味で皇帝の象徴だ。
太平洋戦争のとき、全滅という言い方は縁起が悪いということで日本では「玉砕」を使っていた。
これも中国から伝わった言葉だ。
7世紀の書「北斉書(ほくせいしょ)」の元景安伝にある、「大丈夫寧可玉砕何能瓦全(勇士は瓦として無事に生き延びるより、むしろ玉となって砕けた方がいい)」が語源とされる。
つまり立派な男なら、ただ生きているだけのつまらない生涯を送るより、名誉のために死んだほうがいいと。
これも根源的には、玉音や玉座の玉とつながっているように思う。
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