日本=ケンシロウ説⑥ 明治の近代化の成功の理由とは

 

はじめの一言

「日本人の並外れた好奇心には驚かされる。わが国の独創的な発明品の数々を展示すると、彼らはあの手この手で飽くなき好奇心を満足させようとした
(幕末 ペリー)」「日本賛辞の至言33撰 ごま書房」

 

・「日本=ケンシロウ」説
・明治の「魔術」
・明治の「魔術」の理由

 

・「日本=ケンシロウ」説

北斗の拳のケンシロウの強さは、「学習能力」にある。

自分より強い人間と戦うという経験をくり返すことで、自分も強くなるという「学習能力」の高さがその強さの理由。

 

そんな北斗神拳の奥義には「水影心(すいえいしん)」というものがある。
これは、一度戦った相手の技を身につけて自分のものにするというもの。
これも、優れた学習能力をあらわしている。

日本の「強さ」の理由も、このケンシロウの強さの理由と同じ。
「相手の良さを身につけて、自分のものにする恐るべき学習能力」

よって、ここに「日本=ケンシロウ説」が成立する。
たぶんね。

 

歴史上、日本の学習能力の高さをしめしたことは2つある。

1つ目は、奈良・平安時代に、中国に学んで国を発展させ、律令国家にしたこと。

2つ目は、明治時代は、西洋に学んで富国強兵を成功させ、近代国家(立憲国家)にしたこと。

 

2つとも、北斗神拳の奥義「水影心(すいえいしん)」のように、相手の良いところを自分のものにしている。
でも、奈良・平安時代に比べて、明治時代の近代化は難易度が違う。

 

 

・明治の「魔術」

古代では、中国の1国だけから学べば良かった。
けど、明治の近代化では、ヨーロッパにある多くの国から学ばないといけなかった。

ドイツ、イギリス、フランスなどの国の特徴を理解して、「どこの国から、何を学ぶのか」を決めて学ばないといけない。
遣唐使のときにはなかったような、難しい選択と決断をしなくてはならなかった。

でも、明治日本はそれを見事にやってのけた。

 

「シドモア」というアメリカ人女性は明治日本の変化を目の当たりにして、「魔術的指揮棒の一振りで完成させた」と表現している。

日本の陸海軍の創設、警察機構、行政組織は諸外国の最高例を範とし、また教育機関は完璧で、米国、英国、ドイツも制度から得た賞賛すべき最高結合体となりました。
さらには郵便制度、灯台、電信、鉄道、病院も西洋と同じ方式を採用しています。

すべてこれらは、緩慢な成長、遅鈍な発達、悠長な必要性の所産ではなく、ほとんど自発的に日本帝国の魔術的指揮棒の一振りで完成させたのです

(シドモア日本紀行 講談社学術文庫)

 

でも、日本の「魔術」はこれだけではないんだな。

民法や刑法はフランスのものを参考にし、大日本帝国憲法はドイツを範としてつくった。
海軍は英国から学び、陸軍はフランス式を導入した。

それも1870年の普仏戦争で、ドイツがフランスに勝利したのを見て、「これからは、ドイツに学ぶべきだ」と陸軍はドイツ式に変えている。

ヨーロッパの国々のなかから、何を学ぶかを的確に判断し、日本にとって良いところを適切に取り入れることができた。
さらに、時勢と必要に応じて学ぶ国を変える柔軟性ももちあわせていた。

 

今の日本があるのも、明治日本人の努力のおかげ

 

明治時代には、優れた技術や知識をもった外国人を積極的に日本に招いて、彼らから学んでいた。
いわゆる「お雇い外国人」と呼ばれる人たち。
でも、シドモアが日本にいたころには、知識や技術を身につけた日本人がそうした外国人にとって代わっていたらしい。

海外で教育訓練された日本の青年が、外国の教師や監督に代わって指導するため母国へ帰っています。
都市ごとに政府省庁や公共事業のお雇い外人の必要性は減少しています。今や‘日本人のための日本’は当たり前のスローガンです。

(シドモア日本紀行 講談社学術文庫)

 

このシドモアというアメリカ人は、日本をとてもほめてくれている。
けど、「それはさすがに言い過ぎじゃない?」というものもある。

西洋人は、極めて優れた黄色人種の分派・日本民族の深い神秘性、天性の賢さ、哲学、芸術、思想など名状しがたい知的洗練さの前には、まるで赤ちゃん同然です。(同書)

 

さすがに、「日本人を前にしたら、西洋人は赤ちゃんも同然」ということはないだろう。

 

 

・日本の近代化の理由

それは「ほめ過ぎ」としても、明治の日本はヨーロッパから学んで国を変え、アジアでは初となる憲法と議会をもった近代国家になったことは確か。

シドモアには、こうした「明治の魔術」の理由がよく分からなかったと思う。
日本人をこう言っている。

日本は今世紀最大の謎であり、最も不可解で矛盾に満ちた民族です。(同書)

 

「なぜ、日本だけが成功したのか?」

そんな疑問を感じたのは、むしろ、日本人と同じアジア人だった。

一方、ほとんどのアジア諸国で挫折ないし不可能だった近代化革命が、なぜ日本においてのみ成功したのかについても近年研究が盛んとなっている。

孫文やスカルノ、マハティール・ビン・モハマドや毛沢東をはじめ、その他アジアの指導者はほぼ例外なく明治維新に何らかの関心を持っており、その歴史的価値についての問い直しが盛んとなっている。

(ウィキペディア)

この謎を解くカギが「ケンシロウの強さ」になる。

 

ケンシロウの強さの理由。

・「一度戦った相手の技を覚えて、自分のものにする」という北斗神拳の奥義「水影心」がある。
・「自分より強い相手と戦って、その経験から学び取る学習能力の高さ」

 

日本の強さの理由。

・「中国や西洋諸国の良さを見抜き、それを自分のものにする恐るべき学習能力の高さ」

日本人は、持ち前の学習能力を発揮して日本を発展させた。

古代においては、唐をのぞけば東アジアで初めてとなる「律令国家」にした。
明治においては、アジアで初となる「近代国家」にした。

 

この日本の強さの秘密である「学習能力の高さ」は、まさにケンシロウの強さの秘密と同じ。
ということで、「日本=ケンシロウ説」を唱えてみた。

 

おまけ

中国メディア「鳳凰網」が日本人の民族性の特徴として、「学習能力」をあげている。
サーチナの記事(2016-09-18)

日本人の特殊な民族性は、どうやって形成されたのか

現代に通じる日本人や日本社会の性質は主に明治時代に培われたものである

まずは「学ぶこと」だ。明治政府は積極的に欧米から事物を学んだとするとともに、それが「単なる移植ではなく、無計画なものでもなかった」とし、社会や経済そして国力を高めるためという明確な目的意識を持っていたと説明した。

やっぱり、日本人の学ぶ力は外国人から見ても際立っているようだ。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。