雪の海と菜の花畑:今も昔も、日本の雪国と暖国じゃ大違い

 

ちょうどいまの時期、2月後半は二十四節気だと雨月になる。
*2022年の雨月は2月19日~3月4日ナリ。

このころになると暖かくなる日が増えてきて、空から降るものは雪から雨に変わっていく。
地面の雪が溶け始めるのもこのころで、春一番が吹いたり、ウグイスの鳴き声が聞こえ始めるところもある。
昔の日本は今よりも寒かったというから、多少の違いはあるだろうけど、とにかく雨月とはそんな季節で農業の準備を始める目安とされた。

静岡県では河津桜や菜の花、梅が咲き始めるころなんで、このまえの日曜日に、インド人を誘って菜の花畑を見に行ってきた。
そのとき菜の花の英語が「rape flower(flower of rape)」とか「rape blossoms」と知って、マジでビックリしたという話はこの記事を。

【忌み言葉】“菜の花”の英語にビックリ・rapeとrapidの語源

 

「快活」や「明るさ」というステキな花言葉を持つ菜の花が、英語になると「レ〇プ」って…。
まあそれほどではないけれど、でもビックリしたのが日本国内の気候の多様性だ。
静岡では、子供を連れた家族が黄色いじゅうたんを気分よく散歩しているころ、北海道は白い地獄の中にあった。

 

 

これは記録的な豪雪で特別とはいえ、通常の2月後半に北海道で散歩しながら黄色やピンクの花を愛でることはムリでしょ。
たぶん除雪して、雪をかき出さないと地面が見えてこない。
その一方で静岡で雪が降ったら、子供たちが歓声を上げて、大人は「雪っ!」と写真をSNSにアップする。

日本はせまい国だけど北陸は世界有数の豪雪地帯だし、気候に関してはかなりの違いがある。
明治時代、冬の北海道を汽車に乗って移動した石川啄木は窓の外を眺めて、そこに広がる景色に驚いたし感動した。
随筆「雪中行」にこんな文がある。

「窓越しに見る雪の海、深碧の面が際限もなく皺立つて、車輛を洗ふかと許り岸辺の岩に砕くる波の徂徠ゆきき、碧い海の声の白さは降る雪よりも美しい。 」

「空一面に渋い顔を披いた灰色の雪が大地を圧して、右も左も、見ゆる限りは雪又雪。所々に枯木や茅舎を点綴した冬の大原野は、漫そぞろにまだ見ぬ露西亜(ろしあ)の曠野(こうや)を偲(しの)ばしめる。」

ほかにも地面まで届く氷柱(つらら)を見たり、凍ったビールをストーブでとかして飲むとか、東京ではありえない体験をする。
汽車で走っていると川のない鉄橋が見えたから、石川がおかしいなと思っていると、近くにいた人が「石狩川です」と教えてくれた。
こんな大きな川が凍って、表面に雪が降り積もっているなんてことは、石川の想像を超える自然現象で川とは思えなかったらしい。

「大河が雪に埋れて見えぬと聞いたなら、東京辺(あたり)の人などは何といふであらう。」

 

越後から江戸へ出てきた鈴木牧之(すずきぼくし:1770年 – 1842年)は同じ日本国内にあるにもかかわらず、冬の雪国と暖国(江戸など太平洋側の地域)との違いにショックを受けて、『北越雪譜』に「雪国の人は春にして春をしらざるをもつて生涯を終る。」、「楽と苦と雲泥のちがいなり」と書いた。

現代の北海道でも石川の見た「川のない鉄橋」はあるだろうし、東京の人がそれを見たら驚くだろう。静岡住みのボクなら、それを見ることなく生涯を終えそうだ。
日本の太平洋側の「暖国」ではいま、空から降るものは雪から雨にかわって、菜の花畑が見られる二十四節気の「雨月」なワケんだが、北海道や北陸などの「雪国」にはその気配すらない。
大地に広がっているのは菜の花畑ではなくて、まだまだ一面の「雪の海」だ。
今も昔も、日本は北と南で雲泥の違いがある。

 

おまけ

雪国は使う言葉も違う。
コンビニで外国人の店員におじいちゃんが津軽弁で、

「つんするままど、ストーブのすみ、どさあるば?」

と質問して、店員がフリーズしたという話をいまネットで見た。
これは「レンジでチンするご飯と、ストーブの乾電池はどこにある?」という意味の日本語らしい。
うん、雪国と暖国はイロイロと違う。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。