数年前にアメリカ人を乗せて車で京都を旅行していたとき、信号待ちをしていると、助手席にいた彼が「なんだあれ?」と言って笑い出す。
目の前には市バスが止まっていて、そこにはこう書いてあった。
これのどこに笑いのツボがあるのか聞いたら、アメリカで「free ball」というと「パンツなしでズボンを履いている状態」という意味になるらしい。
たしかに辞書にも「for a man to wear his pants/shorts without any unserwear on」とある。
つまり、ぶらぶら揺れる自由度が高い、可動域が広がるということだろう。
だから「きょうオレはフリーボールなんだ」と言ったら、「きょうはノーパンなんだ」という意味になる。
それで、「あのスポーツバーに行く人は、みんなFREE BALLってこと?」とアメリカ人が失笑。
それじゃ変態クラブじゃん。
駐車場の案内で「月極駐車場」を「Moon ultra parking」と書くとか、日本にある変な英語なんて挙げたらキリがない。
ムーンウルトラって月面宙返りかよ。
「本日は工事中です。ご協力ありがとうございます」という日本語の下に、「Today is under construction. Thanks for your cooperation」と書いてあるのを見て、知人のアメリカ人が爆笑した。
これだと「今日を建設中です」みたいなよく分からない文になる。
何となく国際的でカッコイイ雰囲気を作り出すために、日本では看板や広告で、文法や意味を無視したデタラメ英語を使うことがあって、外国人のあいだでそんな日本人英語は「Engrish」と言われている。
これは「l」と「r」の発音が苦手な日本人をやゆした表現だ。
Engrish can be found in many places, including signs, menus, and advertisements. Terms such as Japanglish, Japlish or Janglish are more specific terms for Japanese Engrish.
Engrishの一例。
ill には「病気で、不健全な、気分が悪い、邪悪な、不吉な」といった意味があるけど、この店は何をイメージしたのか?
*知らなかったけど、「ill」にヒップホップやラップなどで「イケてる・ヤバイ」という意味で使われるらしい。
さて、いま京都高島屋の広告にある英語のこんなメッセージがSNS上で話題を集めている。
「Rising Again.Save The World from Kyoto JAPAN.」
新型コロナウイルスのダメージから立ち直ることを願って「世界を守ることを、京都から始めよう」と言いたかったらしいのだけど、英語圏の外国人には「日本の京都から世界を救おう」、「京都から世界を守れ」みたいに読めてしまう。
京都は世界を脅しているから、世界を京都からから救う?#泣いちゃう英語 ですね。Rising againはイエスの復活を思い出させるので、それも妙です。 https://t.co/HQqkRELUoS
— ロッシェル・カップ (@JICRochelle) November 8, 2020
「京都から世界を救おう」だと、京都は世界に害を与える邪悪な存在になってしまう。
正しい英文としては、
『Rising again from Kyoto. Save the world.』
『Save the world, let’s start it from Kyoto Japan』
といったものがあるらしい。
これにネットの反応は?
・イケズ文化は世界の敵
・広告代理店担当者の運命やいかに
・京都人特有の言い回しなんだろ
・この広告が出来上がるまでに数十人がコピーを読んだだろうに、誰も違和感を感じなかったのかよ
・うるせぇブブ漬けでも食ってろ
・これを笑える日本人は多くないわな 俺も何が間違いなのかわからなかったw
・京都は京都以外敵だからこの英文は正しい
京都人の話す日本語はこんな感じに、言外の特別な意味があるのだ。
「元気なお子さんやねぇ」→「Shut that boy up」(そのガキを黙らせろ)
「いい時計してはりますなぁ」→「I’m tired of your long talk」(おまえの長話にはウンザリだ=早く帰れ)
「Save The World from Kyoto JAPAN」の真の意味も、まだ誰も気づいていないのかも。
いまでは考えられないけど、日本人が本格的に英語を学び始めた明治時代には、こんな日本人が現れて福沢諭吉をあきれさせた。
英語ばかりを勉強するから、英書は何でも読めるが日本の手紙が読めないというような少年が出来てきた。
波多野承五郎などは子供の時から英書ばかり勉強していたので、日本の手紙が読めなかった「福翁自伝 福沢諭吉(岩波文庫)」
なんで国内で帰国子女のような日本人が生まれるのか謎。
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>英語ばかりを勉強するから、英書は何でも読めるが日本の手紙が読めないというような少年が出来てきた。
あー、まったくその通りです。やばいやばい、気をつけましょう。
米国で1年も暮らしていると、英語で生活をなんとかしようと一生懸命になるあまり、日本語を読んだり書いたりするのが不自由になってくるのですよ。これホントの話。真面目で真剣に取り組む人間ほどそうなりやすい。そのこと、現地の米国人から注意されたこともありました。
だけど、今ではコンピューターの「かな漢字変換」にすっかり頼りきりなものですから、漢字が全然書けなくなってしまいました。10代の頃に比べると、自分で書ける漢字は、おそらく半分以下になっているでしょうね。
ま、しょーがないか。これも時代の流れ。英語との翻訳だって、Google先生がすぐやってくれるし。
ヘンな英語と言えば、西武新宿線・高田馬場駅からよく見えるビルの外壁に大書してあった「Big Box」が代表格ですかね。いっとき、あれを見るたび大笑いしている欧米人をよく見ました。朝の通勤時間から「巨大な女性器」なんて目にしたら、そりゃ笑えるでしょうよ。1日が楽しくなるに違いない。(もしかしてそれを狙っていたのか?)
「Big Box」はマズいですね。
首都のど真ん中でそんなものがあるとは…。