第一次世界大戦が「文明化されたヨーロッパの自殺」の理由

 

毎年11月11日になると、日本と海外との温度差を感じる。

日本では「ポッキーの日」という平和でのんきな日である一方、11月11日は1918年に第一次世界大戦が終わった日だから、世界の多くの国で犠牲者を追悼するための式典が行なわれる。
第一次大戦は世界戦争だったから、ヨーロッパだけでなく、カナダ、インド、ケニヤ、ベリーズなどでもこの記念日がある。

このとき日本も連合国として参戦したけれど、本格的な戦闘はなく、犠牲者も少なかったから、注目度で言えば「ポッキーの日」の方が圧倒的に上だ。
ちなみに、韓国には「ペペロ」というポッキーに似たお菓子があるから、11月11日は「ペペロの日」というのんびりした日になっている。
第一次世界大戦の嵐に巻き込まれなかったから、日韓では穏やかな日だ。

 

 

第一次世界大戦では、ヨーロッパで6000万以上の軍人が動員され、4年にわたる戦いで、戦闘員と民間人の死者の合計は1500万人を超えた。
死傷者の数は3700万人に達するというから、この破壊と殺りくはちょっと想像できない。
この前例のない戦争は「世界戦争 (World War)」 や「大戦争 (Great War)」 、主戦場に注目して「欧州大戦 (War in Europe)と呼ばれた。
また、「戦争を終わらせるための戦争(The war to end war)」という小説のタイトルみたいな表現もある。
この戦争は人類最後の戦争になるという理想的な見方だったが、この後、第二次世界大戦が始ぼっ発したから、結果としては壮大な“不幸フラグ”だった。

当時のローマ教皇ベネディクトゥス15世は中立を宣言し、第一次世界大戦を「文明化されたヨーロッパの自殺(the Suicide of Civilized Europe)」と名付けた。
世界で最も高度な科学技術をもつ国どうしが争い合ったら、一体どうなるのか?
恐ろしく破壊的な武器が次々と考案されて実戦で使用され、破壊と虐殺の限界(limit)はなくなってしまう。
結果、大地は流された血で赤く染まり、負傷者や死体で覆われることになる。

There is no limit to the measure of ruin and of slaughter; day by day the earth is drenched with newly shed blood and is covered with the bodies of the wounded and of the slain

Ad beatissimi Apostolorum 

第一次世界大戦で使用された武器

 

この戦争では、毒ガス、戦車、機関銃、潜水艦などの新兵器が初めて登場し、これが前代未聞の犠牲者を出す主要因となる。

第一次世界大戦はどんな戦争なの?新兵器と総力戦とは?

未来を築くはずの若者たちは戦場で亡くなり、都市は破壊されて、ヨーロッパの国々は大きな打撃を受け疲弊した。
相対的にアメリカは力を増し、世界最大かつ最強の国となる大きなきっかけとなった。
第一次世界大戦の後、日本は世界五大大国の一国となる。
ヨーロッパが“自殺”したことによって影響力は減少し、世界のパワーバランスが完全に変わったのだ。
文明化された国々が全力で戦えばこんな未来しかない。

それでもまた世界大戦がはじまり、現在でも戦争が行なわれているのだから、まさに歴史は繰り返す。

これさえ終わればもう争いは起こらないーー。
そんな「すべての戦争を終わらせるための戦争」なんて非現実的な理論だった。かといって、まだ人類は戦争を防ぐシステムを見つけていない。
本当に文明化された世界はよ。

 

 

ヨーロッパ 「目次」

【多様性の失敗】ユーゴスラビアと日本、歴史や国家の違い

第一次世界大戦と日本:大正時代の若者文化「モボ・モガ」

残酷な海外の歴史と比べると、日本史はけっこう“ぬるい”

毒ガスの歴史。人命を救うために開発し、大量虐殺で使われた

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。