残酷な海外の歴史と比べると、日本史はけっこう“ぬるい”

 

1014年に、東ローマ帝国とブルガリア帝国による「クレイディオン峠の戦い」があった。
この戦いに勝った東ローマ帝国皇帝バシレイオス2世は、捕虜となった15000人のブルガリア兵を100人ずつのグループに分けて、そのうち99人の両目をつぶし、残った1人の片目も奪った。
そんな鬼畜話をこの記事で書いたのですよ。

クレイディオン峠の戦い:あまりの残酷に、皇帝がショック死

当時の日本は平安時代の真っ最中で、その名前にふさわしく、この時代の日本では処刑がなかった。
でも例外はある。
日本が天皇を中心とする朝廷から、武士の世の中になるきっかけとなった1156年の保元の乱では、敗北した崇徳上皇についた武士が死刑に処された。

外国人にはムズっ 日本で「武士の世の中」はいつ始まった?

平安時代に処刑が行われたのは、810年の「薬子の変(平城太上天皇の変)」のとき以来、約350年ぶりのこと。

当時の日本人はとても迷信深く、怪異や呪術の力をガチで信じていたのだ。
「薬子の変」が起こる前、病気になった平城天皇はこれを叔父の早良親王や伊予親王の祟りによるものと考えて、禍を避けるために譲位した。
また薬子の変で、嵯峨天皇の勝利を祈念した空海はその“呪術的な力”で名声を高め、日本仏教界でナンバーワンの実力者になる。
海外で1000年なら、罪人を処刑するのはアタリマエのことだったのに、平安時代の日本人はそうしなかった。
これは、祈祷の力を信じていたり怨霊を恐れていたなど、迷信深かったことが理由では?
処刑を命じた人間が恨まれて、怨霊によって病気になったり、落雷に打たれて死ぬことをホンキで恐れたことはあったと思う。

 

クレイディオン峠の戦いで、13500人の兵士の両眼をつぶしたというのは例外としても、世界の歴史では、日本人にはドン引き必至の残酷な出来事が多い。
中世・近世のヨーロッパを見ると、16世紀フランスの「サン・バルテルミの虐殺」、17世紀ドイツの「三十年戦争」での虐殺、15~18世紀の魔女狩りがあった。
7世紀にはサウジアラビアで「クライザ族虐殺事件」が起きた。
*くわしいことは「大量虐殺」で確認。
一神教のキリスト教やイスラム教では、昔は異教徒を残らず殺害することは「神の意志」や「正義」と考えられていたこともあったからか、こんな凄惨な行為が行われたのだろう。
中国史やモンゴル帝国の時代にも、虐殺事件は何度も起きている。

 

日本の歴史でも残酷は出来事はあったけど、海外に比べると甘い。
もちろん21世紀の常識や価値観からしたら、とんでもなくオソロシイ出来事は多々あったけれど、世界史と比較すると日本の歴史はわりとゆるい。
『東大教授がおしえる やばい日本史』の著者で、東京大学の本郷和人教授がダイアモンドオンラインの記事でこう話す。(2020.12.26)

じつは、日本には基本的に虐殺ってないんです。僕が40年間歴史を勉強してきてわかったことの一つが、「日本史はぬるい」ということです。島国だからか、草食だからなのかわからないけど、虐殺はない。

東大教授が教える「日本史上最もやばい人物」ベスト3

 

「基本的に」ということで、虐殺がゼロだったわけではない。
「日本史上最もやばい人物」の1位に織田信長を選んだ本郷氏はその理由を、「日本史上で唯一、虐殺を行った人物ですから」とした。

1570年のきょう7月30日は、織田信長&徳川家康の連合軍が、浅井長政&朝倉義景の連合軍と戦う「姉川の戦い」があった日。
この戦いで、浅井を支援した延暦寺を信長は許さなかった。
それで1571年に「比叡山焼き討ち」を行って、1500~4000人を殺したと言われる。
ほかにも伊勢2万人、越前で1万2000人を殺害した信長は日本史上最もやばい人物にふさわしい。

ただ、織田信長は日本の歴史の中で、ほかの人物とは比較不可能なほどオンリーワンの存在だ。
規格外の例外がすさまじいコトをすることはあても、日本史では基本的に虐殺はないし、海外の歴史と比較するとやっぱり「ぬるい」。
罪人の体の肉を刃物で少しず~つ削り取って死に至らしめる、中国で開発された究極の処刑法・凌遅刑(りょうちけい)は韓国でも行われたけど、日本人は採用しなかった。
それどころか、平安時代には死刑がなかった。

【西と東の処刑法】慈悲あるギロチンと、最も残酷な凌遅刑

虐殺がなかったのは島国だから、草食だから、といったこともあるのだろうけど、日本には一神教的な価値観がなかったことも大きかったと思う。
異教徒や異端者の全滅を「神の意志」とし、それを「正義」と考えれば罪悪感がなくなって、すさまじく残酷なことでもできてしまう。
日本の歴史では基本的にそういうことがなかった。

 

 

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1 個のコメント

  • <<<日本の歴史でも残酷は出来事はあったけど、海外に比べると甘い。
    ゲーテ「外国の良し悪しを知らない者は、自国の良し悪しについて何も知らない。」
    出典: 『箴言と省察』

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。