パレスチナ問題で、親日イスラム教徒の思いが重い件

 

先月7日、イスラム組織ハマスが世界を変えた。
イスラエルに奇襲をしかけ、外国人を含む1000人以上を殺害し、200人以上を拉致する。

すると始まるイスラエルのターン。
ハマスをこの世から消し去るために、激しい攻撃を加えることは予想できたが、現実はそれを超えていた。
イスラエル軍は病院や学校、難民キャンプに対しても空爆をおこない、ガザ地区だけで死者の数は1万人を超え、さらに増え続けている。
もっともイスラエル側は、ハマスがそうした施設を軍事拠点に利用していたと主張していて、真実は見えてこない。
でも、増え続ける犠牲者については、どっちにも責任がある。

イスラエル軍の攻撃の激しさとガザでの被害の大きさから、いま世界的に反イスラエル感情が高まっている。
でも、日本は“無風”だ。
歴史的に、ユダヤ人やイスラム教の影響は薄いから、日本では特に目立った出来事はない。
…と思っていたら、きょうの午前中、東京のイスラエル大使館の近くにあった侵入防止用の柵に、50代の男が運転する車が突っ込んで、警備中の機動隊員がケガをした。
関係ない日本人を巻き込むな、アホ。

 

パレスチナ問題や今回のイスラエル・ハマスの戦争では、世界中のイスラム教徒が反イスラエルの立場を取っている。
それで、中立的な世論を動かし、自分たちの側に引き込もうと“情報戦”をする人もいる。
たとえば、以前日本に住んでいたバングラデシュ人の友人が下の動画を送ってきた。
そこにはイスラエル軍に母親を殺され、泣き叫ぶ女の子の様子が映っていて、彼女は「この母と娘に一体どんな罪があったのか?」、「イスラエル軍はこの責任をどう取るつもりなのか?」と怒る。
そう言われても、困るのだけど。

 

 

イスラム教徒のインド人からは、ガザのこんな悲惨な写真が送られてきた。

 

 

イスラエル軍の空爆によって廃墟となったビルから、男性が顔の灰を落とすことなく、片手で赤ん坊を抱き、もう一方の手で子どもの手を引き、さらに3人の小さな子どもを背負って避難している。
知人のインド人はこの写真を見せて、先ほどのバングラデシュ人と同じようなことを言い、「君はこれを見てどう思う?」と聞いてくる。
また、イスラム教徒のエジプト人からもらったメールを開いたら、こんなメッセージがあった。

「I hope that more people know the truth to stand with justice」
(より多くの人々が真実を知り、正義のために立ち上がることを願っている。)

インドネシア人のイスラム教徒は SNSでこう訴える。

「You don’t have to be a Muslim to support Palestine; you just have to be human!
Let the whole world know that the Israeli aggression is carrying out terrorist acts against children and women in occupied Palestine.」

「パレスチナを支援するのに、ムスリム(イスラム教徒)である必要はない。ただ、人間であればいい!占領下のパレスチナで、イスラエルが子どもや女性たちにテロ行為をしていることを全世界に知らせよう。」

彼らはみんな日本が大好きだ。
日本のアニメや食べ物が好きで、日本人は礼儀正しいと高く評価している。
だからこそ、100%の善意から、イスラエルの“悪行”を熱心に伝えてくるのだけど、こっちはもう満腹だ。
彼らの思いはウザいとは言わないが、圧迫感を感じてすごく重い。

しかも、別の問題もあるのだ。
この画像をよく見てほしい。

 

 

男性の右腕や子どもたちの足が不自然に見える。
世界中に拡散されたこの写真は、後に人工知能(AI)によって生成されたものだと判明した。
素人でもよく見れば気づきそうなもので、クオリティーはあまり高くない。
これを送ってきたインド人は、イスラエル憎しの感情からそれに気づかなかったのか、じつは知っていたけれど、「ガザがこういう悲惨な状況になっているのは事実」と解釈したのかは不明。
でも、こういうことがあると、「お母さんに会いたい!」と泣く女の子も、どこまで本当かどうか分からなくる。

 

自分は絶対に正しいことをしていると思い込でしまうと、間違ったことや不正なことまで正当化されてしまう。
大使館に車で突っ込むのは別次元だけど。
「日本人の友人が“誤った方向”へ進まないように」という熱い思いはわかる。
でも、中立を認めないというのは重すぎる。
だから、最近では、イスラム教徒の知り合いからメールをもらうと、開くことに少しためらいを感じてしまうのデス。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。