ある日、突然、空からパラグライダーに乗った人たち現れた。
イスラエルの市民は、それが一体何なのか分からなかったけれど、とりあえず興味津々でスマホを取り出してその様子を撮影する。
このとき、彼らはまだ気づいていなかった。
空から降ってきたのは、イスラム武装組織「ハマス」のテロリストだということを。
そして、地上に降り立った戦闘員が銃で市民を襲い、女性や子どもまで殺害する未来を。
Hamas terrorists paraglide in to Israel, they went door-to-door to massacre, innocent civilians, rape and murder women and children#Israel #Hamas #Palestine #Palestinian #IronDome #Gaza #TelAviv pic.twitter.com/PgWoKoOBsV
— JIX5A (@JIX5A) October 8, 2023
同時に、ハマスはイスラエルの都市に数千発ものロケット弾を撃ち込んだ。
下の動画では、イスラエル軍のミサイルがそれを迎撃している。
日本の空でこんな音と光があるとしたら、花火大会しか思いつかない。
まったく関係ないのだけど、日本軍にあった落下傘部隊「空の神兵」を思い出した。
社会的な安全で言えば、パレスチナ問題を抱えるイスラエルは日本の反対側にある。
数年前に京都へ行ったとき、そんな国からやってきた旅行者と知り合った(上の2人)。
イスラエルでは兵役が国民の義務となっていて、彼女たちも女性ながら2年間、軍隊で生活していたという。
こういう背景からして、イスラエル人と日本人では、安全保障に対する考え方で天地の違いがある。
彼女たちとの会話で特に印象的だったのは、パレスチナ側に対する強烈で絶望的な不信感。
パレスチナ問題の解決については、言うだけなら超カンタンなのだけど、結局は国際社会の後押しを受けて、当事者どうしが話し合って解決するしかない。
日本の各メディアも細かい違いはあれど、あの地にイスラエル人とパレスチナ人の国家を建設して国境を定め、共存していくべきだと主張している。
武力によって、どちらかの勢力を完全粉砕することが解決になるワケないのだから。
ただ、現在のところ、その話し合いのメドすら立っていないのだけど。
でも、この2人はパレスチナ側の、特にハマスを1ミリも信用していなかった。
ハマスは毒蛇のようなもので、話し合っても、後から必ず裏切るから意味がないと。
彼らが和平に合意したとしても、その目的は、次の攻撃の準備期間を得るためでしかない。
武器を集め、兵士に訓練を行って攻撃力を高める時間をかせぐために、彼らは話し合いに応じる。
ハマスはイスラエルの存在を認めようとしないから、口では何を言っても、常に攻撃するチャンスを狙っている。
たとえ平和な時間があっても、その影でハマスが次の攻撃の準備を整えていると考えると、かえって不安が大きくなる。
2人は軍にいた経験から、ハマスに対しては疑念しかもっていないと言う。
何事も起こらないと、そんな日常が続くわけないから、ふと恐怖を感じる。
「平和が怖い」というのは、日本だとラノベ小説のセリフだ。
同じ地球上でも、住んでる世界が違い過ぎる。
今回のテロ事件については、2人の見方は完全に正しかった。
ハマスの拠点があるガザ地区はイスラエルによって周囲が封鎖されていて、人やモノの移動が制限され、自由が奪われた状態にある。
失業率は約50%に達し、人々は貧困に苦しんでいる。
そんな困難な状況のガザはよく「天井のない監獄」と表現される。
ハマスは最近まで攻撃を仕掛けることはなく、イスラエルに住民の雇用を要求し、ガザ地区の経済状態を改善しようとしていた。
が、それはウソだった。
イスラエルの警戒モードを下げるために、そんな態度を見せただけだった。
それはハマスの擬態で、実際には、イスラエル市民の殺害や拉致といった目標を定め、それを成功させるために徹底的な訓練を行っていたことが分かった。
朝鮮日報の記事(2023/10/11)
ハマスはイスラエル住民の集落を模擬的に作り上げ、各家屋を武装隊員が襲撃する訓練まで行った。軍部隊を攻撃するため、探知されることなく到達できる動線まであらかじめ確認していたという。
イスラエル版「太陽政策」に応じるふりして裏では拉致の訓練をしていたハマス
「太陽政策」とは、かつて韓国が北朝鮮にとっていた政策のこと。
軍事力で南北を統一するのではなく、経済支援や人道援助、文化交流などを深めていき、平和的な統一を目指すというもの。
しかし、それは失敗に終わった。
イスラエルの最大の目標は、平和や安全を手に入れること。
ハマスと全面対決した場合、自分たちが大きなダメージを受けることは明らか。
そこで最近では、イスラエルは武力衝突を避けて、ガザ地区の市民に経済的メリットを与えることを重視してきた。
2021年以降、イスラエル側で働くことのできる許可証を発給し、ガザでの仕事の約10倍の賃金を得られるようにした。その雇用許可証を手に入れた人は2万人近くいる。
彼らがイスラエル側から受け取ったお金を使うことで、ガザの人たちの生活も良くなる。
もし、ハマスが攻撃を行えば、こうした人たちは仕事を失い、ガザは経済的に大きなダメージを受ける。
だから、イスラエルは経済支援が武力衝突の抑止力になると考えた。
ここ2年ほどハマスもその方針に呼応し、「戦争ではなく、ガザ地区が豊かになることを重視している」という態度を示してきた。
イスラエルはガザに圧力をかけながら、こんな「太陽政策」によって平和を保とうとしたが、そんな温情はハマスには通じなかった。
ウォール・ストリート・ジャーナル日本版の記事は、今回の襲撃によってイスラエルの「アメとムチ」政策は破綻したと報じる。(2023年10月11日)
日本のメディアはガザに対するイスラエルの「ムチ」を強調して、この韓国やアメリカのメディアのように、「アメ」の部分は報じていない気がする。
イスラエルはガザの封鎖は解除しないものの、貿易の制限をゆるめ、住民に経済的な利益をもたらそうとした。
ネタニヤフ首相は、アラブの国がハマスへ数百万ドルの送金をすることも認めた。
ガザが経済的に豊かになることが、ハマスに攻撃を思いとどまらせ、地域の「平和維持力」を高めると考えたから。
しかし、現実には、それはハマスの「テロ準備期間」になっていた。
イスラエルがハマスを少しでも信じて平和を期待した結果、1000人以上が殺害され、100人以上が拉致され、数千発のロケット弾が打ち込まれるという最悪の事態が発生した。
これらの武器の製作や購入には、イスラエルの「アメ」によって得られたお金が使われたはず。
平和ボケした日本人に言われたくないだろうけど、空から降りてくる人間を戦闘員だとまったく気づかずに、「なにあれー」と無邪気にスマホを向けるイスラエル市民は警戒心がユルユルだったと思う。
赤ん坊から老人まで無差別に殺害し、市民を拉致して自分を守る道具に使うテロリストは、もう人間とは言えない。
後で必ず裏切るテロリストとの対話は無意味。
イスラエル側がハマスを「動物」や「怪物」と呼び、根絶やしにすると宣言した気持ちも理解できる。
今の情勢からすると、ハマスを根絶するための地上戦は避けられそうにない。
でも、ガザはジャングルじゃないから、たくさんの人間もいる。
そういう人たちが戦闘に巻き込まないことを願うしかない。
2000年前ぶりの帰還:ユダヤ人はイスラエル建国をどう思う?
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