では、前回の続きです。
でもその前に、初めてこの記事を見てくれた人もいると思うから、前回の内容を簡単にふり返っておきたい。
去年、北朝鮮が何度もミサイルを発射して、多くの日本人を不安にさせる。
そんなとき、毎日新聞が「北朝鮮と話し合い仲良く」という小学生の声をのせていた。
北朝鮮と日本(世界)が話し合って仲良くなって、核・ミサイル問題を解決する。
そうなってくれたら、たしかにうれしい。
What a Wonderful World(この素晴らしき世界)だ。
「武力ではなくて、話し合いで問題を解決する」という考え方は、イギリスのチェンバレンがとっていた「融和(ゆうわ)政策」に通じる。
ナチス=ドイツのヒトラーとミュンヘン会談(1938年)をおこなったチェンバレンは、「この話し合いで解決した!」と確信して、イギリス帰国後に「平和宣言」をおこなう。
はたして、世界は平和になったのか?
チェンバレンが平和宣言をした翌年に、第二次世界大戦がはじまった。
第二次世界大戦の開始
1939年9月1日のドイツのポーランド侵攻に対し、ポーランドの同盟国イギリス・フランスが9月3日、ドイツに宣戦布告したことから始まった。
「世界史用語集 (山川出版)」
イギリス人が平和を味わっているとき、ヒトラーは着々と戦争の準備をしていたのだ。
チェンバレンは完全にだまされていた。
でもチャーチルはちがう。
チャーチルには、「この平和は見せかけのものである」ということが分かっていた。
ヒトラーの本質を見ぬいていたチャーチルは、話し合いで解決しようとするチェンバレンを批判していた。
ヒトラーが戦争をしかけてきたことで、チャーチルの読みが正しかったことが証明される。
チェンバレンにかわって首相になったチャーチルはドイツとの戦争を決意した。
ドイツに宣戦布告し戦い抜いて、イギリスと世界を勝利に導く。
「ニューズウィーク(2016.2.2号)」のコラムではチャーチルをこう評価している。
イギリスは英本土上空の戦い「バトル・オブ・ブリテン」でドイツ空軍を撃退。連合軍は44年フランスに上陸し、45年5月にドイツを降伏させた。
戦後の世界にとって、ファシズムと真正面から戦い続けたチャーチルはあの戦争を終わらせてくれた恩人でもあった。
「独裁者から世界を救った名宰相チャーチルの死」
前回紹介した中央日報の記事(2018年02月23日)にも、同じような言葉がある。
チャーチルは「本質を正しく見た」という点だ。今日の自由民主主義世界はチャーチルがヒトラーの実体を直視したおかげだといっても過言でない。
チャーチルはヒトラーの本質を見ぬいたけれど、文大統領はどうなのか?
「どんな戦争も悪だ」という見方は基本的に正しいけれど、例外もある。
いまの世界は、ヒトラーを相手に話し合いで解決しようとしたチェンバレンよりも、ドイツとの戦争を決断したチャーチルを高く評価している。
もちろん、チェンバレンもチャーチルも平和主義者だ。
ただチャーチルは”見せかけの平和”にだまされることはなく、冷静にして現実的、そして決断力のある平和主義者だった。
そんなチャーチルはこんな言葉を残している。
金を失うのは小さく、名誉を失うのは大きい。
しかし、勇気を失うことはすべてを失う。
言葉に品はないけれど、中国の羅援(ら えん)という軍事評論家はこんなことを言っている。
「何でも平和的手段で解決しようとするのは平和ボケだ」
相手がヒトラーなのに平和的な解決をめざしたチェンバレンを見て、チャーチルもこんな気分だったと思う。
参考までに、チェンバレンの融和政策に対する国際社会の評価をのせておく。
一連のチェンバレンによる宥和政策は「ドイツに軍事力を増大させる時間的猶予を与え、ヒトラーに対し、イギリスから近隣諸国への侵攻を容認されたと勘違いさせた」として非難されている。
特に1938年9月29日付けで署名されたミュンヘン協定は、後年になり「第二次世界大戦勃発前の宥和政策の典型」とされ、第二次世界大戦を経た現在では、専門家並びに一般は強く批判されることが多い。
相手の本質を見ぬいたチャーチル。
それができずに、ヒトラーとの話し合いで解決できると考えたチェンバレン。
この対照的な2人の比較はよくおこなわれる。
産経抄(2016.7.9)にもこんな文があった。
チャーチル英元首相は、1930年代の英国のナチス・ドイツに対する宥和(ゆうわ)政策を痛烈に皮肉っている。
「何も決定しないことを決定し、優柔不断であることを決意し、成り行き任せにするということでは断固としており…」。
この宥和政策がむしろ、ヒトラーを慢心させて第二次世界大戦につながったというのが歴史の教訓である。
チェンバレンはドイツとの戦争をおそれて、「何も決定しないことを決定」してしまう。
その態度が第二次世界大戦の原因になってしまったのは皮肉だ。
おまけ
これを見たことがあるだろうか?
ドイツと戦っていたとき、イギリス情報省がこの「Keep Calm and Carry On (平静をたもち、普段の生活を続けよ)」というポスターをつくった。
ドイツ軍の攻撃を受けても、イギリス人は心乱されることなく落ち着いて生活しようと心がけた。
この言葉はそんなイギリス人の精神や態度をあらわしている。
イギリス人はナチス・ドイツの脅威にひるむことなく生きていた。最悪の事態が迫っていた人々は犬を散歩させ、仕事に出かけ、配給制の下でなんとか日々をしのいでいた。
「驚きの英国史 (コリン・ジョイス)」
これは世界的に有名な言葉で、ボクも海外旅行をしているときに「Keep Calm and Carry On」のバッグやマグカップなんかを見たことがある。
こちらもどうぞ。
今日本人が学ぶべき、イギリスの精神「Keep Calm and Carry On 」
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