イスラエルには「諸国民の中の正義の人」という名誉ある賞がある。
これは、ナチスによるユダヤ人絶滅(ホロコースト)から生命の危険をかえりみずユダヤ人を守った非ユダヤ人に授与する賞のこと。
さて、この賞を受賞した日本人といえば?
それはもちろんこの人、杉原千畝(ちうね)さん。
杉原は第二次世界大戦中、リトアニアの日本領事館に勤務していた外交官で、「命のビザ」を発給して約6000人のユダヤ人の命を救ったといわれている。
イスラエルはユダヤ人の命を奪った人間は絶対に許さないけど、命を守った人間のことは忘れない。
それで今年の「国際ホロコースト記念日(1月27日)」に、イスラエルにとっては首都のエルサレムで杉原の偉業をたたえる式典が行われたのだった。
NHKニュース(2019年1月28日)
「命のビザ」杉原千畝をたたえる式典 エルサレム
この式典では杉原について、「人生のリスクを冒してまで私たちを助けてくれた、杉原の勇気ある行動を決して忘れない」と紹介していたとか。
さらに、彼の名を刻んだ石のパネルが設置されたという。
日本では誇りとされている杉原千畝だけど、時事通信に残念なニュース(2019年02月12日)があった。
「命のビザ」植林が消失=杉原千畝記念碑も所在不明-イスラエル
1985年、イスラエル政府が杉原に「ヤド・バシェム(諸国民の中の正義の人)賞」を贈った年に、彼のビザで命を救われた人やその親族などが記念の植林を行った。
それがいつの間にか伐採されていたことが分かって、超ガッカリっす。
杉原の業績を記した記念碑も消えていた。
ただ、すべての植林が消失したかは分からない。
これには内外のユダヤ人も怒っているらしい。
イスラエル国内外のユダヤ人社会からも、木や記念碑を守れなかったことに強い批判の声が出そうだ。
何者かが悪意を持って植林の伐採や記念碑を破壊したわけでなくて、工事のときに過ってなくしてしまったようだ。
イスラエルは乾燥していて緑が少ない。
多くのユダヤ人を救った杉原について、時事通信の記事には「イスラエルで英雄視」されていると書いてある。
でも、イスラエル人(ユダヤ人)に聞いてみると、意外と杉原のことを知らない。
ボクが聞いた範囲では、誰も知らなかった。
こちらが杉原の話をすると、「そんな日本人がいたんですね」とイスラエル人が驚くぐらい。
去年の夏、京都の宿で2人のイスラエル人と出会った。
エルサレムで生まれ育った彼女たちも杉原千畝は初耳。
エルサレムに「杉原千畝通り」という道があることも知らず、その場でインターネットで検索して「本当だ!あなたは私たちよりエルサレムのことを知っている」と笑っていた。
イスラエルでの杉原千畝の知名度のなさには、驚くというかガッカリする。
ちなみに、リトアニア人も杉原千畝のことを知らない。
日本で留学している知り合いのリトアニア人は、日本について調べていたら偶然、杉原のことを知ったという。
日本では自分がリトアニア人と分かると、「じゃあ、杉原千畝は知ってる?」とよくきかれるらしい。
この質問は、在日イスラエル人・リトアニア人が感じる「日本人あるある」だと思う。
それでも杉原千畝は素晴らしい人で、日本人の誇りであることは間違いない。
でもそのテンションで、イスラエル人やリトアニア人に接するときっとガッカリする。
おまけ
今年の「国際ホロコースト記念日(1月27日)」に、イギリスのメイ手相が600万人のホロコースト犠牲者に追悼の言葉をささげていた。
No words can ever do justice to the six million souls who were so cruelly murdered in the Holocaust – but we can pay a fitting tribute through our deeds today.#WeRemember #HolocaustMemorialDay pic.twitter.com/AtkI8Cn5t7
— Theresa May (@theresa_may) 2019年1月27日
それにもかかわらずイギリスでは、成人の20人に1人が「(ホロコーストは)起きなかった」、12人に1人が「(600万人という数字は)誇張されている」と考えていることが調査の結果、明らかになった。
くわしいことはBBCの記事(2019年01月28日)をどうぞ。
ナチスのホロコースト、イギリスの成人5%が「信じていない」=調査
日本のネットでもときどき、「あれはウソ」「600万という数字は大げさ」と書き込む人がいる。
これはガッカリではなくて、本当に恐ろしいことだ。
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