韓国の議員が「ソウルで旭日旗を認めよう」と言った結果…

 

日韓の間で、見方が180度ひっくり返るものの一つが「旭日旗」。
日本でこれは文化の一つになっていて、漁師が大漁を願って旗のデザインにすることもある。
しかし、玄界灘の向こう側では、旭日旗は日本の軍国主義を象徴する旗、「戦犯旗」として激しく嫌われている。
ナチスのハーケンクロイツと同一視されることも多い。

3年前、そんな認識の違いがよくあらわれた事案が発生。
ソウルにある日本大使館の近くで、大学生3人が旭日旗を燃やして逮捕された。
この出来事に対して韓国の人たちがどう思ったかというと、それを報じる韓国メディアの動画に寄せられたコメントを見るかぎり、「支持する」が圧倒的に多い。

・この学生に奨学金を渡さないと
・警察のおじさんたち、こういう時は目をつぶってくれよ
・政府ができないことを学生がやるんだから褒めてやれ

 

 

まったく知らなったのだけど、ソウルでは、公共の場所で旭日旗など「日本の帝国主義」を連想させるモノを使うことは禁止されている。
*上の大学生が捕まった理由は、無許可で抗議活動をしたかららしい。
最近、約20人の市議会議員がこれは行き過ぎていると批判し、条例の廃止を訴えたと思ったら、一日でそれを撤回したという、とても韓国らしい動きがあった。

ハンギョレの記事(2024-04-06)

韓国の与党所属ソウル市議、公共の場で旭日旗使用認めようとしたが…翌日に撤回

この条例には、(おそらく旭日旗を取り締まるための)委員会が明示されたのに、実際にはそんな組織は運営されていない。
現実的には無意味になっているから、議員たちは批判されることを覚悟で、条例の廃止を訴えたようだ。
しかし、国民や議員から想像の120倍のバッシングを受け、高速で撤回した模様。

 

旭日旗の認識については、韓国と世界との温度差がすさまじい。
2022年に、イギリス海軍と海上自衛隊が共同訓練を行った際、イギリス側は「かしま」や「しまかぜ」の掲げる旭日旗(ensign)に「コンニチハ」と日本語で歓迎の意を表明した。
ハーケンクロイツにこんなことをしたら、きっとイギリス海軍のトップの首が飛ぶ。

 

海外ではこれが普通の認識で、ソウル市の議員が指摘するように韓国の反応が過剰&過激なのだ。
議員たちの提案には、そんなギャップを埋める意味もあったと思うが、360度から十字砲火を受けて、すぐに降伏に追い込まれた。
しかし、旭日旗の使用を禁止する条例ができた前後で、具体的にソウルはどう変わったのか?
きっと何も変わっていない。

そのための委員会さえ、存在しないか機能していないのだから。
そもそも条例ができる前、日本の帝国主義を賛美し、旭日旗を掲げていたソウルの市民なんていなかっただろう。
実質的には無意味でも、「この学生に奨学金を渡さないと」といった国民感情に合っていれば、“勢い”で法が制定されてしまう。
そして、一度それができると、もう修正することは不可能に近いことは、今回の議員のチャレンジで明らかになった。
これは韓国にとって良いこととは思えない。
韓国にも、じつはそう考えている人は多いのだろうけど、固定化された“空気”を破ることは本当にむずかしい。

 

 

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2 件のコメント

  • “固定化された“空気”を破ることは本当にむずかしい。”
    そうです。

    その空気を壊すためには、これまで溜まっていた「嘘の山」を崩さなければならない宿題を先にしなければなりません。とても時間がかかる、とても大変な作業です。
    韓国人にとって日本は500年間も「蛮族」として認識されており、1945年以降現在まで79年間は「悪魔」として認識されています。そんな偽りの山を一瞬にして崩すのはとても難しい作業です。

  • この議員たちも覚悟をもって提案したと思うのですが、一日でやめてしまいました。
    空気の圧力のすごさを感じます。
    ですがいっぽうで、韓国で日本のお菓子や食べ物などは大人気と聞きました。
    歴史と文化の分離はこれからもつづくでしょうね。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。