【卍とカギ十字】日本のお寺で、インドネシア人から聞いた話

 

似て非なるもの、それは仏教のシンボル「卍」とナチスの「ハーケンクロイツ(カギ十字)」。

 

 

日本ではお寺の地図記号にもなっている「卍」は、とてもいい意味を持つ漢字だ。

武則天の長寿 2 年(693年)、「卍」を「萬」と読むことが定められた。吉祥万徳の集まる所の意味である。これにより卍が漢字として使われることにもなった

卍・漢字

台湾でも「卍」は仏教のシンボル。
生き物を殺さない仏教の教えに合った料理(精進料理・ヴェジタリアンフード)を出す店にこれが使われている。

 

これに対してナチスのカギ十字は人種差別の象徴で、卍とはまったくの別もの。
卍とは向きが違うし角度もついている。

でも英語にすると、卍もカギ十字も「ソワスティカ」になるから区別がむずかしい。

 

第二次世界大戦中、600万人ともいわれるユダヤ人を虐殺したナチス=ドイツがカギ十字をシンボルにしていた。
それでいまでも欧米社会では、これが人種差別の象徴になっている。

 

ナチスによる人類史上最悪の虐殺、ホロコーストの様子

毒ガスで殺害されたユダヤ人

 

連合軍が到着したときの収容所の様子

上の画像は「NHK 映像の世紀 第5集」から。

 

ナチスがユダヤ人を絶滅しようとした理由は何か?
こんな悲劇をくり返さないためなら、殺された人数を記憶するだけではなくて、動機や理由も知っておいたほうがいい。

ホロコーストの責任者のひとり「アイヒマン」はこう考えていた。

ユダヤ人は、ドイツ国民の永遠の敵であり、殲滅(せんめつ)し尽くさねばならない。
われわれに手のとどくかぎりのユダヤ人はすべて、現在のこの戦争中に、一人の例外もなしに抹殺されねばならない。
今、われわれが、ユダヤ民族の生物学的基礎を破壊するのに成功しなければ、いつかユダヤ人がわがドイツ国民を抹殺するであろう

「アウシュヴィッツ収容所 (講談社学術文庫)」

ヒトラーもこれと同じ思想を持っていた。

まえに欅坂46のメンバーがナチスの軍服に見える衣装を着ていたことで、世界的な非難を浴びたこともある。

日本人が触れたタブー②「欅坂46とナチス」事件→全面謝罪へ

 

さてここからは、ドイツ人とインドネシア人と一緒に静岡市にある清見寺に行ったときの話。
ちなみに2人とも日本の大学で学ぶ男子留学生だ。

そのお寺でこんな絵を見つけた。

 

これを見たドイツ人の反応はこの記事をどうぞ。

日本在住ドイツ人の話:お寺の「卍」とナチスの「かぎ十字」

今回は、このときにインドネシア人から聞いた話を書いていこうと思う。

 

そのインドネシア人は日本へ来たときには、すでに卍とカギ十字を知っていた。
だからこれを見ても何とも思わなかったけど、読み方は知らなかった。
「まんじ」と言うことを教えると、「そうなんですか。勉強になりました」と笑顔を見せる。
関係ないけど、インドネシア人は笑顔と遅刻が多い。

彼がインドネシアにいたとき、まずナチスのカギ十字について知って、そのあとに卍を見た。
カギ十字については先ほどの説明と同じことを学ぶ。
その後、あるときヒンドゥー教徒の友だちの家に行ったら、門に「卍」が描かれている。
*このとき彼も「ソワスティカ」と言っていた。

それを見て、「カギ十字だ!この家族はナチスを信奉しているのか?」と壮大な思い違いをしてしまったという。

友だちから、「これはヒンドゥー教のシンボルで「グッドラック」という意味なんだ。カギ十字とはまったく違う」という説明を聞いてようやく納得。

卍は日本・中国・韓国・ベトナムの東アジアでは仏教のシンボルで、インドではヒンドゥー教のシンボルになっている。
幸運の印として、日本のお守りのように使われているのだ。

建物や機械の竣工式、新車の安全祈願などには、日本と同様神職(インドではバラモン祭司)が祭事を行うが、その時に吉祥の卍が水で溶いたサフラン色の顔料で描かれる

卍・インド

 

そう言われてよく見ると、たしかに卍とカギ十字では形や向きが違う。
それよりもこの2つでは「幸運」と「ホロコースト」と、意味がまさに正反対と知っておどろいたという。
日本で見る卍はヒンドゥー教徒の友だちから聞いたことと同じ意味だから、もうこれを見ても特に何も思わない。

 

スリランカかインドで見た看板
「神の加護をうけて店が繁盛しますように」という願いがあるのだろう。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。