「約束は命を懸けて守るべき」と迫る日本に、韓国側の反応は?

 

韓国政府にはいま願いがある。
何とかして年内に日中首脳をソウルに招いて、首脳会談をおこないたい。
これが開催できないとなると国家のプライドが傷ついてしまうのだが、周辺国からは良い返事をもらえないでいる。

ムン政権の首脳会談にかける思いは熱くて強く、日本経済新聞が年内開催に否定的な記事を伝えると、韓国はすぐにこれを打ち消す。

ソウル聯合ニュースの記事(2020/12/03)

日本の菅義偉首相の不参加で首脳会談が開催されないとの見通しが出るたびに開催実現に向け努力するとの意思を示してきた。

韓国大統領府 韓中日首脳会談開催見送りの報道否定

 

日本の立場は明確だ。

「戦後最悪」といわれるほど両国関係が悪化した理由は、元徴用工問題で韓国側が請求権協定をひっくり返したことにある。
原因を作った側は解決の義務を負う。
だから日本はムン政権に対してこの問題に対する解決案を示すよう求め、それを韓国訪問の条件とした。

 

首脳会談の実現のほかに、来年の東京五輪を北朝鮮との関係改善の機会として利用したい韓国側は、いま日本との関係改善を本当に願っている。

「(日本には)二度と負けない」ときょねん反日強硬の姿勢を見せていたムン・ジェイン大統領はこのところその態度を一変させ、11月14日に行われた「ASEAN+韓中日」首脳会議では「尊敬する議長殿、各国首脳の皆さん。特に日本の菅首相、お会いできてうれしいです」と、日本の首相を名指ししてあいさつするという異例な行動をおこなって韓国メディアを驚かせた。

でも菅首相はつれない。または釣れない。
このときのあいさつで菅首相が韓国に言及しなかったのは、「言わないことで伝える」という日本人の意思表示だろう。

いま日本政府は韓国に対してどう考えていて、何を望んでいるのか?

それは先月に訪日した韓国要人に対するメッセージを見れば一目瞭然だ。

朝鮮日報の記事(2020/11/16)

「特に日本の菅首相、お会いできてうれしい」 日本の首相に連日手を振る文大統領

キム・ジンピョ韓日議員連盟会長と会った菅首相はこう言う。

「文大統領との電話会談でも述べたが、私は原理原則を重視する人」

「徴用工問題について国家間で合意した約束を守らなければならないので、これについて韓国が解決策を示すよう望む」

元徴用工問題は1965年の韓日協定によって解決済みで、いまになってこれをひっくり返すのは国際法違反だから、韓国が解決策を示すべき。これが「原理原則を重視する」の中身。

またキム会長は自民党の二階幹事長から「国家間の約束は命を懸けて守るべきだ」と言われ、額賀日韓議員連盟会長からも「国と国が結んだ条約を破るべきではない」と釘を刺された。

朝鮮日報の記事によると、この要人の訪日で日本が得たものはナッシング。

日本外務省幹部は来日した韓国議員側に「(韓国側から解決策が)一切出ていない。我々にとってはゼロ回答」と話したと伝えられた。

 

このあと別の要人がやって来たけど結果は同じで、日本政府高官に言わせれば「ストライクゾーンに当たった感じがない」らしい。

 

関係改善や菅首相の訪韓(=韓中日首脳会談の開催)はすべて、ムン大統領の決断しだいとなったわけだ。
と思いきや、韓国側の解釈がまるで違っていてビックリした。

「原理原則を重視する」、「国家間の約束は命を懸けて守るべきだ」、「国と国が結んだ条約を破るべきではない」と日本の要人3人から立て続けに言われたキム氏は、これをどう思ったかというと、何も届いていなかった。

中央日報の記事(2020.11.18)

「文在寅-菅義偉宣言で決断することができるなら決断するのが最善だが、国民の反日・反韓感情上、今できないなら東京五輪が終わるまで縫合しようと提案し、日本政治指導者から共感を得た」と話した。

<韓日議員連盟会長単独インタビュー>(2)…「強制徴用賠償問題、韓日首脳の選択と決断だけが残った」

 

「我々にとってはゼロ回答」というのが日本の反応で、「共感を得た」があちらの受け止め方のようだ。
もう価値観、発想、立場のすべてが違っているから、日韓が話し合っても「ストライクゾーンに当たった感じがない」で1ミリも前に進まない。

韓国にはわりと理解を示す二階氏が「国家間の約束は命を懸けて守るべきだ」とまで迫っても、「あとは両国首脳の選択と決断だけが残った」ととんちんかんで無責任なことを言う。
日本の意思はすでに示した。
次は韓国ムン大統領だ。

これじゃあ韓国政府が解決案を出すことはなく、首脳会談も無理だな。という不幸な予感はみごと的中してしまった。

時事通信の記事(2020年12月05日)

不信感を強める日本側は「まず韓国側が判決を修正するなど原状回復する必要がある」(政府関係者)との立場を譲らなかった。

日中韓首脳会議、年内見送り 「徴用工」溝埋まらず

 

日本がここまでして、日本企業の資産現金化も迫っているのに、韓国政府はまだ動こうとしない。
ムン大統領は「お会いできてうれしい」と連日手を振るけれど、日本との約束を守ろうとはしない。
そのまま韓日関係の“滅亡”を見ているつもりか。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。