【同性婚は祝福できない】カトリックはLGBTQをどう考える?

 

きょう3月17日、日本初となる同性婚訴訟の判決が札幌で下される。
ということで今回のテーマはそれに関することだ。

 

L(レズビアン):女性の同性愛者(心の性が女性で恋愛対象も女性)
G(ゲイ):男性の同性愛者(心の性が男性で恋愛対象も男性)
B(バイセクシュアル):両性愛者(恋愛対象が女性にも男性にも向いている)
T(トランスジェンダー):「身体の性」と「心の性」が一致しないため、身体の性に違和感を持つ人。

これらの頭文字をとって、性的少数者 (セクシャルマイノリティ) を表す言葉の一つに「LGBT」がある。
くわしいことは法務省HPの「LGBTについて考えよう」で確認されたし。

さらに最近ではこれに「Questioning」を加えたLGBTQという表現もある。
*クエスチョニングとは、自分の性別がはっきりとわからない人やあえて決めない人。

近年、世界中でこうしたLGBTQの人たちの権利が認められつつある。
でもローマ・カトリック教会はそういうトレンドとは関係なく、ローマ教皇庁(ヴァチカン)は同性婚を祝福することはできないという公式見解を発表。

イギリスBBCの記事(2021年3月16日)

教義および道徳の保持と促進を担う教理省は今回、神が「罪を祝福」することは「不可能」だと説明。
一方で、同性愛関係には「前向きな要素」があると述べた。

ローマ教皇庁、「同性婚は祝福できない」と公式見解

 

ドイツやアメリカのカトリック教区で近ごろ、LGBTQの信者を歓迎する動きのひとつで、同性愛カップルを祝福することがみられるようになった。

そんなことから、「教会に同性婚を祝福する力はあるのか」という質問をうけた教皇庁(の教理省)はきっぱり「NO」と言う。
カトリックの教義で認められている結婚は男女間のみ。
だから、同性カップルを祝福することはできないらしい。
この場合の「祝福」とは、同性の夫婦を認めるということ。

カトリック教会によるとこの公式見解は差別ではなくて、「典礼上の真実を確認するためのもの」だ。
でも、ある同性愛者のカトリック信者グループの会長は「驚くものではないが失望した」とガッカリ。

ではこのニュースに、極東の島国に住む無神論の人たちの感想は?

・この時勢で言い切れるのはなかなかの度胸
でも教義としてそうなんだろうからブレるわけにもいかんわな
・おいおい、差別反対
教皇前言撤回せよ
・別にカトリック教会で祝福されずとも構わんでしょーに
・変に妥協するより、スジ通した方がいいね
・同性婚を認めるまで根競べよ!

最後のやつはローマ教皇を選出する「コンクラーヴェ」のこと。
くわしいことはこの記事を。

【狼煙の歴史】最古の伝達手段・その速度・世界で最も有名な煙

でも、時代や社会の価値観や常識を急激に変えようとすると、失敗することが多いから「根競べ」の心がけは間違いじゃない。

 

カトリック教会はLGBTQや同性婚についてどうみているのか?
ローマ教皇は2013年に「同性愛者を私は裁くことができるだろうか」と発言した。
カトリック教会は神の意思だけを考えるということで、これはつまり、LGBTQの人たちの意見を“無視・排除する”と理解することもできるから、世界的な話題となった。
でもきょねんローマ教皇は同性愛者を「神の子であり、家族の一員になる権利がある」とし、見捨てられたり惨めな思いをさせることがあってはならないと言い、配慮も見せている。
ただローマ教皇庁はこの発言を、同性婚を支持するものではないと釘をさすのも忘れない。

こうみるとカトリック教会はLGBTQについてはあるていど認めるものの、同性婚については完全否定のようだ。
世間的・法的に同性婚が認められるのはかまわないいが、それは神の意思ではないからローマ・カトリックとしては断固NO。
最近、同性婚についての議論が進んでいる日本にとってもこれは他人事ではない。

 

では、なんでカトリック教会は同性愛を“嫌う”のか?

宗教や歴史にくわしい知人のアメリカ人は、「キリスト教の教えでは、同性愛は神の意思に背くから」と聖書にある「ソドムとゴモラ」の話をする。
ソドムとゴモラとは聖書に出てくる二大怪獣、ではなくてそういう都市のこと。
そこに住む人たちが欲望のおもむくまま、やりたい放題やっていて神の怒りを買ってしまう。そのなかでも同性愛が「重大な罪」とみなされた。
結果、ソドムとゴモラは神によって滅ぼされた。
神が「罪を祝福」することは「不可能」だ、というカトリック教会の見解はこのことを指すのだろう。

くわしいことはこの記事を。

キリスト教徒が同性愛を嫌う理由は「ソドムとゴモラ」でわかる

 

神の怒りによって焼かれるソドムとゴモラ

 

ローマ・カトリック教会にとっての聖書という”絶対的な基準”は、日本社会では”憲法”になる。
その憲法24条には結婚について「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立」するとあるのだが、「婚姻の自由を定めた条文で、同性婚を禁じてはいない」という原告の主張が認められるか、それとも、憲法24条のいう「両性」や「夫婦」は男女を表すとし、結婚は男女間でのみ認められるという国の主張が通るか。
きょう憲法という神は一体どんな判断を下すのだろう。

 

 

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1 個のコメント

  • > 宗教や歴史にくわしい知人のアメリカ人は、「キリスト教の教えでは、同性愛は神の意思に背くから」と聖書にある「ソドムとゴモラ」の話をする。

    確かに、旧約聖書を開いてみると同性愛に関しては「ソドムとゴモラ」の話が最も有名ではありますが。
    でもね、別に神様から罰せられない登場人物であっても、同性愛、獣姦愛、父子愛など旧約聖書の世界はめちゃくちゃですよ。それでも彼らは神の忠実な僕が大半です。むしろ「ソドムとゴモラ」の話の方が少数派です。
    この辺は、旧約聖書そのものを読むよりも、「阿刀田高:旧約聖書を知っていますか」を読む方が分かりやすいかもしれません。

    怪獣「ゴモラ」は、ウルトラマンに登場した耳の大きい怪獣だったと思いましたが、「ソドム」なんて怪獣いたっけ? なお「ゴモラ」という名前は、旧約聖書のエピソードから取ったという説と、ゴジラ、モスラ、ラドンの3大怪獣の頭文字を合せたもの(それくらい強い怪獣)であるという説の、2つがあるようですね。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。