きょう10月29日はインターネットの誕生日なのだよ。
ネット発祥の地はアメリカで、1969年のこの日、いまのインターネットの原型となるARPAnet(アーパネット)というコンピュータネットワークが完成し、人類で初めての通信が行われた。
ということで今回は、長距離通信の手段としては世界で最も古い形式のひとつ「狼煙(のろし)」の歴史について書いていこうか。
馬やハトなどの生き物を使って、情報を遠距離に早く伝えることは世界中で行われていて、いまでもアニメや漫画でそんな場面が出てくる。
これよりもっと効率の良い情報伝達手段が狼煙。
人類と火の付き合いはめちゃくちゃ古く、どこの国の人間も火の起こし方やそれによって煙が発生することは知っていたから、煙を上げて情報を伝える方法は世界各地で自然発生的に生まれた。
狼煙を上げるアメリカ先住民
英語でいう「Smoke signal」(狼煙)は燃やす物によって色を変えられるから、その組み合わせで複雑な情報を伝えることが可能。
ここが伝書バトや早馬とはちがう。
紀元前150年のギリシャの歴史家Polybius(ポリビアス?)は、煙信号によって複雑なギリシャ語のアルファベットを数字に変えるシステムを考案した。
面白いことに第一次世界大戦のときには、日本がひらがなの伝達でこの仕組みを採用したという。
Polybius, a Greek historian, devised a more complex system of alphabetical smoke signals around 150 BCE, which converted Greek alphabetic characters into numeric characters. (中略)This cryptographic concept has been used with Japanese Hiragana and the Germans in the later years of the First World War.
日本では『日本書紀』や『肥前国風土記』に「烽(トブヒ)」として狼煙の記述があるから、少なくとも8世紀にはこれを使って情報を遠隔地に伝えていたはずだ。
記録に残っていなくても、日本人はもっと古くから狼煙を使っていただろう。
狼のフンを燃やしてできた煙は風が吹いてもまっすぐに立ちのぼるということから、古代中国で「狼煙」の字をあてたといわれる。
日本書紀にある狼煙はヨモギやワラなどの植物を燃やしたと考えられているから、この点は中国大陸とはちがう。
生き物を殺すことに抵抗があったのでは。
では、その速さはいかほどなのか?
2006年に放送された日本のテレビ番組でモンゴル帝国で使われていた狼煙を再現したところ、その伝達速度は時速159kmだった。
約800年前もこれとまったく同じだったかは分からないけど、およそこの速度で情報が伝えられたと考えていい。
モンゴルの遊牧民の視力は2.5を超えているというから、狼煙がどれだけスグレモノだったか現代の日本人が想像するのはむずかしそうだ。
では最後に、現代の世界で最も知られた狼煙を紹介しよう。
それはやっぱり、カトリック教会の頂点に立つローマ教皇を選出する「コンクラーヴェ」で使われる煙でしょ。
*Conclave(コンクラーヴェ)とはラテン語で「鍵がかかった」の意。
教皇を枢機卿の投票によって選出するこのコンクラーヴェ(教皇選挙)では、システィーナ礼拝堂の煙突から「黒い煙」(下の写真)が上がったら「選ばれなかった」という意味をあらわす。
もし「白い煙」なら、ローマ教皇が選ばれたことを意味する。
下の写真は2005年のコンクラーヴェのもの。
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この、「コンクラーヴェ」という単語、及びカタカナで「ウ」に濁点をつける場合があることを最初に聞いたのは、小学生の頃でした。学校の先生がホラ吹きで、「ローマ教皇の選出は、枢機卿らの互選で行われるのだが、必要得票数2/3を誰かが確保するまで、何度でも無記名で投票をやり直す。とても根気のいる制度だ。だから「根比べ」という日本語が戦国時代にイタリアへ伝わって、今でもそう呼んでいるのだ。」と、まことしやかなウソをつかれて、素直だった私はすっかり信じてしまいました。
それが嘘だと分かったのは、映画「Godfather Part 3」を見る頃になってからのことです。あの映画の中で、コンクラーヴェの制度によって新教皇が選出されるシーンが出てきましたね。
「根比べ」の話はネタで聞いたことがありましたが、授業で話す先生がいたのですね。
驚きです。