はじめの一言
「この地球の表面に棲息する文明人で、日本人ほど、自然のあらゆる形況を愛する国民はいない。嵐、凪、霧、雨、雪、花、季節による色彩のうつり変り、穏やかな河、とどろく滝、飛ぶ鳥、跳ねる魚、そそり立つ峰、深い渓谷
(モース 明治時代)」
「日本絶賛語録 小学館」
今回の内容
・「頭にタオル」というジャパン・スタイルの理由
・代わりに、中国人。
・「頭にタオル」というジャパン・スタイルの理由
日本では戦国時代、優れた職人は「天下一」と呼ばれて尊敬されていた。
そのことに驚いたのが、日本に連れて来られた「姜沆(きょうこう)」という朝鮮人。
あらゆる事がらや技術について、必ずある人を表立てて天下一とします
「看羊録―朝鮮儒者の日本抑留記 (東洋文庫)」
また、幕末・明治時代に日本に来た多くのヨーロッパ人も、日本の職人と職人技に驚いていた。
こうした背景があるせいか、日本では職人(肉体労働者)が尊重され、職業に対する上下意識が小さい。
昭和初期にキャサリンというイギリス人女性が日本を訪れたとき、日本人についてこんな感想をもっている。
労働者とそれ以外の日本人との間に食べ方の違いはありません。誰でも同じように食べます。
(東京に暮らす キャサリン・サンソン 岩波文庫)
また、韓国・欧米・日本に住んでいたことがある韓国人は、著書にこういう。
日本人の中には、「日本は差別的な社会だ」という人がかなりいるのだが、私にはそのことが不思議でしようがない。
もちろん、日本社会に差別がまったくないなどというわけではない。
だが、私が育った韓国や、留学経験のある欧米の社会からみれば、それは、なきに等しいほど小さなものである。(ワサビの日本人と唐辛子の韓国人 呉善花)
ボクが話を聞いたカンボジア人は、「日本人と韓国人の見分け方」を次のように指摘していた。
「頭にタオルを巻いているのが日本人で、野球帽をかぶっているのが韓国人」
言われて納得。
確かにこれは正しい。
韓国人は、頭にタオルを巻くのはサウナぐらいなものだ。
日本人の間では、「職人=かっこいい」という意識がある。
その具体的なあらわれとして、「頭にタオル巻き」という日本人のスタイルが生まれるのだと思う。
流れる汗をとめるという、実用的な目的だけではないだろう。
海外で、頭にタオルを巻いて外を歩くのは日本人ぐらいだ。
・代わりに、中国人。
とはいえ、気になることはある。
前の記事でも紹介してきたけど、日本の職人技は世界で高く評価されている。
職人たちが伝えてきた日本の伝統文化は、日本人の誇りでもある。
今年の4月からは、成田空港で、「日本伝統文化の体験コーナー」ができた。
日本の伝統文化を気軽に体験でき、記念撮影などをお楽しみいただく人気のコーナーを開催いたします。
6月は、お土産として大変好評をいただいている浮世絵版画刷り体験をはじめ、ちぎり絵体験や着物・甲冑の着装体験などをお楽しみいただきます。(成田空港WEB)
日本人が日本の伝統文化を誇りに思い、外国人にも積極的に良さを伝えている。
でもそのわりには、日本人が日本の職人や伝統文化を支えていないらしい。
中世のヨーロッパでは、優れた芸術家を育てるために彼らを支える「パトロン」という存在がいた。
芸術家が腕を磨く間に、彼らに生活費などを出してくれるような人たち。
一般には後援者,保護者を意味するが,特に芸術家を経済的に援助する場合にこの名称が用いられる。
芸術が職業として成り立つ以前は,パトロンとしての王侯貴族や有力者の庇護が必要であった。イタリア・ルネサンスにメディチ家が演じた役割は特に有名。(大辞泉)
「メディチ家」については、高校の世界史で必ず。
常識として覚えてもいい。
メディチ家
その財力でボッティチェリ、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ヴァザーリ、ブロンツィーノ、アッローリなどの多数の芸術家をパトロンとして支援し、ルネサンスの文化を育てる上で大きな役割を果たしたことでも知られている。
(ウィキペディア)
日本では、室町時代の将軍「足利義満」が、能を大成した世阿弥のパトロンになっている。
また中国の場合、 唐の玄宗(げんそう)という皇帝が俳優や歌手を育てる施設を宮殿の中につくっている。
「国立(官営)芸人養成所(?)」みたいな場所。
その養成所は、「梨園(りえん)」と呼ばれていた。
現在の日本で歌舞伎の言葉になっている「梨園」という言葉は、唐の時代の長安で生まれている。
梨園
語の由来は、唐の玄宗の初年(712年)に、唐都長安西北郊の西内苑内で、芸人達を梨が植えられている梨園と称される庭園に集め、音楽教習府と呼ばれる施設で芸を磨いたことに始まる。
(ウィキペディア)
質の高い作品を生み出すためには、芸術家に経済的な援助をするパトロンの存在や、その作品に応じた値段で買ったりする人がどうしても必要になる。
今の日本では、職人や芸術家の生活は厳しいらしい。
パトロンのような金持ちから保護を受けられるような職人は、ほとんどいないだろうし、「梨園」のような施設で国が積極的に育ててくれることもないだろう。
とすれば、一般の日本人がそうした職人の作品を買って彼らの生活を支える必要がある。
けれど、「自分は、安いものでじゅうぶんです」と財布のひもをゆるめようとしない。
今の日本では、「なるべく安いものを」という風潮が強いように思う。
そんな日本人に代わって、日本の職人の作品を積極的に買って彼らを支えているのが中国人だという。
次回に続きます。
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