ナチスの行為は集団虐殺でも、ガザのイスラエルは“違う”理由

 

人類史上、最悪の犯罪行為がナチス=ドイツによるホロコースト。
ナチスはユダヤ人を「劣等民族」と見なし、人種差別思想にもとづいて彼らをこの世から絶滅すべきだと考えた。
そのために、ナチスは強制収容所を建設し、毒ガスや強制労働などで600万人を虐殺する。

1945年の1月27日、アウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所が解放されたから、きのうは国連が定める「ホロコースト犠牲者を想起する国際デー」だった。
収容所の跡地では記念行事が行われ、元収容者やその家族が犠牲者を悼んだ。

 

アウシュビッツ収容所にある「死の壁」。
多くのユダヤ人がこの壁の前で銃殺された。

 

こんなニュースがあると、日本のネットではよくこんなツッコミが入る。

「イスラエル軍がガザでやっていることが集団虐殺では?」
「かつての被害者は今では加害者になっている」

きょねんイスラエル軍がガザで戦闘を開始して、死者の数はすでに2万人を超えている。その多くが子どもや女性だ。
南アフリカがこれを問題視して、イスラエルをジェノサイド(大量虐殺)の罪でハーグの国際司法裁判所に提訴した。

イスラエル軍がガザ地区でした行為はジェノサイドになるのか?
イスラエル側は、ジェノサイドになるかどうかの重要な要素は、ある民族を全体的あるいは部分的に滅ぼすという「意図」の有無にあると主張し、イスラエルにそんな悪意はまったくないと虐殺を否定している。
ガザで大量のパレスチナ人が死んでいるのは「ハマスの戦略の結果」と非難し、イスラエル軍は市民に非難を呼びかけるなど、被害を最小限にする配慮をしていると強調した。

これから南アは、イスラエルにジェノサイドの意図があったことを法的に立証しないといけない。

 

「ユダヤ人問題の最終的解決」に関する資料

 

一方、ナチスについては、それがあった。
ユダヤ人を全滅させるという「意図」が証明されたから、ナチスの行為はジェノサイドと見なされた。

第二次世界大戦の最中、ナチスはヨーロッパにいるユダヤ人をどうするか考え、組織的に大量虐殺し、絶滅させることで「解決」とする計画が立案された。
この「ユダヤ人問題の最終的解決」にもとづいて、絶滅収容所が建設され、ユダヤ人のホロコーストが本格的にはじまった。
ヒトラーの側近で、宣伝大臣としてナチスの勢力拡大に貢献したゲッベルスはこう語ったという。

「ユダヤ人の破滅は結果として必然だ。我々はそれに対して感情的になってはいけない。ユダヤ人に対して思いやりを持ってはいけない。」

こんな冷徹な意図のもと、ユダヤ人たちは収容所で、「害虫」のように次々と抹殺されていく。
戦後、連合国によって「ユダヤ人問題の最終的解決」が発見され、ナチスの戦争犯罪を裁くニュルンベルク裁判で重要な証拠として認められた。

 

しかし、南アフリカが「パレスチナ人問題の最終的解決」みたいな集団虐殺の意図(証拠)を見つけ、イスラエルが「ジェノサイド条約」に違反していることを証明するのはかなり難しい。
ネット裁判官なら、自分が集団虐殺と感じれば「はい、それはジェノサイド」と簡単に書き込むことができる。
でも、現実はそうではなく、現状ではイスラエルが虐殺をしたと認められていない。
でも、この提訴がイスラエル軍に対して、攻撃の抑止力になることは期待できる。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。