ことしの8月9日、1945年に長崎へ原子爆弾が落とされたこの日、駐日ドイツ大使館がこんなツイートをしてネットを騒がせる。
「広島と長崎は、核戦争の狂気を物語る象徴的存在です。発端は、ドイツと日本のナショナリズムと軍国主義によって始まった戦争でした。」
日本軍の真珠湾攻撃によって始まり、米軍が原子爆弾を投下したことで太平洋戦争は終わったから、この2つはつながってはいるけれど、行為の主体はそれぞれ別だからそこはしっかり分けるべきだ。
「アメリカ」というキーワードを抜かすと、まるで原爆投下が日本の責任のように見えてしまうし、実際ネットではそう理解する人もいた。
それとこのツイートを見て、「ドイツ大使館はナチスと日本を同じと考えている!」と怒る人も多く物議をかもす。
ツイートのコメ欄は地獄のように燃え上がっていた。
では、いまのドイツ人はナチスと戦前の日本を「同じ」と考えているのか?
日本が好きで、静岡に住んでいたことのあるドイツ人(30代・男性)に、そのことを聞いてみた。
*以下、彼の認識に基づく個人的な見解。
ドイツ大使館のツイートの内容は間違ってないし、ドイツ人の常識の範囲内にあるから特に違和感はない。
原爆投下については、まずアメリカにその責任があることは言うまでない。
とはいえ、日本がなかなか降伏をしなかったことが、アメリカにその決断をさせたという面もある。
もし日本があと一か月前に降伏していたら、この悲劇は避けられたのではないか?
軍国主義者だった政府によってポーランド侵攻と真珠湾攻撃が行われたから、「ドイツと日本のナショナリズムと軍国主義によって始まった戦争でした」という指摘はまったくその通り。
ただアメリカはあのとき戦争に参加する理由をほしがっていたから、真珠湾攻撃をしかけるよう日本を誘導したとは思う。
ところで、なんで日本はドイツと組んだのか?
日独伊三国同盟を結んで、日本にどんなメリットがあったのかよく分からない。
それとあれは当時の先進国での戦争だったから、「世界大戦」という表現には違和感がある。
日本がナチス=ナチスと同じかどうかと聞かれたら、答えはイエスとノー。
まず、どっちも武力で外国に攻め込んで、大きな被害を出した点は同じ。
でも、ナチスは人種差別思想に基づいて強制収容所を建設して、毒ガスなどで600万人のユダヤ人を殺害するホロコーストを行なったけど、日本はそんなことをしなかったから、そこは違う。
アドルフ・オットー・アイヒマン(1906年 – 1962年)
では、なんでナチスはユダヤ人をこの世から絶滅しようと考えたのか?
ホロコーストの責任者であるアイヒマンはかつてこう語った。
ユダヤ人は、ドイツ国民の永遠の敵であり、殲滅(せんめつ)し尽くさねばならない。
われわれに手のとどくかぎりのユダヤ人はすべて、現在のこの戦争中に、一人の例外もなしに抹殺されねばならない。
今、われわれが、ユダヤ民族の生物学的基礎を破壊するのに成功しなければ、いつかユダヤ人がわがドイツ国民を抹殺するであろう
「アウシュヴィッツ収容所 (講談社学術文庫)」
こういう最悪の発想の延長に、アウシュヴィッツ収容所がある。
1961年のきょう12月15日、イスラエルの裁判所でアイヒマンに対して死刑の判決が下された。
戦前・戦時中の日本が人種差別意識から特定の民族を「日本国民の永遠の敵」と定めて、意図的・計画的に殲滅しようとしたことはない。
だからボクも知人と同じ意見で、ドイツと日本が軍国主義によって戦争を始めたという点は、これだけが原因ではないとしても基本的には正しい。
でも、日本にはアイヒマンのような悪魔はいなかった。
人種差別思想に基づいて国家が大虐殺を行なったという点は違うから、日本は本質的にナチスではない。
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