タイの南部は危険どす。イスラム教徒が分離独立を求める理由。

 

前回、「タイは若いうちに、行くべし・行くべし・行くべし」ということを書いた。

「鉄は熱いうちに打て」という言葉もあるのだから。

鉄(てつ)は熱いうちに打て

《Strike while the iron is hot.》

鉄は、熱して軟らかいうちに鍛えよ。精神が柔軟で、吸収する力のある若いうちに鍛えるべきである、というたとえ。

デジタル大辞泉の解説

若い頭は柔軟だ。
まだ自分の考え方が固まっていないのだから、いろいろな価値観にふれて刺激を受けた方がいい。
それに最適な国が怠惰。いや、タイだ。

ボクの場合もタイ旅行は「体力勝負の旅」だったから、やっぱり「タイは若いうちに行け」は正しかった。

 

でも、タイの南部、とくに深南部(しんなんぶ)にだけは近づいちゃいけない。
じっちゃんとの約束だ。

そこには昼でも暗い森があり、一度そこに足を踏み入れると二度と外界には戻って来られない・・・とかいう、七つの大罪に出てくる「ディアンヌの森」のようなものはない。

でも、爆弾テロが起きてよく人が死ぬ。

ある意味、”人喰い森”のほうがまだマシ。
それなら、そこに近づかなかったら問題はない。
でもテロは違う。
日々の生活の中で、いつどこで起こるか予想ができない。

タイの深南部は、タイであってタイではない。

 

これぐらいなら、大したことはない。

 

前回と重なってしまって申し訳ないのだけど、苦情は受け付けない。
タイってこんな国どすえ。

1 面積:51万4,000平方キロメートル(日本の約1.4倍)

2 人口:6,572万人(2015年)

3 首都:バンコク

4 民族:大多数がタイ族。その他 華人,マレー族等

5 言語:タイ語

6 宗教:仏教 94%,イスラム教 5%

この数字は、外務省ホームページのタイ王国(Kingdom of Thailand) 基礎データから。

 

タイの国民はほとんどが仏教徒だけど、カンボジアとは違って、仏教を国の宗教(国教)にはしていない。
上のデータだと、タイには約330万人のイスラーム教徒がいることになる。

バンコクにもイスラーム教徒がいるのだけど、知り合いのタイ人に話を聞くと、彼らとは接点がない。
バンコクの小中高校に通っていたそのタイ人は、イスラーム教徒のクラスメートは1人もいなかったと言う。
大学のキャンパスで見たことがある、というぐらい。

 

タイのイスラーム教徒の多くは、タイ南部に住んでいるといわれている。
彼らの多くは、タイ族ではなくてマレー族だ。

 

にゃ、にゃんですか?

 

これは外務省ホームページにある「危険情報」の地図。

 

 

マレーシアとの国境に近いタイ南部が、オレンジ色や黄色になっている。
これは治安の悪さをあらわしている。
オレンジ色は危険情報の「レベル3(その国・地域への渡航は、どのような目的であれ止めてください)」で、上から2番目に危険なところだ。

最恐に危ないのはレベル4で、これにはシリア・アフガニスタン・ソマリアといった”修羅の国”がある。
レベル3でも、じゅうぶん危ない。

海外旅行で行くところではない。
「タイの深南部は、タイであってタイではない」というのは、このこと。

 

タイ深南部(主にパッターニー県・ヤラー県・ナラーティワート県の三県)がこのオレンジ色にふくまれている。
まさにデンジャーゾーン、キープアウト。

この深南部にあるヤラー県で、つい先日、またもテロ事件が起きた。
NHKのニュース(2018年1月22日)から。

タイ南部で、22日朝、買い物客でにぎわう市場で爆発があり、3人が死亡、22人がけがをし、軍は、タイ南部で分離独立を目指すイスラム系の武装勢力によるテロ事件と見て捜査を進めています。

「タイ南部で爆弾テロ 25人死傷 イスラム武装勢力か」

タイ南部では、イスラーム系の武装勢力がタイからの分離独立を求めている。
これまでに爆弾テロなどに巻き込まれて、7000人ほどが犠牲になった。

7000人ですよ、7000人。
タイで、こんなにもテロ事件が起きていたことは知ってましたか?

しかもこの地域では、2017年の10月から毎月平均8件のテロが起きているという。

「タイは若いうちに行け」というのは正しいけど、深南部だけには行ってはいけない。

 

意味わからん。
バンコクのショッピングモールで。

 

このニュースには、ネットでこんなコメントがあった。

・南部なら仕方がない
・タイもか
・タイにもイスラムが入り込んでたのか

「タイにイスラムが入り込んだ」というより、歴史を見ると、「タイがイスラームの地を組み込んだ」というほうが正確だ。

 

「なんでタイ南部のイスラーム教徒(とくに過激派)は、タイから分離独立をしたいのか?」

それを考えた場合、キーワードとなるのは「パタニ王国」という国だ。
この国名は、タイ深南部のパッターニー県として今でも残っている。

パタニ王国

14世紀後半から1785年までマレー半島中南部の東岸,現在のタイのパタニPatani(Pattani)を中心として存在した王国。

「世界大百科事典 第2版の解説」

*パタニ王国がいつまで存続していたのかは、見方によって違う。
ウィキペディアでは、1902年になっている。

パタニ王国は、マレー半島でもっとも古いイスラーム国の1つで長い歴史と伝統がある。

 

1902年に、マレーシアを植民地支配していたイギリスとタイとの間で、「国境、どこにする?」という話し合いがもたれた。
そのときにパタニ王国は廃止されて、今のパッターニー県のところが完全にタイの一部になった。

でも、住民の頭から、パタニ王国の歴史や伝統は消えない。
100年以上たった今でも独立を求める声があり、先ほどのニュースのように、爆弾テロを起こす人間もいるのだ。

ということで、タイは旅行先としてすごくいい国だけど、深南部だけには行っちゃいけない。
じっちゃんとの約束だ。

 

タイで日本食の人気は爆発している。

 

日本と世界の歴史を比べると、日本には、タイ深南部のように「分離独立」というものがない。
ヨーロッパを見ると、オランダはスペインから分離独立したし、ベルギーもオランダから分離独立して成立した。

でも、日本ではこんなことがない。
あえていえば沖縄か?

沖縄が琉球王国だったときは、日本とは別の国だった。

でも、1609年に薩摩藩が侵攻する。
琉球王国は降伏して、薩摩藩の支配下におかれることになった。

今でも「沖縄は日本から独立するべきだ」という声を、新聞やネットで見ることはある。
でも沖縄の人たちは、日本からの分離・独立を求める運動を本格的にしてはいない。
爆弾テロなんてあり得ない。

日本が海に囲まれていて、いろんな民族や宗教の侵入がなくてよかったと思う。

 

ユーチューブにタイ深南部の動画があったから、興味がある人はどうぞ。

Asia Peacebuilding Intiatives APBI から。

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。