親日国モンゴルの基本情報/「蒙古」は差別語、気をつけよう

 

チンギス・ハーンの顔に男性器を描いたとんでもないマンガがあって、元横綱の朝青龍さんが英雄を“侮辱”されたと激怒した。
くわしいことは前回の記事を。

朝青龍が「謝れ!」と激怒。モンゴル人はチンギス・ハンをどうみる?

 

朝青龍さんはこんなツイートをし、後で削除した。

 

なー言いとけどなー
先祖バカにするお前ら
品格がない日本人
許せない謝れ謝れ謝れどこのゴミの会社

 

モンゴル大使館も公式に抗議したし、「ヤフコメ」の上位3つはこんなものだから、日本人から見ても不適切だった。

・これはダメなやつ。外国の偉人を茶化しちゃダメ。
・見たけど、これはダメ。ひどい。
・ギャグとはいえ、程度もあるからね。これは確かにやりすぎかも…

出版社は公式サイトでこう謝罪した。

モンゴルの英雄であるチンギス・ハーンに関する不適切な表現があったことにより、モンゴル国国民の皆様をはじめチンギス・ハーンを敬愛する全ての方々にご不快の念を抱かせましたことを、深くお詫び申しあげます。

今後はかかる事態を起こさないよう、モンゴルの歴史・文化に関する知見を深め、一層の配慮をして参る所存です。

 

後から書くけど、モンゴルはとても親日的な国だ。
そんな国のためにも、今回は「モンゴルの歴史・文化に関する知見」を深めていこうと思う。

簡単にいったら、「モンゴルはOKだけど、『蒙古』は差別的だからダメですよ」ということ。
「蒙古」はモンゴルの人たちにとって、とても失礼な言葉になる。

 

でもその前に、モンゴルという国について簡単に知っておこう。

面積:156万4,100平方キロメートル(日本の約4倍)

人口:311万9,935人(2016年)

首都:ウランバートル(人口139万6,288人)
*ウランバートルはモンゴル語で「赤い英雄」という意味。

民族:モンゴル人(全体の95%)及びカザフ人等

言語:モンゴル語(国家公用語),カザフ語

宗教:チベット仏教等(社会主義時代は衰退していたが民主化(1990年)以降に復活。1992年2月の新憲法は信教の自由を保障。)

上の数字は外務省ホームページのモンゴル国(Mongolia)基礎データから。

面積は日本の約4倍で、人口は約42分の1。
好きなだけ地平線が見られそう。

モンゴルは17世紀から清朝の支配下に入っていたけれど、1911年の辛亥革命で清朝が滅亡したときに独立宣言をおこなった。

 

外務省ホームページに、モンゴルの親日度をあらわすグラフがある。

モンゴル~良き隣人としての絆から。

2016年に発足した今の政権も日本をとても重視していて、「首相及び外相が二国間の文脈における初の外遊先として日本を選択した」という。

 

そんなモンゴルの人たちが嫌う言葉がある。

それが「蒙古」。

日本人が「蒙古」を使うことを、モンゴル人は前から嫌がっていた。
それに反対する活動もおこなわれている。

たとえば、これは2007年のハワリンバヤルのパンフレット。
そこにはこんな意見広告が掲載されている。

 

ハワリンバヤルは日本最大のモンゴルフェス(モンゴル祭り)。
旭鷲山、朝青龍、白鵬、日馬富士といったモンゴル出身の力士も来たらしい。

2018年は5月の4日と5日におこなわれる。
くわしいことはこちらをどうぞ。

モンゴル祭り「ハワリンバヤル2018」@練馬区光が丘公園

 

では、なんでモンゴルの人たちは「蒙古」を嫌うのか?

それは「蒙古」という漢字にはモンゴルに対する蔑視があって、差別的な言葉だから。

「蒙」という漢字は「道理をわきまえず、愚かなこと。無知なこと(デジタル大辞泉の解説)」という意味。
だから「啓蒙」なんて言葉もある。
「無知で愚かな人たちに、正しい知識をあたえて教え導く」ということを「啓蒙:蒙を啓(ひらく)」という。

それに「古」が加わるのだから、「蒙古」はモンゴルをバカにした言葉であることはわかるだろう。

司馬遼太郎氏も「街道をゆく」でこう書いていた。

「蒙古」という漢民族がことさらモンゴルの音にあてた漢字には、馬鹿、無智と いう語感が重なっている

 

ウィキペディアにもこう書いてある。

蒙古には「おろかで古い」という悪い意味合いがある漢民族による蔑称であるとして、日本ではモンゴル人と日本人の合同署名による広告活動で、使用をやめるように運動が起きている 。しかしながら元寇を指す「蒙古襲来」や蒙古斑など、定着している表現もある。

 

「モンゴルを蒙古と呼ばないで」という活動のおかげもあって、昔に比べれば、「蒙古」という言葉を見る機会は少なくなった。
ちょっと前に、しゃぶしゃぶ屋で「蒙古炎鍋」というのを見たけど、2~3年後には「モンゴル火鍋」に変わっていると思う。

北斗の拳の「蒙古覇極道(もうこはきょくどう)」も「モンゴル覇極道」になるかも。

 

チンギス・ハンの事件もそうだけど、「相手が不快になることはやらない」というのはあたり前。

「蒙古」を「モンゴル」に言いかえても、特に困ることはない。
*「蒙古襲来」を「モンゴル襲来」にするのはいいけど、「蒙古斑」はちょっとむずかしいかも。

 

それに今は、何かするとネットですぐ拡散されて多くの人が知るところになる。

そうなると、「モンゴル国国民の皆様をはじめチンギス・ハーンを敬愛する全ての方々にご不快の念を抱かせましたことを、深くお詫び申しあげます」と公式謝罪をしなければいけなくなる。

”ネット前”の時代だったら、こんな大騒ぎになることはなかったはず。

相手を傷つけない配慮は、自分を守ることにもつながる。

 

 

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2 件のコメント

  • 日本も倭や奴で呼ばれていましたが日本と改名したのですから不思議な事ではないのでしょう。私もそうですが日本人は倭や日本鬼子と呼ばれてもふーんで済ませられる方が多く、もしかしたらオカシイのは日本の方かもしれませんね。ただ発見した場所が日本だからと日本脳炎や日本型インフルエンザと呼称されるのには苦笑を浮かべてしまいます。

  • もともと「蒙古」は中国の言葉で、日本人はそんな漢字を選んだ意図は分からないと思います。
    差別の意識はなくて、ただ慣習的にその言葉を使っているだけでしょう。
    「倭」と「日本鬼子」のことは、記事で書こうと思っていました。
    いいことか悪いことか分かりませんけど、ふつうの日本人はその漢字に込められた蔑視にはあまり気づかないでしょうね。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。