朝青龍が「謝れ!」と激怒。モンゴル人はチンギス・ハンをどうみる?

 

いま、元横綱の朝青龍さんがツイッターで激怒している。

日本のマンガで、モンゴルの英雄・チンギス・ハンをバカにしていたから。

ツイッター画像のキャプチャー

 

後で削除したけど、朝青龍さんはこうツイートしていた。

なー言いとけどなー
先祖バカにするお前ら
品格がない日本人
許せない謝れ謝れ謝れどこのゴミの会社

 

この怒りはごもっとも。
これはダメ、完全にアウト。

モンゴルの英雄チンギス・ハンにこれはない。

ところでチンギス・ハンとはどんな人物か?

高校の世界史ではこう習う。

チンギス・ハン

モンゴル帝国(大モンゴル国)の建国者(在位1206~27)。13世紀初めモンゴル全部族を統一し、1206年のクリルタイで推戴されてチンギス・ハンと称した。ホラズムを攻略して中央アジアに領域を広げたのち、西夏征服の途上で病没した。彼一代で世界帝国の礎を築いた。

「世界史用語集 (山川出版)」

 

チンギス・ハンが「全部族を統一して国をつくった」という点は、秦の始皇帝と同じ。
中国を初めて統一した始皇帝も中国の超重要人物で、国民から広く尊敬されている。

ちなみに「ハン」という言葉は、遊牧民族の国で使われていた君主の称号のこと。
中国人の日本語ガイドは「ハンとは『皇帝』という意味です」と説明していた。

 

モンゴル帝国の最大領域(ウィキペディアから)

 

日本の教科書に書いてある歴史上の人物は客観的で正確。

でも、それを知ったうえで、現地の人たちの”思い”も知った方がいい。

「モンゴル人はチンギス・ハンをどうみているのか?」

専門家の記述を見てみよう。

およそすべてのモンゴル人にとって、チンギス・ハーンはじつに身近な存在である。モンゴルと呼ばれる人びとはチンギス・ハーンを理念的・精神的な祖先とする。チンギス・ハーンを愛するモンゴル人の気持ちは、自分たちのリーダーに対する、世界のいかなる民族よりも深い、とモンゴル人たちは自認している。(中略)かならず自分もなんらかのかたちでチンギス・ハーンとつながっている、とみている。

「モンゴル草原の文人たち (楊海英:平凡社)」

 

モンゴル人はチンギス・ハンを「理念的・精神的な祖先」とみている。
それがわかれば、朝青龍さんの怒りも理解できる。

「先祖バカにするお前ら品格がない日本人許せない謝れ謝れ謝れ」

 

駐日モンゴル国大使館のウェブサイト
トップページにはチンギス・ハン

モンゴルの首都の空港は「Chinggis Khaan International Airport(チンギスハーン国際空港)」という。
2005年にモンゴル建国800年を記念して、この名称になった。

 

では、「モンゴル人にとってのチンギス・ハン」という人物は日本ではだれになるのか?

考えてみたけど、そんな人物が思い浮かばない。
外国にある日本大使館のウェブサイトのトップページにのせられる。
首都の国際空港の名称に使われる。

こんな日本人がいるだろうか?
これはわからない。

 

でも、あのマンガがしたことは、外国人のマンガ家が天皇陛下の顔にあれを書いたようなものだろう。
「ギャグマンガだから」は通じない。
むしろ子どもたちに、「この人物にはこんなことをしていい」と思わせてはいけないだろう。
完全にアウト。

ネットでも「これは怒られて当然」というコメントが多い。

・これは怒るわ
・ドルジかわいいなw
・ストレートな下ネタでワロタ
・まあこりゃ怒るわな
・とりあえず元寇謝れ
・いや漫画に激怒されても
・問題なのは全く面白くないところ
・これ例えばムハンマドとかに同じようなことしてたら、作者は確実にイスラム過激派に殺されてただろうな
・このインターネットの時代にリテラシー足らない漫画載せるなよ
・これは素直に謝っておこうかw
・コロコロか
昔から相変わらずだな

 

ネットですぐに世界中に拡散される時代に、あのマンガはない。

朝青龍さんはモンゴル語のツイートもしている。

これを見たモンゴルの人たちはどう思うか?
ちょっとした国際問題だ。

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。