モンゴル人が中国を“嫌う”理由に、日本人として違和感が。

 

このまえ日本に住むモンゴル人と話をしてたら、「モンゴルで中国は人気がないですね。というかキライな人が多いです。」と言う。
そのワケをたずねると、「モンゴルは300年間、中国に支配されてヒドイ扱いを受けていましたから。」ということらしい。

時代と場所は変わって1884年のきょう6月6日、フランス・ベトナムとの間でパトノートル条約が結ばれて、フランスによる植民地支配が本格的に始まった。
いまでもベトナム人はこの支配を屈辱と考えていて、現在ではなく当時のフランスを嫌っている。
ついでにいうと1523年の6月6日は、スウェーデンがデンマーク(カルマル同盟)から離れて独立国家となった日だ。
この原因に、独立を求めるスウェーデン人をデンマーク側が容赦なく処刑した「ストックホルムの血浴」があって、この暴挙がスウェーデン独立戦争を引き起こした。

異民族に支配されて「よっしゃー!」と思う国は皆無か特別な例外で、たいていの国の歴史教科書では不当な苦しみを受けた不幸な時代だったと記述されている。
そんなわけでかつて清に支配された経験から、いま中国を嫌うモンゴル人は多いという話には納得。
でも、違和感も感じる。

 

ウィキペデアさんが言うにはその時代、モンゴルはわりとイイ待遇を受けていたようだ。

275年間に及ぶ清朝のモンゴル統治では、モンゴル族を同盟者として扱い、その忠誠を確保するためにさまざまな保護がなされていた。

清朝統治時代

 

でも、異民族による支配はやっぱり屈辱的で、その思いは代々受け継がれていく。
そして後に清朝を崩壊させる辛亥革命が1911年に起こると、「時はきた」とばかりにモンゴルは、ジェブツンダンバ8世(ボグド・ハーン)をトップに清朝からの独立を宣言する。
そして清朝皇帝に代わって、ボグド・ハーンを君主とする ボグド・ハーン政権 がスタートしてモンゴルは新しい時代を迎える。
清朝から同盟者として扱われても、行儀よくまじめなんて出来やしなかったモンゴル族は、こうしてその支配からの卒業を果たす。
でも、中国がこの独立を認めるワケない。
清の次にできた中華民国は「これで勝ったと思うなよー!」とばかりに、1919年に侵攻してきてモンゴル人の国家は崩壊し、中国の統治下に入った。が、翌20年になんとか中国を追い出すことに成功する。

 

ボグド・ハーン政権のころのモンゴルの国章

 

1644年6月6日、清の八旗軍が「うぉりゃあああ!!! 」という怒とうの勢いで北京に入ってきた。
黄・白・赤など八つの色で分けた軍事集団の八旗について、詳しいことを知りたかったら 八旗 をクリックするといいですよ。
日本では“鎖国”が完成したころ、中国では清による全国支配が始まったことになる。

いまの日本人が「中国人」と聞いて、一般的にイメージするのは漢民族(漢人)だ。
その漢民族の国・明が17世紀に滅亡して、中国全土が満州族の清に支配されるようになる。
新しい統治者となった満州族は漢民族に、辮髪(べんぱつ)など自分たちの文化や習慣を強要した。

 

辮髪

 

清朝の力は圧倒的で絶対的だ。
「頭を残す者は髪を残さず。髪を残す者は頭を残さず」という言葉が示すように、清朝は辮髪を拒否する人間を処刑した一方、辮髪をして恭順の意を示した者には安全を約束した。
そうしなければ殺されるということで、漢民族は仕方なくこんな満州族の風習を受け入れる。
でも、漢民族はそうした力による支配に怒りを感じ続けていたから、1911年に辛亥革命を起こして清朝を打倒し、漢民族による中華民国を建国して、辮髪を廃止して清の支配からの卒業を明確にした。

ということで漢民族は250年以上も、異民族である清朝の支配を受けていたことになる。
だからモンゴル人が清朝による支配を理由に、満州族ではなくて、いまの漢民族主体の中国を嫌うということには、第三者の立場で外から眺める日本人のボクとしては、どこか違和感を感じてしまうのですよ。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。