ワクチン接種を嫌がる日本人に、宮代町と緒方洪庵がしたこと

 

新型コロナ対策の切り札といえるのがワクチン接種。
日本ではそれが今日からはじまるわけなんだが、それをこんな目で見つめる隣人がいた。

中央日報の社説(2021.02.17)

韓国人はこのようなワクチン接種先進国を羨む視線で見守るしかない。
32カ国を除いた5カ国は韓国・日本・ニュージーランド・オーストラリア・コロンビアだ。日本は今日接種を始める。

ワクチン接種でOECD最下位、K防疫の惨憺たる現実=韓国

 

日本やアメリカ、イギリスなどの先進国が集まる経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で、ワクチン接種がもっとも遅いのが韓国だからえらく自尊心が傷ついたようだ。

でも「使わぬ宝はないと同じ」というように、ワクチン接種の準備が整っても、みんなが嫌がって拒否したら意味はない。
日本には抵抗感を持つ人が多いらしく、埼玉県ではこんな「ご褒美」をあげる自治体がでてきた。

東京新聞の記事(2021年2月16日)

コロナワクチン、1回接種で商品券1000円もらえる 埼玉県宮代町「接種率上げるため」

ワクチン接種率を上げるためにこの町では、注射を打った人に地域限定商品券を配布することをきめた。
1回で1000円分、ファイザー社のワクチンは2回の接種が基本だから、これで1人2000円分をゲットだぜ。

「できるだけ多くの人に打ってもらいたい。どうすれば接種してもらえるか」を考えたと町の担当者は語る。

この発想にネットの声は?

・接種は断固拒否(爆笑)
・はあ?2桁足りないんですけど
・ヤクルトでええやろ(´・ω・`)
・ワクチン打たない奴は感染したら病院行って高額入院費用請求されるからな
・ええやん
補助金出して自粛させるより
よっぽど前向きだわ

さて、この「GoToワクチン」は成功するのだろうか。

 

ワクチン接種ができないことを「羨む視線で見守るしかない」と表現する国があれば、この前テレビで、ワクチン接種のために厳しい寒さの中で何時間も並んでいるアメリカ人や、早く接種ができそうな地域に人が殺到しているというニュースを見た。

ワクチンのリスクは人類平等のはずなのに、日本には保守的な人が多いのか。

 

さて江戸時代末期、この人も宮代町と同じアイデアを思い付いた。

 

 

医者で蘭学者でもある緒方 洪庵(おがた こうあん:1810年 – 1863年)は、歴史の授業で必ずならう重要人物だ。
彼は天然痘(てんねんとう)治療に貢献し、日本の近代医学の祖といわれる。

天然痘は激しい苦痛や高熱をともない、しかも致死率の高い恐ろしい感染症で、『日本書紀』にある「瘡(かさ)発(い)でて死(みまかる)者――身焼かれ、打たれ、摧(くだ)かるるが如し」という記述は天然痘と考えられている。
この病気にかかると、身体を打たれて、焼かれるような苦しみを味わったのちに死んでいったらしい。

そんな恐ろしい病気にはワクチンを体内に入れる、牛痘種痘法による切痘が効果的と知った緒方洪庵は「除痘館」を開いて種痘を始める。
*種痘(しゅとう)とはワクチン接種のこと。

 

種痘

 

天然痘で苦しみ人(16世紀・アステカ)

 

「これで天然痘の苦しみから人びとを解放することができる!」と考えた緒方洪庵の前に立ちふさがったのが迷信。
これをすると牛になる、子供がおかしくなるといったウワサが流れて、種痘を拒否する人が続出した。
そこで洪庵は怖がる大人や子供に、種痘と引き換えに米やお菓子をあげようと言う。
不安や恐怖をなくすのではなくて、それを上回る「ご褒美」を提示することで人びとを動かした。
江戸時代でも現在でも、日本人にはこのやり方が有効らしい。
それにしても自腹でワクチン接種をして、プレゼントまであげちゃうとか緒方洪庵とは神か。
「日本の近代医学の祖」といわれるだけはある。
このあと、種痘を受けた子供は天然痘にかからなかったという事実が証明され、迷信は崩れ去った。

令和の日本人なら、さすがに「牛になる」レベルの迷信を信じる人はいないけど、何らかの変化を恐れる人はたくさんいる。
さて埼玉県宮代町の試みや日本のワクチン接種が成功して、コロナウイルスの感染状況はこれから減少するのか。
そして夏に五輪は開けるか。

 

赤い「さるぼぼ」はもともとは天然痘除けのお守りだった

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。