【伝承を科学で解明】ジェンナー、人類を天然痘から救う

 

新型コロナウイルスという悪魔が人類を襲ういま、世界は第二の「エドワード・ジェンナー」を待っている。

日本でいえば江戸時代(1749年 – 1823年)に生きたこの人はイギリスの医学者で、種痘法を開発して恐怖の感染症「天然痘」の根絶に決定的な役割を果たした。
まさに人類の救世主で、「近代免疫学のケンシロウ」といわれる。という話をどっかで聞いたような?

きょうは5月14日だからこの英雄について書いていこう。

 

ジェンナー

 

ジェンナーが田舎で開業医をしていたころ、イギリスではときどき天然痘(てんねんとう)が流行っていた。

ちょっとここで、この病気について書いておこう。
天然痘はコロナウイルスのように人から人へうつる感染症で、致死率が平均で約20%~50%と異常なほど高い。

この病気にかかると顔や手足など全身に発疹(いわゆるブツブツ)ができて、頭痛や40度ほどの高熱にうなされたすえに命を奪われてしまうこともある。
くわしくはここをどうぞ。

呼吸器・消化器などの内臓にも同じように現われ、それによる肺の損傷に伴って呼吸困難等を併発、重篤な呼吸不全によって、最悪の場合は死に至る。

天然痘

 

さらに問題は見た目だ。
知らないうちに周囲の人に感染していき、こんな発疹が全身にあらわれ、苦しんで亡くなる様子は昔の人には恐怖しかない。

 

 

この恐ろしい感染症は日本でもたびたび起きて、人びとは秘密兵器「さるぼぼ」で対抗した。

 

さるぼぼさんが赤いのは天然痘除けのため

 

話をジェンナーに戻そう。

彼がイギリスで医者をしていたころ、人生を一変させる話を耳にする。
乳しぼりなど牛の世話をしている人は牛痘(ぎゅうとう)という感染症にかかることがあって、一度その病気になるともう天然痘にはならないという。

天然痘に比べれば、牛痘なんて雑魚キャラ。
ラオウとハート様ぐらいの違いがあって(たぶん)、症状が軽くてあとも残らないというから、人間にとってはインフルエンザ程度では?
とにかく牛痘はわりと安全な病気だ。

牛痘にかかった人は天然痘にはかからないという話を聞いたジェンナーは、「これは天然痘の予防に使えるかも!」とピコーンときて、その後18年にわたって研究を続ける。
そしてその日がやってきた。

1796年5月14日、ジェンナーの使用人の子であるジェームズ・フィップスという8歳の少年に牛痘を接種した。少年は若干の発熱と不快感を訴えたがその程度にとどまり、深刻な症状はなかった。

エドワード・ジェンナー

 

6週間後にジェンナーが少年に天然痘を接種したけど、少年は天然痘にはかからなかった!
こうして天然痘の予防法が確立して、人類はついに天然痘という悪魔を克服することができた。
これで5月14日は種痘記念日となる。
「牛痘にかかった人は~」という言い伝えは前々からいろんな人が聞いていたはずだけど、それに可能性を感じ、自分を信じて努力をつづけたジェンナーの勝利ですね。

 

まー終わり良ければ総て良しだけど、もし少年が天然痘にかかっていたら、児童虐待のレベルを超えている。そうなったらジェンナーは、「人類の進歩に多少の犠牲はつきものだよ」とかアニメの悪役医者みたいなことを言うのだろうか。
ジェンナーの功績の半分はこの小さな勇者にあたえたい。

さて、コロナウイルスから人類を救う英雄はいつ生まれるのか?

 

 

日本人も1970年代半ばまでは、天然痘の予防接種(種痘)を受けていた。
これをすると腕にこんな痕が残るから、一部乙女の間では「年齢がバレちゃう!」という天然痘とは別の恐怖を生んだ。

 

こうして、さるぼぼさんはお土産になった。

 

 

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4 件のコメント

  • >日本人も1970年代半ばまでは、天然痘の予防接種(種痘)を受けていた。
    そこからの続き、現代までの天然痘に関する歴史を補足しておきます。こちらもとても興味深いですよ。
    (Wikipedia「天然痘」からの要約です。)

    1970年代に日本で種痘を行わなくなったのは、日本国内からは天然痘が完全に撲滅されたと政府が判断したからです。その後さらに、世界各国で、種痘による天然痘の根絶を目指した動きが続きます。そしてアフリカのソマリアでの感染発症報告を最後に、この世界から天然痘は根絶されました。1980年、WHOは天然痘の完全撲滅を宣言します。つまり「自然界にはもはや天然痘ウィルスが存在しない」と。

    が、しかし、あくまでそれは「自然界には」の話であることにご注意ください。米国やソ連をはじめいくつかの国では、主に疾病対策研究機関や生物兵器研究機関において「万が一の時のためにワクチンを確保しておく必要がある」という理由で、天然痘ウィルスが冷凍保管され続けていたのです(SFじゃありません、本当の話ですよ)。事実、前述「ソマリアの感染者報告」よりも後、WHOによる撲滅宣言の直前の時期、世界で最後に天然痘で死亡した患者は、イギリスの微生物学研究所に保管されていた天然痘ウィルスに誤って感染してしまった女性研究者だったのです。(この事件をモデルに、SF小説や漫画・映画が後にいくつか作られています。)
    WHOはじめ主要国際防疫機関はそれらの国に対して「ウィルスを処分すること」を何度も提案し決議したのですが、結局、天然痘ウィルスが完全に処分されることはありませんでした。

    更に時は流れて21世紀、WHO専門家会議は2015年に「天然痘ウイルスの人工合成は技術的に可能になった」と結論し、天然痘が再び発生するリスクが世界から完全に無くなることはないと報告。2018年にはカナダのグループが実際に、メールで注文した(天然痘ウィルスとは関係のない)DNA断片を材料として、天然痘ウイルスに近縁の馬痘ウイルスの人工合成に成功しました。このような技術は、表向きは、「万が一に備えて天然痘ワクチンを備えておく」という名目なのですが、果たして・・・。そもそも自然界からウィルスが撲滅されてしまったはずなのに、何に対する「万が一の備え」なのでしょうかねぇ。

    科学の進歩には光もあれば闇も伴う。人間には、科学的な「知識」だけでなく「智慧」も今のところ十分に足りていると、信じたいものです。

  • 「天然痘ウイルスの人工合成」というのは、とんでもないというか恐ろしい話ですね。
    何のための進歩なのか…

  • 更に最新情報に基づき、上記の続報です。
    今日の朝刊に出ていましたが、現在流行中のコロナウィルスに対するワクチン開発が色々な国で進められているのですが、その一部には、上記のような「遺伝子(=DNA≒RNAやVirus)の操作技術によってワクチンを合成」する開発計画が進行中だとか。ただし、その方法によるワクチン開発はまだまだ研究段階であり、天然痘ウィルスの合成とは違って、対コロナウィルス・ワクチンを合成するのは難しいらしいですが。
    たとえ遺伝子操作技術でワクチン合成に成功したとしても、安全性を十分に確認してから実用してほしいものですね。ウィル・スミス主演「アイ・アム・レジェンド」の世界が、現実のものとなりませんように。

  • ワクチンが開発されないと来年の五輪も厳しいと聞きました。
    世界が協力して、総力をあげて作り出してほしいですよ。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。