マレー作戦で日本勝利:イギリス人とアジア人が受けた“衝撃”

 

1941年12月8日、日本軍の真珠湾攻撃によってあの戦争の始まった。
…というワケでは必ずしもなくて、海軍によるこの奇襲の1時間前に、実は陸軍がマレー上陸作戦を開始していたのだ。ってことをこの記事で書いた。

太平洋戦争の始まりは真珠湾攻撃、は誤り? 実は先に陸軍が‥

ということで今回は、このマレー作戦をもうチョットくわしく見ていこう。

 

日本海軍がアメリカ軍に対して行ったのが真珠湾攻撃で、イギリス軍が東南アジアの拠点としていたシンガポールを落としたのが陸軍のマレー作戦。
この作戦の大きな山場は12月10日のマレー沖海戦にあった。
マレー半島の東側に広がる海域で、日本軍の戦闘機とイギリス海軍の東洋艦隊との間で激しい戦闘が行われた。

この海戦で12月14日(80年前のちょうどいまごろ)、日本がイギリスの戦艦プリンス・オブ・ウェールズと巡洋戦艦レパルスを攻撃し2艦とも海に沈めた。
この敗戦で、イギリス人はとてつもなく大きなショックを受ける。
「不沈艦」と呼ばれ、1941年にチャーチル首相を乗せて大西洋を横断し、アメリカのルーズベルト大統領と大西洋憲章を結んだ場所がプリンス・オブ・ウェールズだった。
イギリスが誇るこの戦艦が日本に破壊されたと聞いて、チャーチルは言葉を失い、後に著書でこう書いた。

「戦争全体でその報告以上に私に直接的な衝撃を与えたことはなかった」

航空機だけで航行中の戦艦を撃沈したのはこれが世界で初めて。
この知らせを聞いて、日本国民がわきに沸いたのも当然だった。
日本軍がマレー作戦で目的としていたシンガポール占領で最大の障害、ラスボス的な存在と考えられていたイギリス東洋艦隊の主力を壊滅させたことで、日本は制海権を手に入れ、優位に立って作戦を進めることができるようになる。
でもこのとき、数年後のインパール作戦で日本軍がイギリス軍を相手に、考えられないような大敗北をすることはまだ誰も知らなかった。

 

このあと日本軍はクアラルンプールやジョホール・バルなどを次々と攻略していき、破竹の勢いのまま、難攻不落といわれたシンガポール要塞を10日ほどで落としてしまった。
ここを守っていたパーシヴァル中将が山下奉文中将に降伏を申し出て、8万人というイギリスの歴史上最大規模の将兵が捕虜となる。
このシンガポールの戦いをチャーチルは「イギリス軍の歴史上最悪の惨事であり、最大の降伏」と評した。
でも戦争が終わると、立場は残酷なほど逆転する。

戦争終結後に山下がアメリカ軍により戦犯として絞首刑に処せられる際に、アメリカ軍は大戦中日本軍の捕虜となっていたパーシヴァルを呼び寄せて死刑執行に立ち合わせている。

シンガポールの戦い

 

マレー作戦でイギリス軍を簡単に撃破してしまったことで、牟田口廉也はこう思った。

「中国軍より弱い。果敢な包囲、迂回を行えば必ず退却する」

「圧倒的じゃないか、我が軍は」みたいなフラグを立てた牟田口はインパール作戦の失敗で、日本中の恨みを買うこととなる。

日本人に最も嫌われる日本人・インパール作戦の牟田口廉也

 

 

マレー作戦において日本軍がイギリス軍を撃破し降伏させたことで、同じアジア人である現地の人たちは独立への希望を持ち、各地で民族主義が高揚する。
その時代を生きたマレーシアのマハティール前首相は、「無敵」の白人に戦いを挑んだ日本は負けると思っていた。
でも、現実を見てその認識はこう変わる。

予想に反して日本軍は快進撃を続け、短期間でマレー半島からイギリス勢力を一掃した。この時、マハティールは初めて「白人が敗北することもある」と学んだ。

マハティール・ビン・モハマド 

 

ただマハティール氏は、太平洋戦争は日本の”侵略”で不幸なことだったとしている。
あの戦争に対するマレーシアの見方については、 太平洋戦争・マレーシア  で確認されたし。
つい最近、話をした日本好きのベトナム人も「ベトナムは日本から独立した」と言っていた。
だからマレー作戦や太平洋戦争について、「アジアの人たちが日本に感謝している!」なんて期待を持っちゃうと、きっと現実に打ち破られるからそれはやめたほうがいい。

 

 

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2 件のコメント

  • 一般的に、東南アジアの人々から感謝はされていません。
    ただし「アジア人でありながら白人に戦いを挑み、勝った場合もある(その点が中国人とは違う)」という意味で、日本人に敬意を抱く人は多いです。特に高齢者を中心に。
    ただし一部には、そのことでかえって日本人を「畏怖する」「うらやむ」人もいるみたいです。さらにそれが、国によっては反日のタネにもなり得ます。

  • >日本人に敬意を抱く人は多いです。特に高齢者を中心に。
    このへんについては、世論調査のデータがあると分かりやすいですね。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。