日本が大好きだ! とアラブ人に言われたが嬉しくなかった件

 

同じ歴史上の人物でも価値観が変われば、評価が真逆になることもある。
アメリカ大陸へ到達し、当時のヨーロッパ人に新世界を紹介したコロンブスを偉人と見る人がいれば、侵略者と考える人もいる。
伊藤博文を暗殺した安重根は日本ではテロリストだが、韓国では国民的な英雄だ。
こんなことは「世界史あるある」で、海外旅行へ行けばそんな瞬間と直面することもある。

600万人のユダヤ人を虐殺し、人類史で最悪の人間とされているヒトラーを英雄視する人がいて、ドイツ人が言葉を失った。

ヒトラーが好き? ドイツ人が経験した“最大級の衝撃”

 

ボクも20年以上前に「住んでる世界が違う!」と、越えられない壁とぶつかったことがある。
当時は平和だったシリアを旅行中、街中をぶらぶら歩いていると、5~6人の大学生から声を声をかけられた。
「やあ、こんにちは! 君はどこから来たんだい?」と言われ、「日本からですが、何か?」と答えると、「日本か、それはスゴイ! ボクたちは日本が大好きなんだ。ぜひ君と話がしたい。これから大学の寮へ来てくれよ」と満面の笑顔で誘われる。
これは大丈夫だろうと直感的に思い、寮へついて行くことにした。

彼らが出してくれた飲み物やお菓子はおいしかったし、シリアのことが市民目線でわかり、結果的としては思い出に残る交流となったが、そんな気分が吹き飛びそうになる瞬間があった。
なんで日本が好きなのか尋ねると、彼らは「尊敬する日本人がいるから」と答える。となると、その名前を聞かずにはいられない。
シリア人に人気の日本人って、一体だれ?
1人がニコニコしながら「岡本幸三」と言ったから、「今なんて?」と思わず二度聞きしてしまった。

パレスチナ過激派のテロリストと共鳴する頭のオカシイ日本人がいて、1972年にイスラエルの国際空港で銃乱射事件を起こした。
20代の日本人3人が空港内で自動小銃を無差別に撃ちまくり、26人の一般人を殺害する。
テロリストが市民を襲うなんて出来事は当時としては前代未聞で、全世界に衝撃を与え、日本政府はイスラエル政府に公式謝罪をして、犠牲者には100万ドルの賠償金を支払った。

この恥ずべき「テルアビブ空港乱射事件」の実行犯の一人が岡本 公三だ。
彼はこの事件でイスラエルの警察に逮捕され、裁判にかけられて終身刑を言い渡される。
岡本の父親はまともな人で、イスラエルの首相に謝罪の手紙を送り、駐日イスラエル大使には「(息子を)極刑に処してほしい」と手紙で伝えた。
このテロリストは1985年に釈放された後、レバノンに移動し、現在もそこに滞在している。
2003年に日本のメディアとのインタビューで、「日本に帰って友人たちに会いたい」と言った岡本は救いようのないド屑(クズ)だ。

 

こんな人間でもアラブ世界には、イスラエルに打撃を与えたことで英雄視する人もいる。
「日本が大好きなんだ。ぜひ君と話がしたい」と外国人に言われるのは嬉しいし、光栄なのだけど、その理由が市民を襲ったテロリストを尊敬しているから、というのではまったく喜べない。
「ヒトラーが好き」と言われたドイツ人と同じ気持ちだ。
日本人なら1ミリも理解することはできない、ということでもないらしい。

テルアビブ空港乱射事件から50年後の2022年5月30日、それを”記念する集会”が東京で行われ、約100人の支持者が参加した。
これに驚きを隠せない在日イスラエル大使はこうツイートした。

「1972年にロッド空港で発生した乱射事件から50年を記念する集会に参加した岡本公三容疑者、および先週末出所した重信房子元最高幹部が温かく迎えられる姿を見て愕然としました。」

 

アラブ人が自分たちの価値観や歴史認識から、こんな見方を持っていることは、日本人として受け入れられないが理解はできる。
でも、罪のない市民を大量殺害した人物を称える日本人が、一定数存在しているという事実は絶望的な衝撃だ。

 

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。