【イギリスの闇歴史】スコットランド vs イングランド

 

知人のスコットランド人によると、同じイギリス人でも、スコットランド人は基本的にイングランド人がキライ。
だから例えばサッカーでイングランドとフランスの試合が行われると、イングランドの敗北を見ながら飲むビールは至高だから、パブではみんなフランスを応援する。
なんで同じ国民同士なのに、スコットランド人がそんなにイングランド人を嫌うのかというと、そうなるだけのツラい歴史があるからだ。

1651年のきょう9月3日、第三次イングランド内戦で ダンバーの戦い が行われ、クロムウェル率いるイングランド軍にスコットランド軍がボッコボコにされた。
被害を見るとイングランド側で戦死者20人に対し、スコットランド側では3000人ともう話にならない。
そしてちょうど1年後の1651年9月3日、今度は ウスターの戦い でイングランド側の戦死者200人に対し、スコットランド側は3000人とこれまたフルボッコ。
*はしょって書いたんで、くわしいことはリンク先で確認のこと。
ちなみにこの戦場は「ウスターソース」が生まれたことで有名な都市だ。

ウスターの戦いで第三次イングランド内戦は完全に終了し、もはやスコットランドの力ではイングランド軍には勝てないことが明らかになった。
クロムウェル率いるイングランドの「ニューモデル軍」の強さはもはやチート級。
この連敗の結果、それまでのわりと対等だった立場は崩れ、スコットランドはイングランド共和国の一地方として、”格下扱い”を受けるという屈辱を味わうこととなる。

 

ウスターの戦いでのクロムウェル

 

スコットランド人から愛される女王に、スコットランド王の父とフランス貴族の女性を母にもつメアリー・ステュアート(1542年 – 1587年)がいる。
親愛の気持ちを込めて「クイーン・オブ・スコッツ」とも呼ばれる女王メアリーは、イングランドの女王エリザベス1世の命によって処刑された。
イギリス史にはこんな感じに、スコットランド人にとって屈辱的な闇歴史がほかにいくつもあるから、たまりたまってイングランドが嫌いになる。
いまでもそういう人は多いから、2014年にイギリスからの独立を問う住民投票が実施され、「44.7%対55.3%」という超大接戦で否決された。
2014年スコットランド独立住民投票

くわしいことはこの記事を。

日本人さん困ります:スコットランド人のストレスのわけ

ちなみに、スコットランド地方を古いラテン語で「カレドニア」という。
太平洋に浮かぶ島国で、「天国にいちばん近い島」なんて言われるニューカレドニアの地名はここに由来するのだ。
さらにちなんじゃうと2018年にここでも、フランスからの独立の是非を問う住民投票をしたが、反対票が過半数を占めて独立は拒否された。

天国に近い島・ニューカレドニアは“新スコットランド”だった

 

スコットランド人が歴史を学ぶとハッピーな思い出よりも、ふつふつとイングランドへの怒りがわいてくる出来事のほうが多いから、現在のスコットランドの人たちはイングランドへ冷たい視線を向ける。
その思いはアイルランド人も同じだから、「敵の敵はダチ」の法則でスコットランド人とアイルランド人の仲は良い。
でも知人が言うには、スコットランド人は愛国心が強いから、イングランドという国に対して良い感情を持っていないだけ。
イングランド人と会えば普通に話をしてジョークも言うし、別れる時はハグもする。個人的な付き合いなら、出身地より性格や感覚が合うかどうかを重視する。
でもやっぱり複雑な過去があるから、イングランド人と政治の話をすると、ケンカになることもあるらしい。
日本人がスコットランド人と会ったら、「イングランド人と同じイギリス人」という見方はしない方がいい。
基本的に、イングランド人とは別のバックグラウンドを持つ人間と考えていい。

 

かつてスコットランドの国王夫妻が住んでいた ホリールード宮殿(Palace of Holyrood)。
いまでは夏になると、エリザベス2世がここに滞在する。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。