「日本人さあ…」。在日スコットランド人のストレスのわけ

 

「われらの王が戻ってきた!」

10年以上もフランスにいた女王メアリー・ステュアートが1561年の8月19日、やっとスコットランドに帰国した。
「王の帰還」に首都エディンバラの人びとは熱狂し、歓迎のセレモニーでは、天使の格好をした少年が地球儀の中から現れると、メアリーに町の鍵や聖書を渡したという。

A boy dressed as an angel emerged from a globe and gave her the keys to the town, a bible, and a psalter.

Entry of Mary, Queen of Scots into Edinburgh 

 

そしてメアリーのエディンバラ入りを祝う式典が、1561年のきょう9月2日に行われた。
Entry of Mary, Queen of Scots into Edinburgh
スコットランド国民に愛された彼女は「クイーン・オブ・スコッツ(Queen of Scots)」とも呼ばれる。
彼女と同時代、イングランドには女王エリザベス1世がいたから、この2人はよくセットで語られて、『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』なんて映画もつくられた。
そんなスコットランド国民の女王は、エリザベス1世の命で処刑されてこの世を去る。

 

 

「クイーン・オブ・スコッツ」がイングランド人に処刑されたとか、いろいろと不幸な過去があったから、現在のスコットランドにはイングランド人を嫌う人が山盛りいる。
でも日本では、そんな対立や確執を知らない人が山盛りの気配。

2014年にスコットランドはイギリスからの独立を問う住民投票を行って、結果は「44.7%対55.3%」でかろうじて否決された。(2014年スコットランド独立住民投票
ほぼ半数のスコットランド人が独立を願っている(=イギリスの一部はイヤ)という事情を知ってる日本人は少ないと思われ。
だから、日本に住む知人のイギリス…、いやスコットランド人にはイラっとくることがたまにあって、それが積もって「ストレス山」が形成されると言う。

彼女は、アイルランド人の母とスコットランド人の父をもつ“ハーフ”だ。
でもスコットランドで生まれ育ったから、自分はスコットランド人と考えている。
ロンドンに住んでいた時、スコットランド人を小バカにするようなイングランド人の言動を何度か見たし、治安の悪いロンドンでは怖い思いをしたから、彼女はイングランドをあまり好きじゃない。

そんな彼女が日本に興味をもって、西の島国から東の島国へやってきた。
それから4年ほどが過ぎて、治安は最高にいいし、日本での生活には基本的に満足しているが、不満もある。
それは日本人の「無知」。

ある時イギリスという日本語は本来はイングランドの意味だと知って、「イギリス=イングランド」のイメージが脳にインストールされてしまう。
それで彼女は初対面の日本人に自己紹介する時、自分を「スコットランド人です」と言うようにした。
でもそうすると、日本人から返ってくる反応は「そうですか。なるほど」といった好ましいものはマレで、「…つまり、イギリス人ですよね?」と聞き返されることがほとんどだ。
おかしいと思ったコトを、彼女はあいまいにしない。
それで「いいえ違います。わたしはスコットランド人です」ともう一度やや強めに言っても、「…えっと、イギリス人じゃないんですか?」と同じ確認をされることも多い。
ここでイギリスの歴史や、スコットランド人の思いを説明する場合もあれば、めんどくさいだからさっさと別の話題に移ることもある。
でも、自己紹介のたびにウンザリするのはイヤだから、最近は限界まで妥協して、「イギリスのスコットランド人です」と言ってるらしい。

日本にはイギリスに関心があって、スコットランドを知ってる人もたくさんいる。
でも彼女の経験上、スコットランドをイギリスの一部、イギリスの一地方と思っている人ばかりで、「イングランドとは別の国」という正しい認識をしている人は、はぐれメタル並みの希少種だ。
なかには愛するエディンバラ城を「イングランドにある城」とカン違いしていた、きわめて残念な日本人もいた。

日本人は礼儀正しいし、親切だから全体的には好き。
でも、「イギリス=イングランド」のイメージの強い人が多くて、それを自分に重ねられるとイラっとする。
ということで、日本人がスコットランドに関心を持って、もっと正確に知ってくれたいいのにと彼女は日々思っている。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。