「All Eyes on Rafah」 世界中に広がる支持や反論・違和感

 

SNSを見ていると、知り合い(外国人)のイスラム教徒が一斉に「All Eyes on Rafah」という言葉とこの画像をシェアしていた。

 

 

昨年の10月7日、イスラム組織ハマスの戦闘員がイスラエルに奇襲攻撃をしかけ、赤ん坊や女性、老人など 1000人以上の市民を殺害したことで、地獄の門が開かれた。
すぐにイスラエル軍はハマスの拠点のあるガザ地区に報復攻撃を開始し、現時点でガザ地区での死者は3万人を超えた。

多くの避難民が南部のラファに移動した後、イスラエル軍はそこへの攻撃を開始すると宣言し、実際に空爆を行い、すでに多くの死傷者が出ている。
ラファにいるイスラム教徒たちは生命の危機にあるから、世界中のムスリム同胞が「All Eyes on Rafah」(すべての目線はラファに向けられている)とSNSで訴えはじめた。
「ラファから目をそらすな、全集中せよ!」と言いたいのだろう。
AIで生成されたとされるこの画像は、実際の戦闘行為や遺体の写真と違って、過激さや残酷さがなく、削除の対象とはなりにくいため、主にイスラム教徒の間で、次のようなメッセージとともに爆発的に拡散されている。

・Not only eyes,
All hearts on Rafah
(目だけではなく、すべての心がラファに注がれている)
・May Allah cover these people with mercy
(ラファの人々がアッラーの慈悲に包まれますように)
・Free Palestine.
Stop genocide in gaza.
(パレスチナを解放せよ。ガザでの大量虐殺をやめろ。)

*以下、日本語訳のみ。

・ヨーロッパのホロコーストを叫び続けた人々によって、ガザでホロコーストが行われている。
・イスラム世界の指導者たちはなぜ動かないのか? アッラーがあなたちを免責されることはない。
・世界の平和と人類のために、パレスチナを支援する必要がある 🇵🇸
・私はいつもパレスチナとともにいる。
・私たちはみんな、ただ彼らを見ているだけで、何も効果的なことをしていない! これで許されるだろうか?
彼らを救うためにラファに行かなければならない!

 

とはいえ、これは視点の一つで、全人類が共感したわけでない。
今度は、イスラエルを支持する人たちから反論や批判の声があがりはじめ、ある人が作った「10月7日、あなたたちの目はどこに向けられていた?」と問うカウンター画像が拡散するようになった。

 

 

・10月7日に悲劇が起こった時、彼らは目をそらしていた。祝福する者さえいた。
・バングラデシュ、ナイジェリア、パキスタン、アルメニアで同じことが起こった時、彼らの目はどこに向いていたのか? この視線はとても「選択的」だ。
・イスラエルの人質については?
・若い世代はトレンドのすべてを共有したがる。全体の背景を理解しないでね。

 

以前、イスラム教を国教とするイエメンに行った時、東日本大震災について現地の人からこんな話を聞いて、衝撃を受けたことがある。

あの地震が起きた時、イエメンでは、日本には神(アッラー)を信じていない人が多いから、神が怒り、地震や津波を起こして無神論者たちに「罰を与えた」と信じる人が多かったという。

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そんな話を聞いて、不快に思ったボクとしては、こんなコメントが印象的だった。

・この世で起こることは全てアッラーの意思なら、今、ラファの人々が困難な状況にあるのもそうではないのか?

この言葉にイスラム教徒たちがどう反応したかは知らない。

 

 

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2 件のコメント

  • > この言葉にイスラム教徒たちがどう反応したかは知らない。

    イスラム教に限らず、一神教では、この種の疑問への答えとして「原罪」「裏切者」「堕天使」「悪魔」という存在が用意されています。つまり悪役を創造しての責任転嫁ですね。

  • 上のコメントを付けた者ですが、ちょっと反省。
    他国人がどう考えようが、ラファで失われた3万人以上の命は二度と還りません。
    それと、どの民族・国民であろうが、一般的には、1,000人の命よりは3万人の命の方が重い。
    全ての人類に共通するであろう算数での比較です。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。