イエメン人が「日本は危険!絶対に行きたくない」と言う理由

 

まえに中東にある الجمهورية اليمنية‎ という国を旅行したことがある。
おっといけない、ついアラビア語で書いちまった。
かつて古代ローマ人が「幸福のアラビア」と呼んだイエメンだった。

「イエメンか。どこそれ?」という人が多いと思うから、まずは簡単に紹介しておこう。

イエメンはアラビア半島の南端、アフリカの向かい側にある国だ。

 

 

面積:55.5万平方キロメートル(日本の約1.5倍弱)
人口:約2,892万人(2018年)
首都:サヌア
民族:主としてアラブ人
言語:アラビア語
宗教:イスラム教(スンニー派及びザイド派(シーア派の一派))

以上の数字は外務省のイエメン共和国(Republic of Yemen)基礎データ から。

日本とは馴染みがない国だけど、コーヒーの「モカ」はイエメンにある都市(港)のこと。

イエメンという国:旅行・モカコーヒーとは・児童婚という闇

 

イエメンというとここ数年、安定して政情不安定がつづいている。
外務省の危険情報をみると、「退避してください。渡航は止めてください」のレベル4(退避勧告)。
これは最も危険なレベルで、決して足を踏み入れてはいけないということ。

 

ボクが旅行したときはここまでひどい状態ではなくて、危ないところに近づかなかったら旅行はできた。
でも、ボケられるほど安全な日本とはちがい、テロが多くて治安は悪く、宿では手りゅう弾やバズーカ砲の持ち込みが禁止されていた。

 

 

ジャンビーヤと呼ばれる短刀の所持が認められているイエメンでは、「自分の身は自分で守る」という考え方が強いくて(警察があんまり当てにならないらしい)、銃が出回っているという。

それで首都サヌアに入るときには危険物がないか、車を一台一台チェックするから時間がかかってしょうがない。
でも安全は何物にもかえられないから、国民はこれを受け入れていた。

現地の人の話では、スリが多いけど殺人事件は少ないから、気を付けていれば日常生活で危険を感じることは特にない。

 

 

 

じっさい旅行中、危険な目には一度もあわなかったけど、国全体をみればイエメンには危険なにおいがただよいまくり。
特にテロや内戦とはほぼ無縁の日本に比べれば天と地下だ。

そんなイエメンで旅行会社のオーナーと英語ガイド、それにドライバーの3人とオフィスで話をしていたときのこと。
イエメンの危険情報を神経質なほど聞くボクに、オーナーが「君はそう言って怖がるけど、オレにしてみたら日本のほうがずっと恐ろしいよ。絶対に行きたくないね」と言う。

そうそう。日本はとても恐ろしい国ですよね。ってはあ?
まさかイエメン人からそう言われるとは思わなかった。

英語ガイドもドライバーも同じ意見で、日本はイエメンよりはるかに危険な国だから旅行にも行きたくないと話す。
ワケを聞くと、みんな3・11の東日本大震災の映像を見たからと言う。
巨大な津波が海の向こうから押し寄せて、人も車も家も街全体をのみ込む様子はこの世のものと思えず、テレビの前で心の底から震え上がった。

彼らイスラーム教徒には、あの大地震と津波は聖典クルアーン(英語読みコーラン)に書かれている、神の怒りによって世界が滅ぼされるという「この世の終わり」に見えた。
くわしいことはここをクリック。

最後の審判

日本は神(アッラー)を信じていない人が多いから、神が怒って「罰を与えた」と考えるイエメン人が多かったらしい。日本人としては腹立つ話だが。

テロだったら、そのときの社会情勢や場所からある程度の予想はできるし、それに応じて行動したらほとんど問題ない。
でも天変地異は人知を超えたものだから、本当に恐ろしい。
あんな映像を見たら、日本のほうが安全とか、日本に行きたいと言うイエメン人はひとりもいない、というのが彼ら3人の意見だった。
あちらから見ても、天と地下ほどちがうらしい。

その巨大地震からきょうで9年になる。

 

首都サヌアの様子

 

 

こちらの記事もいかがですか?

イスラム教とは② 女性差別?一夫多妻制の理由とは

イスラム教徒の女性の服②ブルカはどんな感じ?女性差別?

イスラム教とは③アフガンの結婚・児童婚の理由・女性の権利

イスラム教:中東は厳しくて、東南アジアが「ゆるい」理由は?

イスラム教を知ろう! 「中東・イスラム」カテゴリーの目次① 

 

2 件のコメント

  • この記事に書いてある通り、中東あるいはヨーロッパ人は、地震や津波などの「天変地異」を異常に怖がります。彼らの住んでいる地域における宗教対立、民族対立、移民排斥運動、それらに端を発するテロ活動や戦争、その方がよほど恐ろしいと思うのですが。おそらく、自分あるいは自民族がこれまで実際に経験したことのある災難については、ある程度の「慣れ」が生じてしまうのでしょう。ただ、そのことが、日本人の場合はかえって災害時の避難を遅らせ犠牲者を増やす一因にもなってしまうことは困りものですが。
    また、イスラム教徒やキリスト教徒の場合、自然災害が「神の手による罪深い人間への罰」という感覚で捉えられる傾向があり、余計に恐ろしく感じられるのだと思います。警察や検察と違って、神様の下す天罰からは誰も逃げられませんからね。

  • 「日本は地震と津波があるから怖い」ということは2年まえ、京都で知り合ったイスラエル人も言っていました。
    テロは人為的なものだから予測ができるから、自然災害のほうがもっと恐ろしいと。
    住めば都で、結局は慣れの問題でしょう。

  • コメントを残す

    ABOUTこの記事をかいた人

    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。