始めの一言
「ヨーロッパの多くの国々や、わがイギリスでも地方によっては、外国の服装をした女性の一人旅は、実際の危害を受けるまではいかなくても、無礼や侮辱の仕打ちにあったり、お金をゆすりとられるのであるが、ここでは私は、一度も失礼な目にあったこともなければ、真に過当な料金をとられた例もない。群衆にとり囲まれても、失礼なことをされることはない(イザベラ・バード 明治時代)」
「日本賛辞の至言33撰 ごま書房」
イザベラ・バード(ウィキペディア)
19世紀のイギリス人。
旅行家であり作家であり写真家でありナチュラリストであったという、多彩な人。
1878年(明治11年)6月から9月にかけて、通訳兼従者として雇った伊藤鶴吉を供とし、東京を起点に日光から新潟へ抜け、日本海側から北海道に至る北日本を旅した(所々で現地ガイドなどを伴うこともあった)。
また10月から神戸、京都、伊勢、大阪を訪ねている。これらの体験を、1880年(明治13年)、”Unbeaten Tracks in Japan” 2巻にまとめた。
(ウィキペディア)
今回の内容
・ジャイナ教の「タブー」
・イスラーム教徒に「ファッキン・アラー!」
・ジャイナ教の「タブー」
大声で話しながら食事をしたり、電車の中で携帯電話で話したりする。
それらの行為はマナー違反だけど、まだいい。
周囲から冷たい目をされるけど、大きな問題にはならない。
けれど、海外旅行に行くなら気をつけないといけないことがある。
宗教のタブーだ。
これに触れると、「外国人だから」「知らなかったから」では許されないことがある。
インドを旅行中に、ジャイナ教のお寺に入る機会があった。
その前にインド人のドライバーから、ジャイナ教のタブーについての話を聞いた。
でもその前に、「ジャイナ教って、なに?」という人も多いと思う。
正直言って、ボクも詳しくは分からない。
けど、ジャイナ教でもっとも大事な考え方が「生き物を殺したり、傷つけたりしないこと」というのは知っている。
「口を開けて呼吸をしていると、小さな虫まで吸い込んで殺してしまう可能性があるから」と、マスクをしているジャイナ教の信者もいる。
ジャイナ教はあらゆるものに生命を見いだし、動物・植物はもちろんのこと、地・水・火・風・大気にまで霊魂(ジーヴァ)の存在を認めた。したがって、アヒンサーの禁戒のためにあらゆる機会に細心の注意を払う。
宗派によっては空気中の小さな生物も殺さぬように白い小さな布きれで口をおおう
(ウィキペディア)
でも、「ジャイナ教徒は、路上の小さな生物を踏み殺さないように、ホウキで掃きながら歩く」というのは都市伝説のようだ。
「出家者は路上の生物を踏まぬようにほうきを手にする」という説明が各所にみられるが、実際には道を掃きながら歩くわけではなく、座る前にその場を払うための道具である
(ウィキペディア)
ボクがジャイナ教のお寺に入るときに受けた注意も、この教えに関すること。
「革製品を身につけたままでは、ジャイナ教のお寺に入ることはできない」とインド人のドライバーが言う。
革製品をつくる過程で動物を殺しているから、それがジャイナ教にとって「穢(けが)れ」になるという。
「革靴はダメ。革のベルトもダメ」というのはいい。
でも、「革のサイフもダメ!」というのにはまいった。
ボクが持っていた財布が革だった。
「サイフは、車に置いていけ」とドライバーは言う。
ちょっと待ってくれ。
日本ならそれでも安心できるけど、ここはインドじゃないか。
ボクが戻って来るまで、サイフは無事か?
革の財布を持っていてジャイナ教の信者に怒られるのは怖いけど、インドで財布を車に置いていくというのも別の意味で怖い。
「サイフなら、ポケットにしまっておけば分からないから、大丈夫だろう」
とボクが言っても、そのインド人は頑(がん)として受けつけない。
「ジャイナ教にとって、『生物の死』はタブーだ。もし、おまえが革のサイフを持っていることがバレたら、案内したオレもどうなるか分からない。だから車に置いて行くか、この寺には入らないかどちらかだ」
こうまで言われたら仕方がない。
サイフを車に置いていくことにした。
「サイフぐらい大丈夫」「見つからなかったら問題ない」という甘い気持ちがこのときにはあった。
でも、宗教のタブーを破ったら、本当にどうなるか分からない。
サイフを持ちこんで見つかっていたら、ボクも彼もどうなっていただろう?
ジャイナ教の信者にしてみたら、「異教徒の外国人が、ジャイナ教の神聖な空間を汚した」と考えて激怒したはず。
そうなったら、お金で解決できるかどうかも分からない。
この場合、海外旅行保険は使えないだろうし。
今までの海外旅行で、何人もの日本人旅行者に出会って話をきいてきた。
写真撮影が禁止されている宗教施設で、隠れて写真を撮ったという日本人に何人も会ったことがある。
写真を撮りたい気持ちは分かるけど、そのリスクを考えた場合、それは絶対にやめるべきだ。
まったく割りに合わない。
宗教のタブーを犯した場合、「知らなかった」「外国だから」ではすまされないこと多い。
海外旅行では、マナー違反には気をつけた方がいいけど、宗教のタブーに触れることだけは絶対に避けたい。
・イスラーム教徒に「ファッキン・アラー!」
ボクはこのとき、ジャイナ教のタブーを犯さなかったから問題はなかった。
でも、イスラエルで会った日本人の旅行者は、イスラーム教のタブーに触れてしまったため大きなトラブルにあっている。
その旅行者がパレスチナ人が運転するタクシーを利用したときに、運賃をぼったくられたことに気づいたという。
腹が立つことけど、海外旅行ではよくある。
海外旅行のトラブルとしては、小さな部類に入ることだ。
ちなみに、そのドライバーはイスラーム教徒。
彼は英語でうまく話せないもどかしさと、パレスチナ人ドライバーのあまりにエラそうな態度に怒りをこらえるのに必死だった。
相手はぼったくっているのに、それを屁とも思っていない。
英語でいろいろ言われ、最後に相手がこう言ったという。
「分かった。おまえは動物だな」
この一言で、その日本人旅行者の堪忍袋の緒が切れた。
そして相手を怒らせるつもりで、イスラーム教徒にこんな言葉を口走る。
「ファッキン・アラー!」
とたんにそのドライバーの目の色が変わる。
続きは次回に。
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