タイ人の怒り。エラワン廟での殺人から福島の仏像破壊を思う

 

福島県でお稲荷さんのキツネの像やお地蔵さんが破壊されるという、とんでもない罰当たりな事件が起きた。

テレビ朝日の報道によると、壊された仏像などは100体を越えるという。

100体超“仏像破壊”か 韓国籍の男が関与認める

福島県で100体を超える仏像などが相次いで壊された事件で、キツネの像を壊すなどした疑いで逮捕された韓国籍の男が他の事件への関与も認めていることが分かりました。

 

ふと、「こんなことが外国で起こったら、どうなるんだろう?」と思った。

たとえば、仏教の信仰が篤(あつ)いタイで起きたらどうなっていただろう?

タイは「微笑みの国」と言われているけど、タイ人も怒るときは怒る。

タイ人がとても大事にしている「仏教と国王」をバカにするようなことは、タイでは絶対のタブーになっていて、このタブーに触れると温和なタイ人も激怒する。

そんなタイで、福島のような仏像の破壊事件が起きたらどうなっていたか?

 

犯人は、たたき殺されていたかもしれない。
そんなことを思わせるような事件が、前にタイで起きている。

 

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タイの首都バンコクに、「エラワン廟(びょう)」という祠(ほこら)がある。
「タイ最強とも言われるバンコク屈指のパワースポット(バンコクナビ)」になっていて、ここにはたくさんのタイ人が祈りに来る。

タイ人だけではなくて、日本人の観光客もけっこう訪れている。

ヒンドゥー教の神「ブラフマー」を祀っており、抜群のご利益があると言われ、終日その霊験にあやかりたいと願う人と、既にご利益を受け、文字通り“お礼参り”として踊りや音楽の奉納を行う多くの人々で賑わっている。

エラワン廟

 

ただ、「パワースポット」という言葉は、アメリカ人やイギリス人が聞いても意味の分からない和製英語だから、タイ人が聞いても分からないだろう。

 

ちなみに、ここでお供え物(?)の花を買ったら5000円取られたという人がいた。

ぼったくりが起きるようだから気つけよう。
神聖なところだけど、汚れた心の持ち主はいる。

 

2006年に、このエラワン廟で事件が起きた。

あるタイ人が、このエラワン廟にある神像をハンマーでたたき壊してしまったのだ。
その直後、犯人はその場にいたタイ人に取り押さえられた。

・・・ということになってたら良かったけど、実際には、その場にいたタイ人によって殴り殺されてしまった。

ボクはタイ人にニコニコした温和なイメージを持っていたから、このニュースを知ったときには耳を疑ってしまった。

「たいていのことは『マイペンライ(大丈夫)!』で済ましてしまうタイ人が、集団で殴り殺してしまったとは!」

にわかに信じられない思いだった。

 

エラワン廟で犯人を殴り殺してしまった人たちは、前からこのタイ人に殺意を持っていたわけではなかったはず。

この犯人とはまったく関係がなく、たまたまここに祈りに来ていた一般のタイ人がそうした凶行に及んでいる。
穏やかなタイ人でも、一線を越すと暴徒になってしまう。

 

その二面性を思うと言葉を失ってしまう。

でも「二面性がある」というより、自分が「タイ人はニコニコ明るい人たち」という1つのイメージを、タイ人の全体的な印象として一方的に思い込んでいただけだったのだと思う。

 

「微笑みの国」のタイにいる人たちでも、一線を越えたらコワい。

タイで仏像を100体も破壊したら、きっと集団リンチを受けて犯人は五体満足ではいられないのでは?

日本なら、犯人はネットでたたかれるだけだけど。

 

多くの日本人は「無宗教」だと思う。

無宗教なのはいいけど、宗教に無知であってはいけない。

前に富山県で、日本人の女性がイスラーム教徒のパキスタン人の店の前でクルアーンを破り捨てしまい、大きな事件になった。

 

クルアーンはイスラーム教の聖書のこと
英語読みだと「コーラン」になる。

コーラン(クルアーン)

イスラーム教の根本聖典。
アラビア語で「音読されるもの」を意味する。天使ガブリエルによってムハンマドに啓示された、神の教えの記録とされる。
114章からなり、第3代正統カリフのウスマーンの時代に現在の形にまとめられたとされる。

(世界史用語集 山川出版)

 

このときは神聖なクルアーンを破り捨てられたと知ったイスラーム教徒が「コーランはただの本じゃない。私たちの命だ」と激怒し、日本全国から数百人が富山に殺到する事態になった。

その時の緊迫した状況を、当時の読売新聞の記事が伝えている。

この日は、県内だけでなく、関東、近 畿、中部、など全国各地から集結。イラン、イラク、アフガニスタンなど他のイスラム教国の人も集まった。

さらに、在日パキスタン大使館の書記官や、在京の パキスタン日刊紙記者も駆け付け、国際問題に発展する恐れも出てきた。

 

宗教そのものよりも、宗教に対して知識がないということの方が怖い。

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。