もし自分のアイデンティティーについて、台湾人と中国人のどちらかを選ばないといけないとしたら?
いまの台湾人の90%(89.9%)が「台湾人」を選び、「中国人」と答えた人は5%以下(4.6%)であることが世論調査の結果でわかった。
ボイスオブアメリカの記事(2021/8/11)
民调显示90%台湾民众自认是台湾人,65%的人愿为保卫台湾走上战场
*この「65%」は、台湾を守るために戦争をしてもいいと答えた台湾人の割合。
1990年に調査したときは、自分を台湾人と認識している人は13%だけだったのに、昨年は83%、いまは90%と急増している。
もうほぼすべての台湾人が自分を中国人ではなくて、台湾人と考えているとみていい。が、上の条件を外すと、自分を台湾人と中国人の両方であると考える人が27.8%いるから、中国人であることを完全排除しているワケではなさそうだ。
ちなみに台湾と中国の関係については「独立」が38.9%、「現状維持」が50.1%、「統一」が4.7%という結果。
中国政府の立場としては、台湾は中国の一部だから独立なんてことは絶対に認められない。
それを言い出したら戦争になると何度も警告しているし、これはきっとブラフじゃない。
先ほどの「65%」はこれを想定したもののはずだ。
この原則について中国には一切の妥協の余地はないから、韓国にもこうして踏み絵を迫る。
中央日報日本語版の記事(2021.08.26)
中国「韓国各界、台湾問題に関連した正しい立場を維持しなければ」
台湾は国ではなく、中国内にある「台湾省」と考える中国は、国際社会の経済、文化、スポーツの分野で「タイワン」の名称を使うことを拒否している。
それでオリンピックでは「一つの中国」の原則にしたがって、台湾は「チャイニーズ・タイペイ(中華台北)」として参加しているのが現状だ。
でも、世界で台湾を台湾として認められたいという気持ちが強いから、こういうことがあると台湾人が歓喜する。
東スポWebの記事(2021/08/25)
【パラ開会式】今度はNHK杉浦友紀アナが「台湾です。」 ネット歓迎も中国刺激か
東京パラリンピックの開会式で台湾チームが入場すると、中継していたNHKのアナウンサーが五輪と同じく、「台湾です」と紹介したことで大きな反響を呼んだ。
これはある台湾人さんのコメント。
「東京殘奧會已經開始。播音員用日語說:“是台灣。”🇹🇼好運氣在台灣🇹🇼」
(東京パラリンピックが開幕しました。アナウンサーは日本語で「台湾です。」と言いました。台湾ガンバレ)
SNSで感想を見ると「日本ありがとう!」、「うれしい!」とまさに感謝感激雨あられ。
90%が自分のアイデンティティーを「台湾人」に求めている人たちにとっては、五輪での「台湾です。」はそれを認めてくれたような感じだから、うれしくなるのはもはや必然。
「開催に関わる全ての関係者に敬礼する」、「全世界の人々に勇気と希望を与えるものと確信する」とツイッターでエールを送っていた中国総領事館はどう思ったか?
なんてことは、考えるまでもないですね。
ただその一方で、場内のアナウンスは「チャイニーズ・タイペイ」だった。
日本政府もNHKも台湾は中国の一部であるという「一つの中国」の原則を認めているから、台湾に配慮するとしたらこれが限界だったのだろう。
もちろん台湾人が一般の中国人を嫌っていることはなく、日本の語学学校に通っていた知人の台湾人と中国人は異国の地で言葉が通じるということで、助け合っていて仲はすごくよかった。
でも、アイデンティティーが違うのはお互い知っているから、政治の領域には絶対に触れない。
こんな不可侵の部分を保ったまま、仲良くしている台湾人と中国人は日本で多いと思う。
おまけ
ネットである台湾人のこんなコメントを発見。
「我是閩南人,但是我不是台灣人」
(わたしは閩南(びんなん)人で、台湾人ではない)
閩南とは福建省の南部のことで、ここの出身の台湾人は多くいるから、中国人はイヤでも閩南人(福建人)ならOKという台湾人は他にいるかも。
こちらもどうぞ。
コメントを残す