本気で殴りそうになった、エジプト人のぼったくり 中編

 

今日の一言

(1860年、来日したプロシャのオイレンブルグ使節団、日本人に対する感想)
「どうみても彼らは健康で幸福な民族であり、外国人などいなくてもよいのかもしれない。(逝き日の面影 平凡社)」

 

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一番上の写真の建物が、前回の記事で出てきた「聖カトリナ修道院」ね。
キリスト教の施設だけど、中にモスク(イスラム礼拝所)があるという、多分、世界で一つしかない変わった建物。

 

場所は、シナイ半島(エジプト)で、相手はエジプト人。
完全アウェーの中で、首都カイロまで移動するタクシーの料金を交渉する。
エジプト人ドライバーの言い値1500円を、半額以下の700円に下げさせることに成功して、700円を彼に払う。
でも、車の中にいた3人の白人(イギリス人)は400円しか払っていないと言う。

日本の300円とエジプトでの300円とはワケが違う。
300円というのは、ボクがカイロで泊まっていた宿の1泊分のお金だ。
これは取り返すしかない。

 

地図の右下、エジプトとイスラエルの間にある三角形なのが、「シナイ半島」。
丁寧に印を付けたかったけど、やり方が分からない(-_-;)

 

「一度お金を払ったエジプト人から、そのお金を取り戻す」ということは、かなり難しいのは分かってる
でも、あのドライバーは、現地人料金でも外国人料金でもなく、「さらに上」の料金までプラスしてぼったくりやがった。
これには、納得がいかない。

 

これで、何も抗議しないとなると、「日本人は、こんなものだ」と思われて、これから来る日本人旅行者にも迷惑になるかもしれない。
困難なのはわかるけど、やらなきゃいけらないときもある。

 

「バンッ!」と、大きな音を立てて車のドアを閉めて外に出る。
中にいたイギリス人、ごめんよ。
客引きをしていたドライバーに詰め寄る。
英語はうまく話せないけど、できるだけ顔に怒りを見せないといけない。
内心は、「この野郎!許せん!」という気持ちでみなぎっているから、そのまま顔に出して言う。

 

「おい、料金は、400円じゃないか、400円返せよ」
怒りを見せながらも、実は、ちょっと怖くてドキドキする。
「何だ、あいつら言いやがったのかよ。OK。400円返すよ」
ドライバーがそう言うと、ポケットに手を入れてお金を取りだし、こっちが拍子抜けするほどあっさりお金を返してくれた。

という幸せな展開だったら、どれだけ良かったか。

 

相手は、IBMなエジプト人。
ボクが「お金を返せ」と言っていることが分かると、即座に手を振る。
「No No No!おまえは800円でいいと払ったではないか。ダメだ。ダメだ。金は返せない」
「絶対、こうなるんだよなあ」と思いつつ、文句を言う。
「あの白人は400円じゃないか、なんでオレは800円なんだ。」

 

エジプト人らしい適当な言いわけを言う。
「彼らは、先に来て待っていたんだ。だから400円だ。とにかく、返せないものは、返せない」
タクシーの料金が「早い者順」で決まるわけがない。
順番の問題じゃないだろ。

 

ちなみに、インドやカンボジアなら、こういう考え方はある。
「店を開けてから、一番先にやってきた客は、『縁起がいい』として、安く売る」ということがある。朝早く買い物に行くと、「おまえは、モーニングカスタマーだから、安くしてやる」と言われたことがある。
でも、タクシーで「モーニングカスタマー」も「ファーストカスタマー」もないでしょ。

順番の言いわけが通じないと分かると、別のことを言い出す。
「分かった。金は返せないけど、おまえを助手席に座らせてやる」
そういう問題でもない。

 

「おまえは、800円で『いい』と言ったじゃないか。他の人間は関係ない」
これを言われると、一瞬、言葉につまる。
確かに、これには一理あるから。
値段交渉は、売り手と買い手の実力勝負だから、人によって値段が違うのは当たり前のこと。

 

でも、さすがにこの場合は、ダメだろう。
このドライバーがすることは、ボクや白人をここからカイロまで車で移動させるということだけ。
ボクにもあの白人たちにも、まったく同じサービスを提供することになる。

 

あの白人を400円で乗せたということは、それでも十分儲けがでるということのはず。
ボクからは、さらに倍に近い300円を不当にぼったくろうというのだから、これで黙っていろという方がムリ。

 

でも、残念なことにこういうことを言う英語力がなかった。
「NO NO NO」と連呼するエジプト人に、こちらも「NO NO NO」と言い返して、怒った表情で「金を返せ」と何度も迫るだけだった。

 

このとき、腹が立ったのは、このエジプト人だけじゃない。
「金を返せ!」「ダメだ!」というエジプト人と日本人のやり取りを、車の中にいる白人はニヤニヤして見ている。
車から降りてきて、「彼も私たちと同じ額にするべきだ」なんて、ボクに協力してくれる様子をまったく見せない。
ただの「見世物」として、楽しんでいる。
これも腹が立ったなあ。

 

そんなやり取りをしばらくしているうちに、ドライバーがキレて大声で言った。
「金は、返せない!おまえは日本人じゃないか!」
は?
思いもよらない答えで、一瞬言葉を失う。
そりゃそうだ。確かに、彼らは白人でボクは日本人だ。

でも、それが何なのか?
この場合の、「日本人じゃないか」というのは、どういう意味だ?
彼はどういう考えでこの言葉を使ったのだろう?
この後のドライバーの言動は、許せないものだった。

ごめんよ、話を引っぱっちゃて。
次で終わるから。

 

*「IBMなエジプト人ってどんなエジプト人?」と思った方は、こちらの記事をどうぞ。

「世界3大悪人」から「世界3大ウザイ国」へ。誰が考えた?

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。