【すべて逆転】イギリス人からみた日本の時間感覚と鉄道

 

6月10日は「時の記念日」だ。
天智天皇が治めていた時代のこの日(671年6月10日)、「漏刻を新しき台に置く。始めて候時を打つ。鐘鼓を動す。」と日本書紀に書いてあることにちなんでこの記念日が誕生。
長い日本の歴史の中で、日本人が時計(水時計)をつくって初めてトキを刻んだ瞬間だから、これは全国民が脳裏に刻んで祝福すべきだ。
日本では6月に祝日がないから、GWが終わった後のあの絶望感をなくすためにも、「時の記念日」を国民の祝日にしたほうがいい。

 

 

「時の記念日」が制定されたのは、第一次世界大戦が終わった直後の1920年。
当時、伊藤博文が会長をしていた生活改善同盟会で、日常生活で改善すべき十項目をリストアップし、その第一に「時間を正確に守ること」があげられた。
というのは、当時は欧米先進国に比べると、日本人は時間にルーズでだらしなかったから。
日本の近代化ではこれが問題になり、もっと時間に注意して、規律正しく行動する生活習慣を身につけようと国民に呼びかけるためにこの記念日が制定されたと。

そんな話を21世紀の欧米人にすると、満場一致で「まさか!」と驚く。

地球上の人間で最も時間と規律を守って行動するのが日本人で、それにはキホン感心するけど、厳しすぎてついていけない時もある。
電車が数分遅れたり数十秒早く出発すると、鉄道株会社が公式に謝罪するのは日本だけの現象で自分たちにはネタでしかない。

日本に住んでいるアメリカ人、イギリス人、ドイツ人、スペイン人、リトアニア人に聞いた感じ、大体みんなこんなことを言う。
少なくとも、「日本人は時間にだらしない」とあきれる欧米人に会ったことは一度もないし、これからも多分ない。

 

2018年に予定時刻より25秒早く出発してしまい、JRがホームページでその粗相を謝罪。
するとあるイギリス人はこんなことが起こるのは日本だけで、そんな日本が大好きだとツイートする。

 

ではここで「明治クイズ」をひとつ。
日本では1872年(明治5年)に初めて鉄道が開通したのだが、その作業を指導したイギリス人で「日本の鉄道の恩人」と呼ばれるこの人物はダレ?

 

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答えは「エドモンド・モレル」。
彼の功績をたたえて横浜のJR桜木町駅の近くには、モレルの碑が鉄道発祥記念碑といっしょに設置されている。
日本人が時間厳守の感覚を身につけた大きな理由にこの鉄道開通がある。

日本で英語を教えていたイギリス人の娘を訪ねて、数年前に母親がイギリスからやってきた。
成田空港から浜松駅まで電車と新幹線を利用してきた母親は娘と会うと、「空港からここまで1分の遅れもなかった!イギリスならニュースになる。これは奇跡よ。」と驚いた。
興奮する母を見て、そのイギリス人は来日したころの自分を思い出し、いまではそれが当然で何とも思わなくなった自分に気づいて、すっかり日本に慣れてしまったと感じたという。

そんな彼女に、日本の鉄道事業はイギリスをモデルにして指導者を招いて行われたこと、日本人の時間厳守の感覚は西洋人をみならったものだと話すと、「マジかっ」と驚いたあと笑ってこう話す。

「いまではすべて逆になった。イギリスの鉄道会社の人間に日本なみの時間厳守の運行を求めたら、『ふざけんな!』と怒ってストライキを起こす。電車が動かなくなるから、自転車で出勤や通学しないといけなくなる。イギリス人は日本人と比べて他人にかける迷惑よりも、自分の権利を優先する傾向があるから、時々そんなことが起こる。」

 

ということで671年に時間が刻まれてからトキは流れて、いま日本人は世界で最も時間厳守な(またはそのゾーンにいる)人たちになった。
これは日本人の長所で、それによって社会は効率的に動いている。
でも、その弊害は多くの日本人も気づいているのでは?
個人的には、3分の遅れで駅員に怒る人を見て心底ウンザリした。
そろそろ日本人は欧米人を参考に、多少の時間の誤差は気にしない、ゆとりある精神や生活習慣を身につける方向へ進んでもいい。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。