今日の一言
「日本人が世界でいちばん清潔な国民であることは異論の余地がない。どんなに貧しい人でも、少なくても日に一度は、町のいたるところにある公衆浴場に通っている。しかも、気候が素晴らしい。(シュリーマン 江戸時代)」「シュリーマン 旅行記 講談社学術文庫」
このシュリーマンって人は、トルコで「トロイの木馬」を発掘した有名人です。
前回のまとめ。
知っている人は、先に進んでください。
戦国時代に日本を訪れた朝鮮人は、「ひらがな」を見て、こう思った。
「日本人は、漢字を使っていない。だから、日本人の文化レベルは低い。」
戦国時代に日本を訪れたヨーロッパ人の宣教師は、「ひらがな」を見て、こう思った。
「日本人は、中国とは違う独自の文字をつくり出している。だから、日本人の文化レベルは高い」
まったく同じものを見ても、その人がもっている価値観や考え方によって、まったく違った感想になる。
外国旅行での「ぼったくり」も、その人の価値観や考え方によって感じ方が変わってくる。本人がぼったくられたと思わなかったら、それはぼったくりではなくなる。
ボクの場合、「平等」の考え方が変わったことで、「ぼったくられた」と感じることが少なくなった。少なくなったことで、旅でのイライラが減って楽しく旅ができるようになった。
ということで、今回と次回は、そんな「物の見方」や「平等感」についての記事になる。
それを、「累進課税」や「人頭税」という言葉を使いながら書いていきたい。
「累進課税」や「人頭税」という言葉は、常識として知っておいてもいいと思う。
前回の記事では、例として、こんなラーメン屋の話をした。
Aラーメン屋は、誰からも一杯800円のお金をとる。
Bラーメン屋では、一杯のラーメンに次の3つの値段がある。
「年収1000万円の人なら1000円」
「年収500万円なら500円」
「年収が200万円以下なら200円」
ラーメン屋Aは、いくらお金を持っていても同じ値段を取りますよ、という「人頭税」と同じ意味での「平等」。
人頭税
「担税能力の差に関係なく、各個人に対して一律に同額を課する租税。(大辞泉)」
ラーメン屋Bは、お金持っていたら多く取りますよ、でも、お金がない人からは少なくとりますよ、という「累進課税」と同じ意味での「平等」。
今回は、ラーメン屋Bで出た「累進課税」の「平等」について。
「ラーメン屋Aみたいに、金持ちや貧しい人から同じ金額を取ることは不平等だ。ラーメン屋Bみたいに、金持ちからは多く、お金がない人からは少なくお金をとることが平等だ!」
という考えで、「負担の平等」を重視して税金をとることを「累進課税」という。
日本の所得税のとり方は、この累進課税になる。
累進課税
「累進税率によって税金を課すること。所得が高ければ高いほど税率が引き上げられる(大辞泉)
くどいかもしれないけど、これは、「稼ぎが低い人からは税金を少なくとる。たくさん稼ぐ人からは多く税金をとる」という考えにもとづくもの。
これは、さっきの人頭税(誰もが同じ金額)とは反対の考えの「平等」の考えになる。
ちなみに、現在の日本の所得税のとり方は、こうなっている。
年収が195万円の人は税率5%だから、約10万円を払う。
年収が4000万円の人は、税率45%だから、1800万円を払う。
これは、控除額を抜いた額(国税庁HP No.2260 所得税の税率より)。
累進課税だと、同じ日本人とはいっても、支払う税金の額は違う。たくさん稼ぐ人は、たくさん税金を払うことになる。
もちろん、高い税金を支払うことで、優遇されたり特別待遇を受けたりすることはない。
高い税金を払っていれば、図書館で専用席があるとか、罪を犯しても捕まらないとか、そんなことはない。
外国なら、こんなことがある。
「金持ち特権」で、罪を犯しても罰せられないというようなことが起こる。
例えば、タイでは、大金持ち一族の男が飲酒運転で、警察官をひき殺したという事件が起きた。でも、その男は刑務所には入らず、今も海外旅行をして人生を楽しんでいる。
詳しくは、このロイターの記事を見て。
「レッドブル創業者孫のひき逃げ、タイの「エリート免責文化」浮き彫り」
高い税金を払っていれば、選挙のときに2回投票できるとか、そんなこともないない。戦前の選挙はそれに近い考えだったけどね。
ということで、高い税金を納めているからといって、特権なんてない。
この累進課税は、お金をたくさん稼ぐ人からは文句があがる。
「自分は、不法なことはしていない。普通の人より一生懸命働いて稼いでも、半分近くを税金で取られていく。これじゃ、仕事のやる気が出んわ」
まあ、気持ちは、分かる。
だからって、パナマに逃げるのはなしでお願いします。
でも、この逆の不満は聞いたことがない。
「自分の稼ぎは少ないけど、たくさん稼いでいる人に多く払わせるのは申し訳ない。自分にも、もっと税金を払わせてほしい」
何て言う、国税庁が泣いて喜びそうな人がいるわけない。
結局、「誰からも同じ金額をとる」という人頭税の考え方も、「稼ぎによって、とる金額が違う」という累進課税の考え方も、同じく「平等」になる。
要は、見方による。
「金額の平等」か「負担の平等」か。
どちらのやり方を当てはめるかは、場面によって違う。
日本だと、レストランで食べたり飲んだり、服を買ったりするときは、「人頭税」の考え方の平等で、誰からも同じ金額をとる。
税金をとるときは、累進課税の考え方で、収入に応じたお金をとる。
これは日本での話で、外国だと変わってくる。
と考えた方がいい。
東南アジア、中東、アフリカでは、服や日用品などの商品を売るときにも、累進課税の考え方をしている。
つまり、金持ちからは、できるだけ多くとろうとする。日本のように、誰に対しても同じ値段で売るのではなくて、外国人に対しては高く売ることが当たり前。
これらの国では、「外国人=金持ち」だから。
でも、海外に行った日本人が、「誰でも同じ金額で売るべき」という日本の常識をもったまま買い物をしようとすると、トラブルになることがある。
続きは、次回で。
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