「日本には『桜前線』という前線があるんですね!」
あるとき、日本に住んでいるイギリス人が驚いたようにそう言っていた。
そういえば、前にテレビCMでもそんなことを言っていた気がする。
海外には温暖前線や寒冷前線はあるけれど、桜前線があるのは日本だけ。
これも1つの文化だ。
「桜前線」という言葉は、1967年(昭和42年)ごろから日本でつかわれるようになったらしい。
日本人は桜が大好きだし、花見ほど日本人の生活にとけこんでいる伝統文化もない。
ボクもその一人で、今週の土曜日に花見をする予定になっている。
けど、かなり高い確率で雨が降るらしい。
せっかく桜は見ごろなのに、雨が降ってはガッカリですわ。
天気予報をうらめしく思っている人は日本中にいるはず。
神様ももう少し気をきかせてほしかった。
日本の桜と花見は昔から外国人のあいだで知られていた。
たとえば、明治時代に日本を旅行したシドモアというアメリカ人女性はこう書いている。
パリのブーローニュの森も、フィレンツェのカッシーネ公園も、ベルリンのティーア・ガルデンも日曜日の花の上野にはかないません
「シドモア日本紀行 (講談社学術文庫)」
日本にいる外国人も花見を楽しみにしている。
フェイスブックでは外国人の知人が、咲きはじめた桜の写真や「今週は花見だぜ!」というメッセージを投稿しているのをよく見かける。
日本人よりも外国人のほうが花見を楽しみにしていると思う。
日本は桜と花見の聖地だから。
友人で花見が好きなアメリカ人がいる。
前に、彼女が花見を好きな理由を聞いて意外に思ったことがある。
「桜を見るのもいいけど、桜の下で酒を飲めるのもいい。ニューヨークでは、公の場でアルコールを飲むことは禁止されてるの。だから日本の花見みたいに、公園で堂々とお酒を飲むなんて絶対にできない」
「ニューヨークでは公園での飲酒が法律によって禁止されている」ということを、彼女の話で初めて知った。
これは厳しく守られているらしい。
その子の友人がビールを持って公園を歩いていただけで、警察に捕まってしまったという。
飲んでいないくて、持っていただけでも警察に捕まるらしい。
「アメリカは飲酒に対して厳しいからね。ひょっとしたら、アメリカのすべての州で、公園で酒を飲むことは禁止されているかもしれない」
そんなことを言っていた。
ちなみにアメリカは飲酒には厳しくても、銃に対してはけっこう寛容というかいい加減。
フロリダ州から来たアメリカ人は、ショットガンを持って街中を歩くことを「まったく問題ない」と言っていた。
他の州はわからないけど。
外国でもきれいな花を見て楽しむことはある。
でもアメリカ人、フィリピン人、タイ人などの外国人がいう花見は日本の花見とはちがう。
外国では散歩をしながら色とりどりの花を鑑賞することがほとんどで、「酒を飲む」ということはしない。
ニューヨークのように法律で禁止されている以前に、外国では、花を観賞することと飲酒という行為はまったくつながらないという。
だから、「桜を見ながら酒やビールを飲む」という花見は日本独自の文化だ。
日本でも花を見ながら酒を飲むというのは桜だけで、他の花ではこんなことはしないだろう。
日本人は秋の紅葉も大好きだけど、そのときには、花見のようにビニールシートをしいて酒を飲むようなことはしない。
「桜と酒を同時に楽しむ」という伝統文化が日本で生まれた背景には中国文化の影響がある。
これに日本の「花鎮め」が加わった。
鎮花祭
平安時代以降、神祇官で、陰暦3月の桜の花の散るころ特に活動するといわれる疫病神をはらうため、大和の大神(おおみわ)・狭井(さい)二社の神を祭った行事。
「デジタル大辞泉の解説」
「はなしずめのまつり」とも呼ばれるこの行事は、いまでは簡略化されて神社で行われることもある。
これが中国文化の影響をうけて、「桜と酒を楽しむ」という今の花見のスタイルができて貴族のあいだで流行ったという。
これとは別で、おもしろいと思ったことがある。
昔の日本人は、花見には「健康増進」の効果もあると考えていたらしい。
人々が桜の木の下に長い間座っていることで、桜の「花粉の精気を吸収する健康法になる」という意味もあったという。
日本の花見文化には中国の影響があるらしい。
では今の中国でも、「花と酒を楽しむ」という文化はあるのだろうか?
読売新聞の「深読みチャンネル」を見るかぎりでは、そうではなさそうだ。
中国人にとって、日本のイメージといえば、第一に桜、そして富士山、続いて温泉、ラーメンの順番でしょう。一番の人気は何といっても、桜です。
(中略)日本人のように、桜の木の下でお酒を飲みたいとは思わないけれど、桜をバックにたくさん写真を撮って、友だちに自慢したかったのですが
やっぱり花見は日本独自の文化だ。
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