インドのタージマハルの外国人料金「38倍」に驚く日本人(ボクら) ①

 

はじめの一言

「私は重い心をもって日本から去ることであろう。私はこの地の人間が好きである。私は彼らから受けたすべてのものと、また彼らの間で送った二十有年―これけだし決して軽々にみるべからざるものである!―に亙る殆ど幸福なる生活とに対して彼らに感謝している。(ケーベル 明治時代)」
「日本絶賛語録 小学館」

 

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今回の内容

・はじめに言葉あり
・外国人料金がインド人の「38倍」って!

 

・はじめに言葉あり

タージマハルといえば、世界でもっとも有名なお墓だ。
日本でもっとも有名なインドの建築物だろう。
インド旅行でここは外せない。

17世紀に、フランス人の旅行家ベルニエがインドを訪れている。
彼はエジプトのピラミッドには「ぶざまな石の塊や石の山積み」と言ったけれど、タージマハルには「世界の驚異に数えられるにふさわしい墓」「これを世界の七不思議の中に入れるべきだと思います」と絶賛している。

 

ムガル帝国皇帝シャー・ジャハーンは、最愛の妻ムムターズマハルが亡くなる寸前に、こんなことを言ったという。

「お前にかえてどんな皇妃も迎えはしないし、お前の他にどんな女も私の心に住ませはしない。また、この世でいちばん美しい棺のなかにお前の亡骸をいれ、後々の世まで誰ひとりいまだ他で目にしたことがないような大理石の美しい墓廟の中に葬ってやろう。

(タージ・マハル物語 渡辺建夫)」

このときムムターズ・マハルは、シャー・ジャハーンの右の眉が上がったことを見届けたのかは知らない。

とにかく、この妻への言葉から「世界で最も大きく美しい墓」がつくられることになった。

 

 

でも皇帝は妻に誓うだけでいい。
皇帝の誓いを実現させたのは、2万人のインド人と22年という長い年月だ。

翌年一六三二年、かつてない壮大な墓廟の造営に着手する。常時、工匠、職人、工夫らが二万人投じられ、完成までに二十二年の歳月が費やされた。こうして出来あがったのが、’大理石の夢’と形容されるタージマハルである。

(タージマハル物語 渡辺建夫)

 

この1つのお墓をつくるために、一体、どれだけのインド人が亡くなったのか?
このために、どれだけのお金がかかったのか?

この建築にお金を使い過ぎたことが、その後、ムガル帝国が弱体化した原因の1つにもなっている。
中国(唐)の楊貴妃(ようきひ)のように、ムムターズマハルもまた「傾国の美女」だった。

 

インドで世界最高のお墓がつくられているころ、日本でも「最高のお墓」がつくられていた。
徳川家康の墓である日光東照宮が建てられたのも、ちょうどこのころ。

現在のおもな社殿群は、三代将軍家光公によって、寛永(かんえい)13年(1636)に造替されたものです。

(日光東照のホームページから)

 

・外国人料金がインド人の「38倍」って!

タージマハルは、インドのアグラーという都市にある。

アグラーはムガル時代に首都だったところ。
日本でいう京都のような古都だけど、街の雰囲気はまったくちがう。

アグラーには京都のような静けさや安らぎはなかった。
街のそこら中に野良牛が歩いている。
牛のフンの香ばしい臭いがただよい、車のクラクションがやかましい。
街を散策していると頭が痛くなってきた。

でもこれは、ボクが行ったときのアグラーの様子。
今のアグラーはどうだろう?
あんまり、変わってないと思うけど。

 

そのアグラーでタージマハル観光を終えて、日本人旅行者3人とご飯を食べていたときのこと。
そのうちの一人がこんなことを言う。

「そにしても、38倍は高すぎる!ぼったくりでしょ」

この意見にボクも賛成。

「そうそう、あれはありえない。ぼったくりすぎ。インドでは政府があんな料金設定をするから、『金持ち外国人からは多く取るのが当たり前』っていう考えが広まるんだよ」

ここでいう38倍というのは、アグラーの外国人料金とインド人料金との差。

2000年より外国人の料金は750ルピー(2011年9月のレートで約1150円)に値上げされた。インド人料金は20インドルピー(約30円)と低額に据え置かれている。

(ウィキペディア)

外国人の入場料が1150円で、インド人の入場料は30円。
その差はなんど38.3倍。

ボクがタージマハルに入ったときも、外国人はインド人の38倍ぐらいのお金を払わないといけなかった。
外国人1人の料金で、37人のインド人が入ることができる!

これは日本ではありえない。
金閣寺の拝観料が日本人は400円で、外国人が15200円だったら?
こんなことは考えられない。
さすが、日本の非常識が常識のインド。

 

 

でもここで、1人異を唱える旅行者がいた。
「そうですか?」と、ボクらに疑問を投げかける。
若造のバックパッカーのくせに。

「1150円なら、日本だったらランチ1回分と同じじゃないですか」

この言葉に先ほどのバックパッカーが突っこむ。

「それは日本の感覚だろ?ここはインドなんだから、インドの常識やインド人の金銭感覚で考えなきゃ!」

ボクも彼と同じ意見。

「やっぱり、『郷に入らば郷に従え』なんだから、『日本では』じゃなくて、インドの価値観から考えないと」

みたいなことを言う。

郷に入らば郷に従え

その土地やその環境に入ったならば、そこでの習慣ややり方に従うのが賢い生き方である、などの意味の表現。(Weblio辞書)

 

「郷に入らば郷に従え」とか「日本の常識は世界の非常識」とかいった言葉は、ボクが会った日本人の旅行者からよく聞いた。
「外国に行ったら、日本の常識じゃなくてその国の常識で考えなくちゃいけない」というのは旅の鉄則だと思う。

東(中国)に「郷に入らば郷に従え」という言葉があれば、西(ヨーロッパ)には「In Rome, do as the Romans do(ローマでは、ローマ人のように行動しろ)」という言葉がある。

 

・・・そんなことがあってから、15年の月日がたった。
今、もし、あの若者に会ったら心から謝りたい。

ボクともう1人のバックパッカーよりも、彼が言っていることの方が正しかったから。

「郷に入らば郷に従え」でインドの常識やインド人の感覚からしたら、タージマハールの入場料はぼったくりではない。「1150円なんて、ランチ1回分じゃん」と言っていた彼のほうが、インド人の考え方に近い。

続く。

 

 

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ABOUTこの記事をかいた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。