はじめの一言
「日本人は忘恩だ不信だと言って往々非難する者がある。これ私が私の日本においては経験しなかったところである。私はむしろその反対を経験した。(ケーベル 明治時代)」
「日本絶賛語録 小学館」
今回の内容
・「高い!」と思う前に、インドの社会を知らなかった。
・この超格差社会!
・「まあ、こんなもんかな?」の料金設定
・「高い!」の前にインドの社会を知らなかった。
友だちにタージマハルの入場料のこと話すと、みんな驚く。
ボクのまわりには、インドに行った人がほとんどいない。
タージマハルをテレビか写真でしか見たことがない。
そんな日本人だったら、「タージマハルの入場料は1150円なんだぜ」と聞いても驚くことはない。
タージマハルの入場料なんて何と比べていいか分からないだろうし、高いのか低いのかもたぶん分からない。
日本の物価からしたら、入場料が1150円なら高くはない。
「でもな、外国人の入場料って、インド人の38倍なんだぜ」とボクが言うと、みんな「え?」という顔をして驚く。
「外国人はインド人の38倍って、ぼったくりじゃん」
そんな反応が多い。
「でも、それがインドなんだよ」
なんて、ため息をついてみたりする。
多くの日本人はそんな反応だと思う。
でも、アグラーで出会ったフランス人は違った。
「タージマハルの外国人料金が38倍って信じられないよね?」
というノリでボクが話しかけると、「そうか?」と首をひねる。
「そう?タージマハルには、それだけの価値があったけどな」
この反応は日本人旅行者とは違う。
冷静な反応で、「あれ?」と肩透かしをくらった感じ。
間接的に「おまえには、あの価値が分からないのか?」と言われたような気もする。
そのフランス人はインドの格差の話をしてくる。
「お前はインドの格差を知ってるか?金持ちと貧乏な人の差ってのは、とんでもないんだぜ?だから、金持ちの外国人から多く金を取るのは仕方がないだろ」
そう言われたら否定はできん。
「高い!」って言う前に、ボクがインドの社会のことを知らなかったのは確か。
当たり前のことだけど、タージマハルを維持するためにはとんでもない費用がかかる。
それでも崩壊の危機にひんしている。
有名なタージマハルがわずか五〇年で破壊されかねないと科学者たちはいっている
「インド入門 マノイ・ジョージ」
もしタージマハルが破壊されてしまったら?
インド人にとっては、考えたくもない悪夢のはず。
それを防ぐためにはどうしてもお金がかかる。
だからタージマハルの入場料を取る必要が出てくる。
ここまでは、ボクも分かる。
問題は、なんで外国人はインド人の38倍なのか?
何で、こんなありえない料金設定をするのか?
・この、超格差社会!
それを考えるには、フランス人が言っていたように、インドがどんな国かを知る必要がある。
インドは日本とはいろいろな面でちがう。
ちがいすぎる。
たしかなことは、インドは日本に比べて「超格差社会」ということ。
前にも記事で書いたことがあるけど、もう一回。
インドは2007年の時点で税金を払っているのは、人口の3%だけ。
残りの97%のインド国民は税金を払っていない。
インドの税法では、税金義務を負うのは、年間11万ルピー(2007年JETRO資料)、約33万円以上の人々である。現在の納税者数は、全人口に対し約3%。率は増加傾向にあるものの、わずかの人々に集中する、超格差社会である
「日本を救うインド人 島田卓」
日本ではどうか?
「日経ビジネス」によれば、2010年の納税者は5500万人で、国民の44%の人が税金を払っていることになる。
税金を払っているのが3%の国と44%の国。
これだけでも、インドは日本とはまったくちがう国だと分かる。
さらにインドの格差社会は、列車の料金からも分かる。
基本的には一等と二等の二等級制ではあるが、その他にも寝台車か座席車か、エアコンの有無などで差があり、実質的は5~8種位のクラスがある。同じ区間でも、最下等と最上等では15~40倍くらいの運賃格差があり、インドの階級社会を物語っているといえよう。
「ウィキペディア」
「最下等と最上等では15~40倍くらいの運賃格差があり」って、いくらなんでも差があり過ぎる。
日本の場合、静岡から東京まで普通列車で行けば3700円で、新幹線のグリーン車を使えば9300円になる。
電車で東京まで行った場合、9300円が最高でそれ以上は出したくても出せない。
つまり、「最下等」なら3700円で「最上等」なら9300円になる。
「最下等」と「最上等」の差は、日本では2.5倍しかない。
「15~40倍くらいの運賃格差」というのは、日本の社会では絶対に考えられない。
仮に、40倍というインドの運賃格差をそのまま日本に当てはめたらどうなるか?
静岡~東京間の最低運賃が3700円のところ、最高運賃は148000円になってしまう。
14万8千円なら、外国に飛行機で行くことができる。
・「まあ、こんなもんかな?」の料金設定
インドの鉄道は、JRみたいに民間企業ではない。
だからこの鉄道運賃を設定したのは、インドの国(政府)だろう。
この運賃を設定するときには、外国人のことは考えていなかっただろう。
鉄道は公共の乗り物だから、インド国内にいるインド人のことを考えて鉄道の運賃を決めたはず。
カースト制度も関係しているとは思うけど。
「15~40倍くらいの運賃格差」というのは日本ではあり得ない。
でもインドの国鉄は、国内の金持ちと貧しい人の所得の差を考えた場合、「これぐらいの差はあっていい」といいことで、そう判断したと思う。
誰もが使う鉄道の運賃だから、その差額もインド社会の常識の範囲内のものだろう。
インド人の常識外の運賃設定だったら、インド人から文句が殺到するはず。
ただ、この「最下等と最上等では15~40倍くらいの運賃格差」というウィキペディアの記述がどこまで正しいのかは分からない。
友だちのインド人に話を聞いたら、「え?そんなにもちがうの?」と驚いていた。
「そのウィキペディアに書いてあるものが、いつの時代のどの路線のものか知らないけど、ボクが使う路線なら運賃の差は最高でも15倍ぐらいじゃないかなあ」
と言っていた。
まあ、15倍でも日本じゃありえない差だけど。
インドとはどんな国なのか?
・人口の3%しか税金を払っていない国
・鉄道運賃が最高で40倍の差がある国
そんな超格差社会がインドという国。
こういうことが分かってくると、タージマハルの外国人料金についても見方が変わってくる。
以前は、インド人の38倍ということに「高すぎる!」とか「ぼったくりじゃねえか!」なんて思っていた。
日本の常識から考えたらこれは当然だと思う。
けど、今はちがう。
「郷に入らば、郷に従え」で、インド社会の格差から考えたら38倍の差というのも、常識の範囲内なんだと思うようになった。
続く。
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