中国の三詩人:日本で人気の白居易、詩仙の李白、詩聖の杜甫

10年以上前に中国を旅行した際、古都・洛陽に足を運んだ。

そこにある世界遺産の龍門石窟を見学した後、日本語ガイドと話をしながら歩いていると、ガイドが立ち止まって「この墓の人物を知っていますか?」と質問してきた。

 

 

墓の形を見て、埋葬された人物なんてわかるわけがない。でも、「白居易」という文字を見てピンときた。

白居易(772~846)は中国(唐)の超有名な詩人で、平安時代の日本人も彼の作品に刺激を受けた。
清少納言の『枕草子』や紫式部の『源氏物語』にも、白居易の詩の影響がみられるという。

彼の感性は日本人と合っていたらしい。
白居易の全集『白氏文集』は平安時代以降も読み継がれ、日本文学の発展に貢献した。

白居易の詩の中で特に有名なのが長恨歌(ちょうごんか)だ。
これは唐の皇帝・玄宗(げんそう)と妻・楊貴妃(ようきひ)の愛と悲しみをつづった漢詩で、源氏物語にもこの詩が引用されている。

長恨歌の一節に愛する妻が部下に殺され、玄宗が悲しむ場面がある。

「花鈿委地無人收、翠翹金雀玉搔頭」
「君王掩面救不得、回看血涙相和流」

花のかんざしは地に落ちて拾い上げるものもなく、かわせみや金の雀、宝玉の髪飾りも同様であった。
王は顔を覆うばかりで助けることもできず、振り返る目からは血の涙が流れた。

こうした表現が平安時代の日本人の心に刺さったと思われる。

 

白居易

 

白居易は韓国でも有名だ。
「白」という姓をもつ韓国の人たちが「自分たちの先祖は白居易だ」と考えて、白居易の墓にこの記念碑を建てたという。

 

白居易の詩が国境を越えて、さまざまな人の心をつかんだ理由は「分かりやすさ」にある。
彼は読み手のことをよく考えて詩を作っていたので、誰が聞いてもその意味が理解できたという。

それで、白居易は詩を作ると、文字の読めないお年寄りにそれを聞かせて、理解できなかった部分は簡単な表現に修正したという言い伝えがある。

白居易の詩は中国のエリート層だけではなく、教育を受けていない庶民にも愛唱されていた。
簡単な言葉で深いことを伝えられるのが賢人だ。
これはどの時代にも通じるゴールデンルール。

 

せっかくなので「中国の三詩人」を覚えておこう。
彼のほかに「詩仙」の李白と「詩聖」の杜甫が加わり、こう呼ばれている。
世界史を学んでいる人には必須の知識だ。

 

杜甫(712~770)

 

杜甫は「時代ガチャ」にはずれた人だ。
彼が生きた唐中期には「安史の乱」という大規模な内乱が発生し、国土は焦土となり、戦乱と飢饉などによって1300万人から3600万人が死亡したとされる。

杜甫は苦労して手に入れた官職を捨て、妻と子と流浪の生活をおくった。
※流浪とは、一つのところに定住しないでさまよい歩くこと。

彼の代表作は、安史の乱で荒廃した都・長安を見て詠んだ『春望』だろう。

國破山河在
(國破れて 山河在り:国は打ち砕かれても山や川はもとのまま)
城春草木深
(城春にして 草木深し:町は春になり草木が茂る)

『春望』は日本人にもっとも愛された漢詩の一つで、「国破れて山河あり」というフレーズを聞いたことのある人も多いのでは。

 

李白

 

多くのすばらしい作品をつくり出し、「詩聖」と呼ばれたのが杜甫で、「詩仙」と呼ばれたのが李白だ。

彼も唐中期の詩人で、皇帝・玄宗につかえたこともあったが、流浪などをして自由に生きることが多かった。
李白の代表作で、日本でも有名な作品に『静夜思』や『早発白帝城』がある。

『静夜思』の「月を見て故郷を思う」という感性は、現代の中国人にも通じる。
日本に住んでいる友人の中国人は月を見ると、「遠く離れたところにいる親もこの月を見ているのだろうか」とふと思うという。

 

白居易・杜甫・李白の作品は、中国詩の中でも最高峰にある。
この「中国の三詩人」に共通しているのが不遇。
杜甫と李白は流浪の生活をおくり、白居易は左遷されている。

安定した生活をしていたら、偉大な芸術作品は生まれなかったのかもしれない。

 

おまけ

中国の鳳凰という街

 

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この記事を書いた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。
また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。

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