外国人との共生の課題って? 浜松市の理想は高く、市民の意識は低く

 

はじめの一言

「日本の芸術を研究すれば、誰でももっと陽気にもっと幸福にならずにはいられないはずだ。われわれは因襲的な世界で教育を受け仕事をしているけれども、もっと自然に帰らなければいけないのだ(ゴッホ)」

「日本絶賛語録 小学館」

 

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今回の内容

・多文化共生社会の問題って?
・市は怒ってませんか?
・敵は不公平感にあり
・頑張れ浜松市!

 

・多文化共生社会の問題って?

今、日本に住む外国人が増えていて「多文化共生社会」の都市が次々も生まれている。浜松市は、全国的にも外国人が住む割合が多く、「多文化共生社会」になっている。

多文化共生社会には、良いところがあれば問題もある。
今の浜松市では、税金をしっかり払う外国人の数が少ないことが問題になっている。

国籍や民族、文化の違いを豊かさとして生かし、すべての人が互いに認め合い、人権が尊重され、自立した市民として共に暮らすことができる「多文化共生社会」の実現をめざします。

 

これは川崎市のHPにある言葉。
こうした多文化共生社会では、同じ都市に住んでいる日本人が「外国人は税金を払っている人が少ない」という不公平感をもってしまうのはマズイ。
だから、税金を払う外国人の数を増やしいくことが大切になる。

 

・市は怒ってませんか?

もちろん、浜松市はこのことをよく分かっているから、2008年(ごろ)の「外国人の収納対策」という報告書では、この「外国人の未納率の高さ」の問題を下のように指摘している。
指摘というか、この文書からは、作成者の役人の「怒り」が感じられて、ちょっと驚いた。

ちなみに、2008年の外国人の収納率や滞納率は、前回の記事の2013年のものとほとんど変わらない。

外国人といえども職場である会社、地域自治会、地元行政サービスの提供を受けている。制度への不慣れはあると思われるが、不慣れへの対応は既に行われている通訳の配置、生活全般に関するパンフレットの配布等、各種サービス提供により補うことができる。

真面目に納税している者との公平性を保つためにも、また所得者としての義務、サービス受給者としての責任を本人が自覚するためにも、勿論行政収入の確保のためにも、積極的に収納を行っていく必要がある。それには、外国人自身の納税意識の向上が最も必要であると思われる。

(浜松市HP 外国人の収納対策

 

「外国人といえども」「真面目に納税している者との公平性を保つためにも」という言葉は、役所の報告書ではあまり見られない表現だと思う。
でも、言っていることは事実で、これは市民感情にも合っている。

 

 

・敵は不公平感にあり

誰だって好きで税金を払っているわけではない。
けど、税金を払わなかったら、障害者や老人など支えが必要な人が困ってしまう。
だから、文句を言いながらも払っている。

税金を払うことは理解できるし、我慢もできる。
だけど、税金を払わない人がいるという不公平な状態はマズイ。
外国人を好きでも嫌いでもなかった日本人が、このことから、「外国人嫌い」になってしまう可能性がある。
これは非常によろしくない。

「国籍や民族、文化、言葉などのちがいを認め合い、支えあう関係を持って暮らしていく」という理想を実現するためには、みんなが自分の負担に応じて税金を払う必要がある。

これには日本人も外国人も関係ない。
「税金を払っていない」ということであれば、日本人でも許されるはずがないし、納税をしている外国人なら、そんな日本人に怒ってもいい。

 

「税金を払っていない外国人が多い」ということで、一番の被害を受けるのは、真面目に税金を納めている外国人だ。
聞いたことはないけど、ボクの周りの外国人は、しっかり税金を納めていると思う。だけど、未納税の外国人がいるせいで、「やっぱり、外国人は・・・」と一緒にされたら、彼らが気の毒になる。

 

ボクの知り合いの外国人で、自分で仕事をしていて、文句を言いながらもかなりの額の税金を市に納めている人がいる。
こうした高額納税をしている外国人こそが、「税金を納めない外国人」を腹立たしく思っているんじゃないのかな?

もちろん、ここで言っているのは、税金を払う能力があるのに払わない人のことで、税金を払うことができない人のことではない。
理屈の上では、税金を払わない人の数を減らした分だけ、税金を払えない人たちを支えることができる。

 

 

・頑張れ浜松市!

「外国人は税金を払っていない人が多い」という不満をもったままで、「共生社会では、互いに認め合うことが大事です」なんて役所や政治家の言葉を聞いても、一般市民には響かない。

そのことは浜松市も分かっているから、外国人に税金を払ってもらうように努力している。そのために一番必要なこととして、先ほどの報告では「外国人自身の納税意識の向上」をあげていた。

では浜松市は、外国人の「税金を払おう!」という意識を高めるために、何をしたのか?
平成23年には、こんなことをしている。

外国人に対する納税意識の高揚を図るため、2種類のポスターを作成し、国際交流協会や遠鉄電車主要9駅に掲出。

収納率向上・滞納額削減対策

 

正直言って、これがどのていど役に立っているかは疑問。
税金を払っていない外国人が、駅でポスターを見て「そうだ、税金を払わなきゃ!」という気持ちになってくれたらいいけど、現実的には難しい。

でも、これが市としてできる限界なんだと思う。
こうして、粘り強く訴えていしかないんだろう。

 

多文化共生社会では国籍や民族、文化、言葉などのちがいを認めたり、乗り越えたりすることが大事になる。
そのためには、外国人の納税者を増やしていって、他の日本人市民の不公平感を減らしていくことが大切。

 

役所や政治家が使う言葉がより美しくなっても、市民の不満がより深くなっていったら、共生はできない。

 

「互いに違いを認め合う多文化共生社会」のためには、「外国人の納税率の向上」という事実でもって「日本人も外国人も関係なく、みんなで市を支えている」という意識を育てることが有効だと思う。

 

浜松市ではこんな「浜松多文化共生都市ビジョン」を打ち出している。

日本人市民・外国人市民を問わず、誰もが自分の持つ能力を発揮でき、その多様な文化を織り込んで新たな価値を創出する地域を目指します。

「浜松市多文化共生都市ビジョン」

 

市は「誰もが自分の持つ能力を発揮でき」「新たな価値を創出する地域を目指します」と、高らかに日本全国に宣言している。
でもボクの周りでは「もう、浜松市に外国人は増えてほしくないよね」という声が多い。
正直、このギャップが不安になることがある。

浜松市の場合、外国人に係る収納率58%をいきなり市平均の92%にすることはできないだろうけど、少しずつ増やしていってほしい。
理想に向かって具体的、現実的に動いてほしいなあ、と一市民として思う。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。