前回は、アメリカで1925年におこなわれた「猿裁判」について書いた。
「人は猿から進化した」という進化論の考えは、「人は神からつくられた」というキリスト教の教えと思いきりぶつかってしまう。
「進化論が正しい」と主張することは、「人が神の教えを否定する」「神への挑戦だ」と思われても仕方がない。
そういうことで、アメリカでは公立学校で教師が進化論を教えることが法律で禁止されていた。
でもスコーブスという教師がその法を破って、学校で進化論を教えてしまった。
それに怒った熱心なキリスト教徒がスコーブスをうったえて「猿裁判」がはじまった。
くわしくは前回を見てください。
「進化論と学校教育」というテーマは、現在でも多くのアメリカ人が関心をもっている。
「進化論を学校で教えていいのか?」
「進化論を学校でどのように教えるべきか?」
アメリカでは今でもそんなことが問題になる。
1982年にはアーカンソー州で、1987年にはルイジアナ州で裁判沙汰になった。
2005年には、大統領報道官が「進化論を学校教育から外そうとも、創造論を教えようとも考えていない」と話している。
現在のアメリカ人は進化論について、どう思っているのか?
このグラフを見るとそのことが見えてくる。
これは世界の国で、進化論がどのていど受け入れられているのかをあらわしたもの(2014年)。
「Public acceptance of evolution」から。
青は進化論を事実だと考えている人。
黄色は分からない。
赤は進化論を事実ではないと考えている人。
1920年代のアメリカのように、学校で進化論を教えることを禁止したトルコはこの中で最下位になっている。
アメリカの順位も下から2番目だから、かなり低い。
世界的に見れば、アメリカは進化論を否定的に考えている人の割合が多い。
日本は上から5位だから、進化論は広く受け入れられていることが分かる。
また、日経ビジネスオンラインの記事(2015年11月25日)には、今でもアメリカ人の40%はキリスト教の創造論を信じていると書いてある。
多くの日本人にとって、「エッいまだに?」と驚いてしまうことが米国で続いている。米市民の10人中4人が、人間が神によって創造されたといまだに信じているのだ。いや、ようやく10人中6人が「進化論」を信じるようになったと言い換えた方がいいかもしれない
アメリカは広い。
カリフォルニア州だけで日本とほぼ同じ大きさがある。
「アメリカでは」と一言でいっても、アメリカの南北で人びとの考え方が大きく違っている。
アメリカ南部は「バイブル・ベルト(聖書地帯)」と呼ばれていて、キリスト教を深く信じている人が多くいる。
赤いところがバイブル・ベルト(ウィキペディアから)
アメリカの北部、ニューヨークに住んでいるアメリカ人がこんなことを言っていた。
「ニューヨークでは、『わたしは進化論が正しいと思う』とまわりの人に言う。でも、アメリカ南部に住んでいるおじいちゃんには『進化論は間違っている。キリスト教の創造論が正しい』と言っている」
ニューヨークでは自由にものを言うことができる。
でも、アメリカの南部では進化論を否定する人が多いため、「進化論は正しい」なんて簡単に言える空気がないらしい。
また、そのアメリカ人はメールにこんなことを書いている。
In general, the more rural an area is, the more religious they are. So in our case, the south of the US is more religious
一般的に、地方に行けば行くほど人びとの宗教心は高くなる。
だからアメリカの場合は、南部に熱心なキリスト教徒がたくさんいるのだという。
進化論を否定する人の割合も、アメリカ北部では低いけど南部では高くなる。
アメリカ人と進化論の話をするときは、出身地を聞いてからにしたほうがいいかもしれない。
あるアメリカ人がSNSに投稿したもの。
そのアメリカ人は寝る前に聖書を読む時間をとても大切にしている。
そんなアメリカ人はたくさんいる。
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