まあはインドの南、ケララ州を確認しておこう。
この地図だと九州の横にケララ(ケーララ)州がありますよ。
さあケララ州を確認したあとは、ケララの蛇使いVava Sureshさんがキング・コブラを捕まえるところを見てみよう。
当たり前のことだけど、コブラはとても危険な蛇だ。
もしコブラにかまれると?
症状として「しびれ」で体が動けなくなり、そして呼吸困難に陥り、死亡率は極めて高い!
人間でもキングコブラに咬まれて助かったのは世界で1例のみでフランスのパスツール研究所での出来事。
インドから遠く離れた日本で動画を見ただけでも、背筋が寒くなってしまう。
道を歩いていてこんなものが出てきたら、一生のトラウマになる。
ヘビが怖いのはインド人も同じ。
ヘビへの恐怖が「ナーガ」という蛇の神を生んだという。
今回はそのヒンドゥー教の神・ナーガについて説明していきたい。
インドにカジュラホーという観光地がある。
ここでインド人のガイドといろいろな話をしているときに、こんな話題になった。
「なんで古代のインド人は、ナーガという蛇神を創造したのか?」
以下は、このガイドから聞いた話。
昔からインド人にとって、もっとも恐ろしい動物は蛇だった。
ゾウやトラも恐ろしい動物だけど、人間が住んでいる場所とそうした動物が住んでいる場所は基本的に離れている。
ゾウやトラに襲われることはあるけれど、日常的に出合うことはない。
でも蛇は違う。
蛇はそこら中にいる。
*インドの蛇は冬眠なんてしないのかも。
現在のインドでも蛇はよく出てくるし、家の中に入っていることもある。
数百年前、千年以上前のインドになると、もっとひどい。
昔のインドには、人間と蛇が住んでいるところに境い目なんてまったくない。
蛇は人間にとって本当に身近な生物で、人と蛇がいっしょに生活しているような状態だったらしい。
これは日本に住んでいるフランス人がSNSに投稿していた写真。
このぐらいの蛇でも、突然出てきたらかなり驚く。
数百年前といったら、電気もない。
真っ暗な家の中に蛇が入って来たら?
想像しただけで気分が悪くなる。
もしそれがコブラのような毒蛇で、それにかまれしまったら?
苦しみぬいて死んでしまう。
蛇の毒で亡くなる人を見たら、蛇への恐怖心はますます大きくなる。
蛇は自分の近いところで、たくさん生息している。
どこでどんな蛇と遭遇するかなんて、だれも分からない。
自分や家族のだれかが突然、毒蛇にかまれて死んでしまうかもしれない。
2017年の今でも、こんなことがあるぐらいだから。
*ネパールはインドの隣の国。
AFPの記事(2017年07月10日)から。
AFPの取材に、事件が起きた地元首長は、この少女が毒蛇に2回かまれたことを明らかにした。少女は蛇にかまれてから7時間後に死亡した。治療の遅れが原因という。
地元メディアは、少女の家族が治療のために向かったのは、病院ではなく、呪術師のところだったと伝えている。
こうした蛇の恐怖から逃れるために、古代のインド人は蛇を神格化して「ナーガ」という蛇神を創造したという。
ナーガ (नाग, Nāga) は、インド神話に起源を持つ、蛇の精霊あるいは蛇神のことである。
「ウィキペディア」
蛇を英語で「snake(スネーク)」という。
このスネークという英語とナーガという言葉にはつながりがある、という説もある。
たしかにその可能性はある。
インドの言葉と英語はつながっている。
たとえば、英語の「ignite(イグナイト:火をつける)」とインドの火の神「アグニ」は語源が同じだ。
でも、「それはいくらなんでも」という説もある。
「日本語の『長い』という言葉は、『ナーガ』からきた」という文を見たことがあるけど、これはさすがに違うだろう。
インドの細密画に描かれたナーガ(ウィキペディアから)
ガイドの話を続ける。
蛇はどこから現れるのか?
蛇は地面の中にいて地上に出てくることから、古代のインド人は地下に「蛇の世界」があると考えた。
人間の世界は王(ラジャ)が支配している。
古代インドの人たちは、同じような世界が地下にもあると想像した。
「蛇の世界にも蛇の王(ラジャ)がいて、その蛇王がその他の蛇を支配している」と信じるようになった。
蛇の王とはどんな姿をしているのか?
「それはきっと、もっとも恐ろしい蛇のコブラに違いない!」
そう考えたことで、蛇の神ナーガはコブラと同一視されるようになる。
「蛇にかまれて死にたくない!」!という強い思いから、蛇神ナーガに「蛇がわたしをかまないようにしてください」と必死に祈りをささげていた。
古代のインド人にとって、蛇から身を守る方法は蛇神ナーガにお願いすることだったという。
これはインド人ガイドから聞いた話だから、100%正確なのかは分からない。
インドにはこんな説もある、という参考ぐらいにしてほしい。
以上の話がインド人ガイドの説明。
だけどナーガを辞書で調べてみると、ガイドの話と重なる部分も多い。
ナーガ
Nāgaナーガ,すなわちへび族はパーターラと呼ばれる地底界に住むとされる。バースキその他の竜王がその世界を統治している。竜王たちは巨大で強力で猛毒をもち,頸部に大きな傘状のふくらみを有する。竜王の観念はおそらくキング・コブラの形状から生れたものであろう。
「ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説」
ここに出てくる竜王は、ガイドの言う「蛇の王(ラジャ)」のことだろう。
インドには、「蛇の街(ナーグプル)」という地名がある。
「ナーガ」+「プル(都市)」で、「ナーグプル(蛇の都市)」という意味になる。
ちなみに「シンガポール」は、「ライオンの街」という意味になる。
ポールとプルは同じインドの言葉。
ナーグプルはこの地図だと中央のあたりにある。
この神様はシヴァという破壊神。
日本に来たら、なぜか大黒様になってしまった。
シヴァの右手のところにコブラが見える。
これもナーガだ。
シヴァが敵とたたかう時、ナーガもシヴァと共にたたかう。
ナーガはシヴァにとって、頼りになる味方であり武器でもある。
シヴァの腰帯として行動を共にするようになる。悪魔との数々の戦いにおいて、シヴァをサポートする存在である。ナーガを王朝の祖先とする物語も多く、現在でも南インドでは人々の信仰の対象になっているのだ。
「インドの神々 (石黒直樹)」
もしナーガが味方になって、敵とたたかってくれたら?
これ以上ないほど心強い。
記事のはじめの動画を見ると、本当にそう思う。
おまけ
コブラと蛇使い。
このコブラは毒を抜いている。
だからかまれても、ひどく痛いけど死ぬことはない。
コブラよりも、こんなコブラを持ち歩いて勝手にショーを始めるほうが恐ろしいかも。
ところでこのコブラ、じつは蛇使いのフエの音が聞こえていないということをご存知だろうか?
ナショナルジオグラフィックにこう書いてある。
キングコブラは南アジアのヘビ使いが好んで使うヘビとしても知られている。
聴覚はあるものの、実際には周囲の音が聞こえているわけではなく、音の代わりに地面の振動を感じ取っている。ヘビ使いは笛の音ではなく笛の形や動きでコブラを操っているのだ。
おまけのおまけ
先ほど、フランス人のこんな写真をのせた。
この写真に彼の友人のフランス人がこんなコメントをしている。
Bon voyage Mr. Serpent
「ヘビさん良い旅を」
「ボン・ボヤージュ(良い旅を)」という言葉は知っていた。
でも、フランス人が使う本場の「ボン・ボヤージュ」を見たのはこれが初めて。
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