前に、中国の宗教である道教の神・媽祖(まそ)について記事を書いた。
媽祖信仰は日本にもある。
横浜の中華街には媽祖の大きなお寺があるし、長崎では媽祖の祭りがおこなわれている。
台湾や香港はもちろん、海外にも媽祖のお寺はたくさんある。
いつかどこかで媽祖を見るかもしれない。
そんな媽祖と道教のことを書いていて、道鏡とキリスト教の違いについて思ったことがある。
なので今回は、神道にもふれながらその違いについて書いていきたい。
これが前に書いた記事。
横浜や台湾で有名。知っておきたい道教の神・媽祖とはどんな神様?
媽祖(まそ)
まずは道教・神道・キリスト教について簡単に確認しておこう。
三国志が好きな人なら、五斗米道が頭に浮かぶかもしれない。
あれが道教になる。
道教
中国の宗教。神仙思想・道家思想・呪術が一つにまとまり、さらに仏教を参考にして成立。
「世界史用語集(山川出版)」
この道教でとても人気がある神様が、先ほどの媽祖(まそ)。
続いて、神道とは?
神道
日本の民族宗教。
自然信仰に発し、8世紀頃までは氏神の祭祀を中心に展開したが、律令国家で神社を中心に再編成され、平安時代に神祇制度が整った。「日本史用語集(山川出版)」
最後にキリスト教。
キリスト教
イエスをキリストと認め、その教えを信じる宗教。ユダヤ教の選民思想を克服し、普遍的な愛を説く世界宗教。
「世界史用語集(山川出版)」
イエスは人で、キリストとは「救世主」という意味。
イエスを救世主と認める人たちがキリスト教徒になる。
世界史を学んでいる人は、392年にキリスト教がローマ帝国の国教となったことも覚えておこう。
そんな道教&神道とキリスト教には、こんな違いがある。
道教は中国の宗教で神道は日本の宗教。つまり民族宗教。
これに対してキリスト教は、仏教やイスラーム教と同じく国や民族をこえて広がる世界宗教。
他にもこんな違いがある。
道教&神道は多神教で、いろいろな神様がいる。
キリスト教は一神教だから、神はゴッドだけ。
するとこんな違いが生まれる。
道教&神道では人が神になることができる。
それが先ほど書いた媽祖(まそ)。
媽祖はもともとは宋の時代の中国にいた女性だ。
名前を「林黙娘(りんもうにゃん)」という。
でもキリスト教では、人が神になることはあり得ない。
人が神になることはないけど、聖人になることはできる。
有名なキリスト教(カトリック教会)の聖人に、フランスのジャンヌ・ダルク(1412~31)がいる。
ジャンヌ・ダルク
百年戦争をフランスの勝利に導いた国民的英雄。神のお告げを信じてシャルル7世の軍に入り、オルレアンの囲みを破った。のちに捕らえられ、宗教裁判により焚刑となった。
「世界史用語集(山川出版)」
焚刑とは火あぶり刑のこと。
ジャンヌ・ダルク
世界史におけるこの奇跡の少女はキリスト教で聖人と認められた。
ジャンヌ・ダルクは今、フランスを守る守護聖人になっている。
第二次世界大戦中、フランスがナチス・ドイツの支配下におかれたとき、レジスタンス側はジャンヌ・ダルクを口にしてナチス・ドイツとたたかっていた。
宗教裁判を受けているときに、ジャンヌが監禁されていた塔(ウィキペディアから)。
現在では「ジャンヌ・ダルクの塔」として有名。
処刑されるジャンヌ・ダルク(ウィキペディアから)
このジャン・ダルクでさえ、死んでも神になることはできない。
キリスト教で神は、ゴッドだけだから。
でも道教は違う。
人々から深い尊敬を集めたり偉大なことをしたりした人間は、神になることができる。
中国にジャンヌ・ダルクのような救国の英雄があらわれていたら、死後、その人物はきっと神になっていたはず。
先ほども書いたけど、媽祖はもともと「林黙娘(りんもうにゃん)」という宋の時代の人間だった。
この宋という王朝はモンゴル族(元)に倒されている。
もし、モンゴル族に滅ぼされる寸前の宋に、ジャンヌ・ダルクのような少女が現れていたら?
ジャンヌがイギリス軍をフランスから追い出したように、その少女がモンゴル族を万里の長城の北方に追い出したとしたら?
ジャンヌ・ダルクがシャルル7世に「王よ、あなたをランスにお連れします」と言ったように、南宋の皇帝を開封に連れて行って全中国の支配を再び漢民族の手に取り戻させたとしたら?
中国で、そんな人物が神にならないわけがない。
モンゴル族への降伏を拒否して、徹底的にたたかうことを主張した岳飛(がくひ)は今、道教の神になっている。
中国でジャンヌ・ダルクのような人物がいたとしたら、そんな人物が神にならないほうがおかしい。
岳飛
神道でも人が神になることはある。
菅原道真、徳川家康、天皇などが神道の神になっている。
ちなみに、天皇を神としてまつった神社は「~神社」ではなくて「~神宮」と呼ばれている。
この例には、明治天皇をまつった明治神宮や桓武天皇をまつった平安神宮がある。
まあ、例外もあるけど。
ノートルダム大聖堂(ランス)
フランス国王の戴冠式はここでおこなわれていた。
これはメロヴィング朝の国王クロヴィス(466年ごろー511年)以来のフランスの伝統。
ジャンヌ・ダルクはシャルル7世をこのランスに導いた。
くり返しになってしまうけど、一神教のキリスト教では人が神になることはなく、聖人にしかなれない。
もちろん、カトリック教会に聖人と認められることはものすごいこと。
最近では、2016年にマザーテレサが聖人に認められている。
朝日新聞の記事から。
インドのコルカタ(カルカッタ)で貧しい人たちを救済する活動に尽くした修道女マザー・テレサ(1910~97)が4日、ローマ・カトリック教会で最高位の崇敬対象である「聖人」に正式に認定された。
人が神になることがある道教では、こんな珍しいお寺(廟)もある。
台湾の台南にある飛虎将軍廟では、杉浦少尉という日本軍の軍人を神としてまつっている。
フォーカス台湾から。
今この廟を守るのは日本統治時代を経験していない人ばかりだが、「杉浦少尉の精神を伝えたいだけで、日本とか台湾とか関係ない」と笑う。
飛虎将軍廟では台湾の旗と日の丸がかかげられている。
写真は上の記事で見てほしい。
おまけ
台湾にある道教の廟
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