日本人が誇り、中国人が支える日本の伝統文化と職人技 ②

 

はじめの一言

「日本間に入ってもっとも驚嘆させられることは、さまざまな色合いと部屋自体とのあいだにみられるあの調和と対照とである。錦織模様を施して表装した画幅と、その画幅を掛けてある床の間のあの静かな落ち着いた色調とのあいだには、つねにもっとも洗練された調和がある。(モース 明治時代)」

「日本絶賛語録 小学館」

 

 

優れた芸術や文化を生むためには、芸術家や職人を育てる人が必要になる。

中世のヨーロッパや昔の中国では、メディチ家のような大富豪や皇帝が芸術家や職人を支えていた。
日本でも、足利義満が能を大成した世阿弥に生活費を出し保護していた。

 

今の日本には、将軍のような有力者はいない。
でも最近では、中国人のお金持ちが日本の職人や伝統文化を支えていることがあるらしい。

例えば、こんな記事がある。

第13回】 アジア編——日本の伝統文化を支えるアジア大富豪の経済力

・千葉県成田市にある谷養魚場の谷健治専務は、「落札の7~8割は外国人。特に数百万円以上の錦鯉の多くは中国人が購入している」と明かす。

・海外富裕層を引き付ける日本の伝統産業は錦鯉だけではない。

・高級盆栽の通販などを行うエスキューブによれば、「2000年前後までは欧州の需要が高かったが、その後は中国、韓国、台湾、インドネシアなどでの人気が高まり、リーマンショック以降は、さらにその傾向が加速している」(堀越繁魅社長)という。

・錦鯉と同様、ステータスとなっていることもあり、特に中国での人気は高い。「中国で人気が高い赤いモミジなどの盆栽は、取引価格が2年で2倍に上がった」(同)。

インドネシアでは錦鯉の人気が高く、高額で取り引きがされているということをテレビの特集で見たことがある。
特に中国系のインドネシア人の間で、鯉の人気が高かったと思う。

 

日本では、平安時代の国風文化は京都の貴族が支えてきた。

ちょっと中学の復習をしてみよう。
国風文化には、このようなものがある。

「平がな」「片かな」「古今和歌集」「紀貫之(土佐日記)」
「竹取物語」、そして、世界最古の長編小説と言われる「源氏物語(紫式部)」

 

鎌倉文化は、鎌倉幕府が支えてきた。
鎌倉文化といえば、運慶や快慶が有名。

東大寺南大門の金剛力士像は、修学旅行で見た人も多いはず。
他にも、瀬戸焼や備前焼がある。

 

 

東山文化は足利義満が支え、北山文化は足利義政が支えてきた。

江戸時代になると、こうした貴族や将軍という有力者ではなくて町民たちが文化を支えるようになった。
それが「元禄(げんろく)文化」だ。

元禄文化

元禄時代を中心とする江戸前期の文化。遊里の事情に通じた粋な気性を尊ぶ上方豪商や武士を主な担い手とし、人間的で華麗な町人文化が発展した。

(日本史用語集 山川出版)

この元禄文化には、そうそうたる人たちが活躍している。

井原西鶴(浮世草子)、松尾芭蕉(奥の細道)、近松門左衛門(人形浄瑠璃)

歌舞伎ができて、市川團十郎(初代)が活躍したのも、このころになる。
現在の十二代目「市川海老蔵」さんは、この流れをくんでいる。

 

元禄文化になって、文化のにない手が町民になった。
貴族や将軍がいない現代でも同じで、一般の日本人が日本文化のにない手になっている。
金持ちをふくめ多くの日本人が職人や芸術家の作品を買って、彼らの生活を支えている。

 

でも、今では良いものをつくっても、なかなか売れないらしい。
例えば、次の毎日新聞の記事によると、有田焼の売り上げがピーク時の5分の1に落ちているという。

有田焼・創業400年 不易流行追究を 青磁の人間国宝・中島宏さん /佐賀

確かにバブル期の一番良い時に比べると売り上げは5分の1に落ちているが、有田が消滅することは絶対にあり得ない。
400年の長い歴史を見ると、戦前戦後の焼き物を作る美徳がなかった時代に苦しみながらも乗り越えてきている。これくらいの不景気はたいしたことはない。

これは、青磁の人間国宝である「中島宏さん」という方のインタビューになる。
「これくらいたいしたことはない」と言っても、「売り上げは5分の1に落ちている」というのは、さすがに大打撃だろう。

この売り上げ低下の原因は、不況によって日本人にお金がなくなったこともあるだろうけど、それだけではない。
日本人の価値観の変化もあると思う。

次回に続きます。

 

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。