ギリシャよ、これが明治日本の「国家の信用」だ。②

 

はじめの一言

「実用的、機械的技術において日本人は非常に巧緻をしめしている。(中略)かれらの手工業の技術の熟練度は素晴らしい。日本の手工業は世界のいかなる手工業は者にも劣らず熟練である。(ペリー 幕末)」

「日本賛辞の至言33撰 ごま書房」

ペリー

江戸時代に艦隊を率いて鎖国をしていた日本へ来航し、開国への交渉を要求したことで知られる。

 

 

今回の内容

・ギリシャ「金なら、返せん」
・怒るドイツ
・ひょっとしたら、日本人が学ぶべき?
・江戸の日本人にとっての「信用」

 

・ギリシャ「金なら、返せん」

「借りた金なら、返せない!」と宣言したのはアルゼンチンだけではない。
最近では、ギリシャがそんな状態になった。

ギリシャは、主にドイツからお金を借りるだけ借りておいて、「お金は返せません宣言」をしている。
しかも、借金の理由が公務員の雇用や国民の年金を確保することだったという。

今回のギリシャ危機の大元の原因は、身の丈に余る借金をしたことにある。
その借金は何に使ったかと言えば、公務員を増やし、年金制度を拡充して国民にベネフィットを与えたのである。

公務員の数は、生産年齢人口の4分の1、全国民の10人に1人が公務員という状況だった。
その勤務時間はかなり緩く、時間通りに出勤した人には特別の手当が支給されたという。

ギリシャ問題がここまで悪化した本当の理由

「時間通りに出勤した人には特別の手当が支給されたという」というのは、もう、何を言っているのか分からない。
借金をこんな「手当て」に使っていたギリシャには、もうあきれるしかない。

 

 

・怒るドイツ

ギリシャにお金を貸しているドイツ人の怒りは、相当なもの。
旅行先で会ったドイツ人は、ギリシャをボロクソに言っていた。

「あいつらは最低だよ。自分は働かないで、他人から金を借りてぜい沢な生活をしてやがる」
「泥棒だと同じだ」

吐き捨てるように言っていた。
これが事実とは言えないかもしれないけれど、ドイツ人からはそう見えたことは確か。

「オレたちは真面目に働いている。同じEUにいるギリシャが『お金がない』と言うからお金を貸したのに、ギリシャ人は遊んでいる」

実際、そうだったと思うけどね。

 

このときのギリシャ問題は、日本のテレビや新聞でも大きく報じられていた。
借金をしていたギリシャが「金なら返せない!」と堂々と宣言したのは、ある意味すごいと思った。
日本だったら、世界にこんな恥ずかしい宣言はできないだろう。

 

さらに、ギリシャが「逆ギレ」して怒っているのは、EUとはまったく関係ない日本にいても、見ていて腹が立った。

ギリシャ国民が貧しさに耐えている様子というのがまったく見えない。

貧しさに耐えるどころではない。
「借金を返さないといけないから、年金を減らします」と政府が言ったら、ギリシャ国民は怒って暴動を起こしている。

「自分たちに責任があるのだから、貧しさを我慢してでも借金を返さなきゃいけない」という考えが通ないのだろう。

 

あれじゃ、ドイツ人が激怒するのも当たり前。

ギリシャを見ていると、EUという「運命共同体」というのは大変だなと思う。
ヨーロッパが国境をなくして、EU(ヨーロッパ聯合)を結成した動きをみて、日本でも、「東アジア連合をつくるべきだ!」といった意見を聞いた覚えがある。

でもそうしたら、きっと日本がドイツになって、どっかの国がギリシャになる。
そんな状況に、日本人が耐えられるのかどうか?

 

 

現在の世界なら、アルゼンチンでもギリシャでも「借りた金は返せない!」という状態になっても、デフォルトになるだけすむ。

明治時代だったらそうはいかない。
お金が返せないと、そのまま植民地になる可能性があったから。

いったん返すべきものを返さなければ植民地にされてしまうのです。
でなくても、国家の信用というものがなくなります。
国家というのも商売ですから、信用をなくしてしまえば、取引ができなくなるのです。

(「明治」という国家 司馬遼太郎)

 

・ひょっとしたら、日本人が学ぶべき?

世界じゅうの貧乏神をこの日本列島によびあつめて共にくらしているほどの貧乏をしましたが、外国から借りたお金はすべて返しました。「国家の信用」 というのが、大事だったのです

(「明治」という国家 司馬遼太郎)

どう考えても、明治の日本とギリシャやアルゼンチンとは、「信用」というものの考え方が違う。
アルゼンチンとギリシャのどこに、「どんなに貧しさに耐えても、借りたお金を返す」という姿があるのか?

テレビで見る限りは、国にそんなひっ迫した様子がなくて人々は幸せそうだ。

でも、律儀すぎる日本人にっては、彼らの考え方や態度から学ぶべきものがあるのかもしれない。
彼らの責任転嫁や面倒は抱え込まないぞ!という姿勢は、見事の一言。
ストレスのない人生が過ごせそう。

 

 

・江戸の日本人にとっての「信用」

日本では、「国家の信用」という以前に「信用」というものを江戸時代からとても大事にしていた。

信用がいかに大事かということは、江戸期の人達も、その充実した国内の商品経済での経験の中で、百も知っていたのです。

(「明治」という国家 司馬遼太郎)

「世界じゅうの貧乏神をこの日本列島によびあつめて共にくらしているほどの貧乏をし」ても、借金をすべて返した日本はやっぱりすごいと思う。

司馬遼太郎が「涙がこぼれるほど、律儀なものでした」と言っていたのも、うなづける。

 

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。