もし東京の地下鉄のあちこちで、「安倍首相の誕生日をお祝いします」という広告があらわれたら、市民はどんな反応をするだろう?
「いいね!」という共感よりも、「ナニコレ?」という否定的な反応が圧倒的だと思う。
政治家の誕生日を祝うなら、ホテルでやればいい。
公共の場を使って特定の政治家の誕生日を祝うとしたら、「どこの独裁国家だよ?」となるはず。
でも、最近の韓国はそんな感じらしい。
1月24日は文大統領の誕生日で、次は66歳になる。
それで、「66回目の誕生日をお祝いします」というメッセージが書かれた広告がソウルの地下鉄の駅に登場した。
朝鮮日報の記事(2018/01/13)にそのことが書いてある。
映像広告には誕生日を祝う歌と共に文大統領の写真が数枚繰り返し登場した。
「ソウルの地下鉄駅に文大統領の誕生日祝う広告」
首都の地下鉄で、大統領の顔写真と誕生日を祝う歌がくり返しあらわれる。
やっぱり「独裁国家」が頭に浮かんでくる。
今の欧米の民主国家で、こんなことがあるのだろうか。
でも、韓国でこの広告の評判はとても良い。
市民の反応として、「2000件以上受け付けたが、95%以上が『広告はすごくいい』という称賛」だったと記事に書いてある。
もちろん、この広告に否定的な人もいる。
この記事を読んで「韓国じゃなくて、北朝鮮の話みたい」なんて思ったら、それと同じことを考えた韓国の元知事がいた。
その元知事は自身のフェイスブックにこう書きこんでいる。
「金日成(キム・イルソン)主体思想の影響だと思う。北朝鮮にはおよそ3万体の金日成の銅像がある」と書き込んだ。
するとこの書き込みには、「ねたむな」「くやしくて死にそうか?」といったコメントが寄せられたという。
国民の文大統領への支持は圧倒的らしい。
東京の地下鉄に、安倍首相の顔写真と誕生日を祝う言葉や歌があったら、自民党支持者でも「いき過ぎ」と思うだろう。
それに対して市民は「95%以上が『広告はすごくいい』という称賛」をして、「北朝鮮かよ」という書きこみには「くやしくて死にそうか?」とコメントが書き込まれる。
日本では想像できないけれど、朝鮮日報によると韓国は今そんな社会だ。
ピカチュウ踏むな。
韓国で文大統領は大人気。
日本では正反対で、文大統領の評価はかなり低い。
最近も日本の全国紙が文大統領に対して、「あり得ない」「日本に甘えるのはやめよ」「外交常識に外れ、非礼である」と非難していた。
ヤフーに「文大統領」と入力するとこうなる。
韓国で文大統領の人気はとても高い。
でも日本では大不評。
反応は正反対だけど、これは同じ理由によるところが大きい。
文大統領の慰安婦問題に対する評価だ。
これによって韓国では支持を集めて、日本では信用を失った。
日本は慰安婦問題について、「最終的かつ不可逆的に解決する」ということで2015年に韓国政府と合意した。
それでその約束も守っている。
でも韓国では、このときの合意は「慰安婦のおばあさんの声をしっかり聴いていなかった」と嫌われている。
そんな韓国国民の声に応えるように、文大統領は「あの合意で慰安婦問題を解決することはできない。日本が元慰安婦のおばあさんに謝罪して許しを得ることが完全な解決だ」ということを言う。
文大統領は事実上、慰安婦合意を否定しやがりました。
解決の確認をした2年後に、「あれで解決にはならない」と宣言する。
韓国国民は歓喜し、日本政府は激怒した。
安倍首相・菅官房長官・河野外務大臣は、韓国側が何かを要求してきても「全く受け入れられない」「合意は1ミリも動かない」と強く反発している。
日本が反発するのを見ても、韓国の国民は「自分たちが悪かった」と反省することはない。
「それは日本が反省していない証拠」「歴史と向き合っていないから」ととらえ、文大統領への支持はさらに高くなるだろう。
古代中国に孟子(もうし:紀元前372年? – 紀元前289年)という人がいた。
儒学を研究した儒学者で、儒教をはじめた孔子の次に重要な人物といわれている。
孟子(ウィキペディアから)
孟子はこれまでの歴史で、朝鮮人や日本人に大きな影響を与えてきた。
彼の言葉や行動をまとめた「孟子」という本は平安時代の日本人が読んでいたし、江戸時代には寺子屋で全国の子どもたちに教えられていた。
今でもAmazonで買うことができる。
こんな本はなかなかない。
この孟子の中には、「仁は人の心なり、義は人の路(みち)なり」という言葉がある。
「仁義とは、人として正しい心を持って道を進むこと」なんて考え方には、今の日本人も共感すると思う。
もし、小さな子どもが井戸に落ちそうになっているのを見たら、だれでもその子どもを救おうとする。人は仁の心を持っているからだ。
孟子にはそんなことも書いてある。
おっと話がそれた。
この孟子が「為政者(政治家)が天下をとる方法」についてこう言っている。
天下を手に入れるには方法がある。一言でいえば人民を得ること。人民を得るに方法がある。すなわち民心を得ること。そうすれば人民が得られる。民心を得るには彼らが欲するものを彼らのために集め、いやがることは行わない。これだけでよい。
「一九九〇年代の日本 山本 七平(PHP文庫)」
まさに文大統領だ。
「日韓合意で慰安婦問題を解決することはできない。日本が被害者に謝罪することが、完全な解決だ」と言う。
でも、日本大使館前の少女像は撤去しない。
「彼らが欲するものを彼らのために集め、いやがることは行わない」という孟子の言葉どおり。
これで文大統領は韓国民の心を得て、天下(圧倒的な支持率)を手に入れた。
でも、文大統領は今、そのツケを払わされている。
FNNの報道(2018/1/13)によると、文大統領はかなり苦しそうだ。
文政権は慰安婦問題をめぐり、合意破棄を求める支持勢力と、反発する日本との間で板挟み状況となり、苦慮している。
文大統領 日韓合意めぐる日本の反応に苦慮
文大統領の支持者は「66回目の誕生日をお祝いします」という広告を出したけど、この広告はきっと文大統領をさらに苦しめることになる。
「できない約束をしたらどうなるか?」の具体例を見るいい機会だ。
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