労働と税金がない!「ナウル」とかいうマンガのような国。

 

今でこそ世界第三位の経済大国・日本も、昭和の始めごろは貧困で苦しむ人がたくさんいた。

1929年、アメリカのニューヨークで株が大暴落して世界恐慌がおこる。
その影響を思いっきり受けた日本では、昭和恐慌が始めまった。

このとき日本の農村部は特に大きな被害を受けた。
それを農業恐慌という。

農業恐慌

1930年の豊作による米価下落で、農業生産はいっそう悪化した。豊作飢饉・豊作貧乏という。翌1931年の東北大飢饉などで農村困窮が深刻化。欠食児童・娘身売りなどの惨状が続出した。

「日本史用語集 (山川出版)」

「体を売る」のではなくて、子どもを売らないと生きていけない。
そんなことが昭和初期の日本にはあった。

 

「娘を売るときは相談を」と呼びかけている(ウィキペディアから)。

 

このときの日本とは、ド反対だった国がある。

働かなくても、生活できる国。
「ナウル」はそんな楽園だった。

今回はナウルとかいう、「国民総ニート」と呼べるような国を紹介しようと思う。
ただし、それは過去形。

 

地図の右端にナウル共和国がある。

 

島国のナウル共和国の誕生はとってもユニーク、と韓国の全国紙・朝鮮日報に書いてある。(2021/08/21)

最初は小さなサンゴ礁だったが、そのうち地球の南半球と北半球を行き来する渡り鳥のトイレとなった。

【萬物相】鳥ふんの威力

 

気の遠くなるような長い間に積もった「鳥のふん」が固まって地面になって、そこに人間が住み始めたのがナウルの始まりだ。

そんなナウル共和国とはこんな国。

面積:21.1平方キロメートル

人口:約1.1万人(2014年、アジア開発銀行)

首都:ヤレン

民族:ミクロネシア系(ポリネシア、メラネシアの影響あり)

言語:英語(公用語)の他、ナウル語を使用

宗教:主にキリスト教

略史:
1798年 英国の捕鯨船ナウル島発見
1920年 オーストラリア・ニュージーランド・英国の3国を施政国とする国際連盟の委任統治領
1942年 日本軍による占領
1947年 オーストラリア・ニュージーランド・英国の3国を施政国とする国連信託統治地域
1968年1月31日 独立

以上の数字は、外務省ホームページのナウル共和国(Republic of Nauru) 基礎データから。

 

面積は約21平方キロメートルだから、これは東京の港区と同じぐらい。
そこに1.1万人が住んでいる。
「世界一小さい共和国」ナウルはそんな国。

 

先ほどの略史で、「1968年1月31日 独立」とあった。
そう、今日1月31日はナウルの独立記念日だった。

ナウルはこの日で50歳になる。
そこで現地では、それを祝う記念式典が開かれた。

日本からは外務政務官が式典に参加している。
加山雄三さんのサイン入り色紙やCDを手に持って。
AFPの記事(2018年1月31日)から。

堀井巌外務政務官は30日にワガ大統領と会談。加山雄三さんの代表曲「君といつまでも」を口ずさむという大統領は、加山さんのサイン入り色紙やCDを手渡されると、「大変喜んでいた」(同行筋)という。

「世界一小さい共和国」独立50年=太平洋の島国ナウル

なんでナウルの大統領は加山雄三さんのファンなのか?
ネットで調べてみたけれど、理由が分からない。
「1942年 日本軍による占領」ということに関係があるのかもしれない。

 

このニュースにネットの反応は?

・国民全員ニートの国か
・国民総ニート
・数十年前までは全国民が個人的に今のドバイの住人並みな金の使い方をしてた。
・( ・∀・)オマエラが集まったような国と聞いた
・加山雄三よりも、パフュームにしとけよ
・肥満世界一の国だよね
・ニートじゃないぞ。労働しないんじゃなくて労働を知らないんだ。

日本では、ナウルと聞くと「ニート」という言葉が頭に浮かぶ人が多い。
実際ナウルは、そんな国だった。

 

1980年代のナウルは、世界最高水準の生活を誇っていた。

でもその後、経済が崩壊してしまう。
頂点からの転げっぷりがすごい国だ。

ナウルを世界の頂点に押し上げたのは、リン鉱石。
リン鉱石を輸出することでナウルは繁栄し、1980年代に黄金期を迎える。

この時代のナウルは、まるでマンガの世界。

・税金はなし。
・医療費はタダ。
・教育費もタダ。
・水道代や光熱費もタダ。
・結婚したら、政府が家をプレゼント。
・働く必要もない。

労働と税金がない国、それがナウル。
地下に埋まっていたリン鉱石によって、ナウル国民は魔法のような生活をすることができた。

リン鉱石を採掘するのも外国人労働者。
このため、国民の9割が無職だったという。
ここから「国民総ニート」という言葉が出てくる。

 

でも、ナウル国民が夢からさめる時が来た。
リン鉱石が底をつきてしまう。

 

ナウルは地下のリン鉱石を掘りつくしてしまった。

リンの切れ目が金の切れ目。
ボーナスタイムは終わった。

リンが”亡くなった”後、ナウル国民は厳しい現実とぶつかる。

「労働と納税がない」というマンガの世界を生きていた人たちは、「働く」ということを知らなかった。
それまで国民は働いたことがなかったから、労働という概念からして分からない。
だから、国民のほとんどが失業者となる。
一説には、失業率は9割だったという。

これもマンガのような話だ。

 

ナウルは経済が崩壊し、財政は破綻する。
国民は電力不足や飲料水不足に苦しみ、外国からの援助に頼る国になり果てた。

大統領は加山雄三さんのサインやCDをもらうと「大変喜んでいた」とか言ってたけど、ぶっちゃけナウルはそんな場合じゃないと思う。

 

ナウルは日本と正反対。
日本は、90年ほど前は生きるために子どもを売ることもあったけど、今は世界の経済大国だ。
ナウルがこれから復活する可能性は、今のところ見えない。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。