はじめの一言
「生まれてからこのかた、これほど華なかな秋の紅葉を私は一度も見たことがなかった。山のどの斜面も全体が深紅色、朱色、洋紅色、緋色、明るい黄色など色とりどりに鮮やかに彩られ、ところどころに過ぎの濃い緑とほかの様々な木のより明るい緑が入り交じっていた。
(メアリー・ダヌヌン 明治時代)」
「日本絶賛語録 小学館」
今回の内容
・らいおんハートの持ち主
・フランス出身のイギリス国王
・らいおんハートの持ち主
SMAPの「らいおんハート」は日本でとても有名な歌だから、知っている人は多いはず。
じゃ、その「ライオンハート」の意味はというと、それを知っている人は少ないのでは。
これは「獅子心王 (Lion hearted) 」と言われた12世紀のイギリス国王・リチャード1世に由来している。
*小泉純一郎元首相が発行していた「小泉内閣メールマガジン」にあった「らいおんはーと」のメッセージも、SMAPの曲とこのイギリス王に由来する。
獅子心王リチャード(リチャード1世)は現在のイギリスで大人気。
なんでこの国王が「ライオンハート」と呼ばれるようになったのか?
それはこの王の一生が戦いの連続だったから。
人生の多くを戦場で過ごしていて、その勇気と強さから「Richard the Lionheart(獅子心王)」と呼ばれるようになったという。
この王は十字軍の戦いにも参加している。
その勇猛さから、敵のムスリム(イスラーム教徒)からも恐れられていた。
その勇猛さは敵となったムスリムからも評価されていた。サラディンに仕えその伝記を著したベハ・アッディーン(英語版)はリチャードについて「イングランド王の進軍の知らせに、ムスリムたちは震えあがった……戦場に何度も赴き、勇猛な戦いぶりがよく知られていた
(ウィキペディア)
ちなみにこのリチャード1世の剣は「エクスカリバー」という。
エクスカリバーはRPGで出てくる。
仁王像が持っている武器は「独鈷杵(どっこしょ)」。
・フランス出身のイギリス国王
絶大な人気を誇るこのイギリス国王には、意外なことがある。
彼は英語を話すことができなかった。
リチャード1世はイングランドで生まれたのだが、英語を学ぼうとせず、フランス語しかできなかった。
「「イギリス社会」入門 (NHK出版新書) コリン・ジョイス」
なんでイギリス国王なのに英語ではなく、フランス語を学んで話していたのか?
ここからはちょっと難しい世界史の話だ。
この王は、フランス貴族のアンジュー伯アンリが1154年に始めた「プランタジネット朝」(~1399年)に連なる人物だ。つらなっている。
世界史用語集の説明を見てみよう。
中世イギリスを支配した王朝。アンジュ―伯アンリが国王ヘンリ2世として即位したことが始まり、当初はフランスに政治の拠点を置いていた。
「世界史用語集 山川出版」
フランス貴族がイギリス国王だったから、リチャード1世はフランス語しかできなかった。
自分をイギリス人ではなくて、フランス人だと思っていたかもしれない。
イギリス国王がフランス人というのは、今から考えたら不思議な感じもするが、これが当時の当たり前。
この複雑な事情によってぼっ発したのが百年戦争だ。
百年戦争 1339~1453
1世紀にわたる中世末期のイギリスとフランスの抗争。
当初はイギリス軍が優勢であったが、ペストの流行や農民反乱などでたがいに疲弊し、最終的にはフランスが勝利した。
両国とも封建諸侯の力が後退し、中央集権化が進んだ。(世界史用語集 山川出版)
この百年戦争で活躍したのが「奇跡の少女」と呼ばれるジャン・ヌダルク。
で、ここ注目してほしいのがこの一文。
「両国とも封建諸侯の力が後退し、中央集権化が進んだ」
地方の支配者たちの力がなくなった結果、国王による全国支配が強化されていった。
先ほどの世界史用語集で、「当初はフランスに政治の拠点を置いていた」という文があった。
でも、プランタジネット朝はフランスに政治の拠点を置くのをやめてしまう。
そしてイギリスを治めることに専念するようになる。
それは、イギリスのプランタジネット朝がこの百年戦争で負けたから。
そのことを、先ほどの本では「イングランドにとっての幸せ」といっている。
プラタジネット家の王たちは約100年もかけてフランスを支配しようとした(このため「百年戦争」と呼ばれる)。
おかしな言い方だが、プラタジネット家がこの戦争に敗れたことはイングランドにとって幸運だった。
これ以来、プランタジネット家はフランスに色目を見せず、自分たちの仕事はイングランドを治めることだと割り切ったからだ。
「「イギリス社会」入門 (NHK出版新書) コリン・ジョイス」
イギリスとフランスが完全に分かれて別の国になったのは、この百年戦争の後といっていい。
これがそのまま現在のイギリスとフランスにつながっている。
ヨーロッパの歴史を学んでいて不思議な感じがするのが、ヨーロッパ人は「純血」というのを重視しないこと。
外国人出身の王でもかまわない。
実際、現在のイギリス王室(ウィンザー朝)は、ドイツ出身の国王から始まっている。
さあ、どうだろう?
今回の内容だけでも、英仏の関係は日韓の関係とはぜんぜん違うことが分かると思う。
次回は日本のことを書いていきます。
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